"心で受けて、心で応える"ー大切にしているのは、利用者さんとの心のつながり|社会福祉法人 寿徳会 松下園
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神奈川県秦野市、緑豊かな住宅街の一角に佇む松下園。ここでは知的障がいのある方々の生活をサポートする入所施設として、40年以上にわたり地域に根ざした支援が行われています。中度から軽度の知的障がいのある方々が生活する当施設では、利用者一人ひとりの個性を大切にした支援を行うとともに、日中は就労支援や生産活動を通して、それぞれの得意分野を活かした活躍の場を提供。利用者の皆さんがいきいきと過ごせる環境づくりに取り組んでいます。
松下園の大きな魅力は、地域とのつながりの深さです。開設以来続く地域の方々との交流は、利用者の社会性を育む貴重な機会となっています。また、当施設で働く職員の多くは福祉未経験からのスタートということも特徴のひとつ。「これまでの経験より、利用者に寄り添う気持ちを大切に」という考えのもと、手厚い研修制度と先輩職員のサポート体制で、未経験者も安心して働ける環境を整えています。
今回は、施設長の小室さんに、松下園での支援の特徴や職場としての魅力、そして福祉の仕事のやりがいについて、詳しくお話を伺いました。
目次
1.利用者に寄り添う支援の現場から
ー松下園での具体的な支援内容について教えていただけますか?
松下園は知的障がいのある方の生活支援施設です。障がいの度合いとしては主に中度から軽度の方が多く、ある程度ご自身のことはひとりでできる方が多いですね。そのため、身体的な介護というよりは、一人ひとりの特性に合わせた就労支援や生活支援を中心に行っています。
日中は様々な作業活動を行っており、例えば工場でのライン作業や畑での農耕作業、同じ法人で運営している特別養護老人ホームでのクリーニング業務や清掃作業、また隣町にある養鶏場での卵のパック詰めなど、本当に幅広い作業があります。これらの作業を通じて、それぞれの利用者さんの得意分野や興味に合わせた仕事を提供し、一緒に作業しながらサポートしていく、そんな支援を心がけています。
また、施設で生活されている方々に対しては、通院の付き添いや買い物支援、入浴介助なども行っています。ただ支援するのではなく、どこまで自分でできて、どこからサポートが必要なのか、一人ひとりの状況をしっかりと見極めながらの支援です。
ー利用者の方々との関わりで印象に残っているエピソードはありますか?
実は私、学生時代の実習がこの仕事を選んだきっかけなのですが、2週間ほどの実習で感じた正直な印象は、「結構大変な仕事だな…」というものでした。それでも実習の最終日が近づくにつれて、利用者さんから「絶対また来てね」「次はいつ来るの?」と何度も聞かれ、自分がみなさんの役に立っていたことを実感しました。そして、心のこもった「ありがとう」をいただいた時に、この仕事がしたい、そう思ったのです。
支援の仕事は一方的なものではありません。自分の気持ちを込めてやったことが利用者さんに届いて、それが「ありがとう」という言葉として返ってくる。時間をかけて信頼関係を築いていく中で、利用者さんの満足につながる支援ができた時は、この仕事を選んで良かったと実感します。
ー支援する中で難しさを感じる瞬間はありますか?
そうですね。本当にお一人お一人違うので、例えばAさんへの接し方がとてもうまくいったから、同じようにBさんにも通用するかというと、そうではないんです。同じ声かけをしても、ある方はとても喜んでくれるけれど、別の方には全く響かないこともあるわけです。
この仕事は本当に日々の経験の中で学んでいくことが多いと感じます。はじめのうちは戸惑うこともあるとは思いますが、当施設には優しいベテラン職員がたくさんいますので安心してください。困った時は相談してもらえれば、「自分の時はこうしたらうまくいったよ」といったアドバイスをもらえるはずです。
みんな最初は同じような悩みや課題にぶつかります。でも、人によって対応の仕方は違うので、いろんな人に聞くことで、自分に合ったやり方がきっと見つかります。先輩方の生きたお話は本当に貴重で、積み重なったその経験自体が施設全体の財産だと感じています。
2.地域に開かれた施設づくりを目指して
ー地域との交流が活発だと伺いましたが、具体的にはどのような取り組みをされているのでしょうか?
はい。地域との交流は松下園の大きな特徴の一つです。例えば、開設以来40年以上続いている行事として、毎年12月に地域の飲食店組合の方々が年越しそばを振る舞ってくださるイベントがあります。職員も含めて、全員分のお蕎麦を作っていただいています。40年という長い歴史の中で、地域の方々との絆が深まっていることを毎年実感しています。
また、毎年秋には法人全体で大きなお祭りを開催していて、地域の方々にも楽しんでいただいています。また、施設内の畑で収穫した野菜を使った収穫祭では、カレーや豚汁、大学芋などを無料で地域の方々に振る舞っています。芋掘り体験や農業体験なども実施しており、近隣の小学生や中学生、高校生の職場体験やボランティアの受け入れも積極的に行っています。
ーなぜそれほど地域との交流を大切にされているのでしょうか?
理由は大きく二つあります。一つは社会福祉法人としての役割です。地域に貢献し、必要とされる存在であることはとても重要で、困ったときの相談の受け皿となれるよう、地域とのつながりは大切なことなのです。
もう一つは、私たちの施設が住宅街の中にあるということです。開設から40年以上、同じ場所で運営を続けてきました。地域の方々にご理解いただきながら施設を運営していくためにも、日頃からの交流が欠かせません。長年続けてきた交流のおかげで、地域の方々からも松下園の利用者さんのことを温かく見守っていただいています。
ー地域との交流は利用者の方々にとってどのような影響があるのでしょうか?
利用者さんにとって、外部の方との交流はとても良い刺激です。毎日顔をあわせる職員との関わりだけでなく、地域の方々やボランティアの方が来てくださると、利用者さんも「どこから来たの?」と積極的に声をかけ、自然と笑顔が生まれます。
また、外部の目を入れることで施設が閉鎖的になることを防いでいます。職員にとっても良い刺激となりますし、何より利用者さんが様々な方と関わることで、新しい発見や成長のきっかけにもなっています。地域の方々との自然な交流を通じて、利用者さんの社会性が育まれていると感じます。
3.働きやすい職場環境づくりへの取り組み
ー職場の雰囲気や人間関係についてお聞かせください。
当施設では20代の新卒から50代まで幅広い年齢層の職員が活躍していますが、特に30代後半から50代のベテラン職員が多いのが特徴です。職員の定着率も高いことから、「働きやすさ」というものをそれぞれが感じてくれているのだと思います。
定着率が高い理由としては、まずチームワークの良さが挙げられます。福祉の仕事は利用者さんの情報共有がとても重要なのですが、日々の申し送りや記録はしっかりと行われており、ちょっとした気づきや意見があったとしても、上司との定期的な面談で細かく共有できています。
職員の年代は幅広いですが、世代に関係なく気さくにコミュニケーションが取れています。こういった風通しの良さも、気持ちよく働ける理由の一つではないでしょうか。
ー働きやすさの面で特徴的な取り組みはありますか?
社会福祉法人ならではの特徴として、利用者本位のサービス提供を第一に考え、十分な職員配置を行っています。当然、最低基準の職員配置で運営すれば人件費は抑えられますが、一人ひとりの負担は大きくなります。当法人ではコストカットよりも職員の負担軽減を大切に考え、手厚い人員配置を心がけています。
そのため、有給休暇の取得率は高いですし、毎月の希望休暇も取りやすい体制です。私もシフト作成時には必ず職員の希望を聞き、できる限り希望に沿った勤務表を作成しています。残業もほとんどなく、定時で帰れることが多いです。
ー育児や介護との両立支援についてはいかがでしょうか?
子育て中の職員に対しては、お子さまの事情に配慮した勤務環境を提供しています。特にお子さんがまだ小さい時期はなにかと手がかかりますから、夜勤免除や状況に応じたシフト組みなど、可能な限り柔軟に対応しています。
また、男性の育児休業取得実績や、親の介護のための介護休暇取得実績もあり、職員それぞれの家庭事情に理解のある職場です。制度はあっても実績がないという施設も多い中、当施設では実際に活用されていますので安心していただけたらと思います。
4.未経験者も安心して働ける環境づくり
ー福祉未経験の方でも働きやすい環境なのでしょうか?
はい。当施設では福祉の経験がない方も多く活躍しています。職員の半数近くが異業種からの転職者ですね。障害者支援の分野では、介護の現場と違って必須の資格などはありません。私たちはむしろ未経験者の方が先入観にとらわれず、柔軟に対応できることも多いと考えているのです。
もちろん、研修や教育はしっかりと行いますので安心していただけたらと思います。新入職員向けには、法人全体で新任研修を実施しており、この研修では法人の理念や福祉の基礎知識を学びます。また、法人内の他施設で同時期に入職した職員と一緒に研修を受けることで、同期のような横のつながりもできるんですよ。
ー新入職員へのサポート体制はどのようになっていますか?
研修終了後も、現場では先輩職員が丁寧にサポートしてくれます。休憩時間や食事の時間にも気軽に相談できる雰囲気があり、一人で抱え込まないよう配慮しています。ベテラン職員も多いので、様々な経験に基づいたアドバイスをもらえるのも心強いポイントです。
また、法人内の5つの施設で同時期に入職した職員同士のつながりもできるので、施設を越えた横のネットワークが形成されます。同じタイミングで入職した仲間がいることは、心理的な支えとなるでしょう。
ー最後に、これから応募を考えている方へメッセージをお願いします。
当法人では「その人を心で受けて、心で応える」という理念を掲げています。これは単なるスローガンではなく、私たち職員が日々大切にしている想いです。知識や経験よりも、利用者さんに寄り添う気持ちを第一に考えています。
確かに福祉の仕事は簡単ではありません。でも、利用者さんとの何気ない日常の中で、思いが通じ合えた時の喜びはなかなか他では味わえないものだと思います。
福祉の経験がなくても、利用者さんと向き合う気持ちがあれば、充実した研修制度と先輩職員のサポートがありますので、安心して働いていただけると思います。私たちと一緒に、利用者さんの笑顔のために働いてみませんか。