医師国保に加入する看護師のデメリットは?国民健康保険との違いも紹介!
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看護師の方が就職先や転職先を探していると、待遇面で「社保完備」のほかに「医師国保」という単語を見かけるケースがあるかと思います。医師国保とは正式には医師国民健康保険のことをさしており、社会保険や国民保険のような保険の制度です。
この記事では、そもそも医師国保とはどのような制度なのか、どのような医療機関に勤めると加入することになるのか、そのメリットやデメリットにはどのようなものがあるのかという点を解説していきます。
この記事から医師国保という制度の内容を知り、転職や就職の際に役立ててください。
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1.医師国保とはどんな保険?
日本では国民皆保険の考え方が原則となっており、国民全員が何らかの保険に加入しています。国民全体で保険料を納めて、実際に医療にかかった方の負担をみんなで分け合うという考え方です。法人に雇用され、給与所得を得ている方の多くは「社会健康保険」に、フリーランスや個人事業主の方は「国民保険」に加入するのが原則です。
こうした保険の中で、医師が加入することができるのが「医師国保」という保険です。健康保険組合に関しては、さまざまな組合があります。一般企業でも同じ業種の方を対象とした保険組合というものが存在します。例えば出版業界に所属する企業の多くが加入している「出版健保」などです。こうした業界ごとに設置される健康保険組合のひとつが、医師国保であると考えると分かりやすいかもしれません。
まずは、医師国保がどのような制度なのかを紹介するために、加入条件や、保険料等に関して解説していきましょう。
医師国保に加入できる人
医師国保に加入できるのは、各都道府県に設置された医師会に所属している医師が中心です。医師国保に 加入している医師が、個人事業主としてクリニック等を開業している場合、そのクリニックの従業員も加入対象者となります。従業員には看護師も含まれるわけです。
従業員も含めて医師国保に加入するクリニックは、原則として従業員数が5名以下の小規模クリニックに限られます。従業員数が5名以上となる場合には、社会保険への加入義務が発生しますので、医師国保には加入できません。
ただし、場合によっては従業員数が5名を超えるクリニックでも、医師国保というケースは存在します。とはいえ、原則的には小規模クリニックに多いという特徴があり、創業病院など、一定程度のサイズ感の病院では、看護師が医師国保に加入するというケースはないと考えていいでしょう。
もうひとつ医師国保の特徴として、世帯単位での加入であるという点が挙げられます。医師国保に加入した看護師と世帯をともにする家族も、医師国保に加入するのが原則です。もちろん、同一世帯の家族でも、社会保険やほかの国保組合に加入している場合は、保険を変更する必要はありません。学生や高齢者等、一般的な国民健康保険に加入している方がいる場合、看護師が医師国保に加入した時点で、医師国保に切り替えということになります。
医師国保の運営組織
医師国保を運営するのは、全国47都道府県にある医師会です。厳密に言えば、この医師会が運営する「医師国民健康保険組合」が運営母体となります。
全国に47ある医師会は、それぞれ対象地域を持っているため、自身が働く地域の医師会に加入し、その医師会にある医師国保組合に加入することで医師国保に加入するのが基本的な考え方です。医師国保の加入条件、保険料、加入方法等に関しては、医師会ごとに差がありますので、まずは自身が所属する医師会に確認し加入する形になります。
看護師の方が医師国保に加入する場合も同様です。原則としては勤務するクリニック等で手続きを代行してもらえますので、クリニックに指定された必要書類等を準備して加入手続きをしてもらう形になるでしょう。
参考までに、東京都医師国民健康保険に看護師が加入する場合に必要な条件や必要書類をまとめて紹介していきます。
★加入条件
- 常勤または常勤に準ずる方
- 規約に記載の住所地に住民票がある方
- 75歳未満の方
★必要書類
- 加入申込書
- 個人番号(マイナンバー)の記載のある世帯全員が記載された住民票
- 住民票上同一世帯で、医師国保に加入しない方の保険証のコピー
- 預金口座振替依頼書
- 雇用証明書
医師国保に加入できるのは、常勤の看護師だけではありません。アルバイトやパートの契約でも、一定条件を満たすことで医師国保に加入することができます。
加入申込書は東京都医師会のHPからダウンロードが可能です。この申込書に住民票、保険料の振込等に使用する口座の振替依頼書、さらにそのクリニックで雇用されていることを証明する書類を提出します。
上でも説明しましたが、医師国保は世帯単位での加入が原則です。そのため同一世帯に医師国保に加入しない方がいる場合、その他の方の保険証の写しも必要になります。ほかの企業法人に勤務し、社会保険に加入している方や、ほかの国保団体に加入している方がいる場合は添付が必要です。
医師国保の保険料
医師国保の大きな特徴として、保険料が挙げられます。国民健康保険や社会保険の場合、加入者の収入により、納めるべき保険料が決定します。しかし、医師国保の場合、収入に関係なく納める保険料は一定です。
保険料に関しては、上記の通り都道府県医師会ごとの設定となりますので、全国で一律というわけではありません。自身が所属する医師会の設定を確認する必要があります。
また、医師国保に加入する開業医の方に関しての特徴として挙げられるのが、社会保険のような事業所負担分がないという点です。社会保険の場合、雇用されている方と事業者で保険料を分担して納付する形になりますので、事業者としては一定程度保険料を納める必要があります。しかし、医師国保にはこの事業者負担分がありませんので、その点では経営する医師としてはありがたい保険といえるでしょう。
医師国保の保険料は、加入する医師、その医師が雇用する看護師等の従業員によって、納付する金額が違います。
参考までに、全国各都道府県から、北海道、東京都、大阪府、沖縄県の看護師が納付する保険料に関して紹介していきます。保険料は令和6年度の保険料です。
都道府県 |
基礎保険料 |
後期高齢者支援金 |
介護保険料 |
合計 |
---|---|---|---|---|
北海道 |
6,600円 |
5,170円 |
5,840円 |
17,610円 |
東京都 |
13,500円 |
5,000円 |
6,000円 |
24,500円 |
大阪府 |
12,600円 |
5,300円 |
6,100円 |
24,000円 |
沖縄県 |
9,000円 |
3,700円 |
5,000円 |
17,700円 |
※介護保険料は40~64歳の方が対象
※北海道は上記以外に前年度の収入によって金額が決まる「所得割賦課額」がある
参照:
北海道医師国民健康保険組合 東京都医師国民健康保険組合 大阪府医師国民健康保険組合 沖縄県医師国民健康保険組合上の表のとおり、医師国保の保険料は都道府県ごとに差がありますので、詳しい保険料を知りたい方は、各都道府県の医師会HP等で確認してください。
スカウトサービス登録はこちら2.医師国保と社会保険・国民健康保険との違い
日本では国民皆保険が導入されており、国民はいずれかの保険に加入する必要があります。では、看護師として加入する可能性がある保険である、国民健康保険、社会健康保険、医師国保それぞれの違いに関して具体的に解説していきましょう。
加入条件の違い
国民は原則としていずれかの保険に加入します。企業法人等に雇用され、その事業者が社会健康保険に加入している場合、雇用されている方は社会健康保険に加入することになります。同時にその方と同一世帯の家族も社会保険に加入することが一般的です。
社会健康保険に加入できない、されない方は原則国民健康保険に加入します。法人登記していない個人事業主の方や、フリーランスの方などは国民健康保険に加入しているケースがほとんどでしょう。
また、定年退職後など高齢の方も国民健康保険に加入しますし、アルバイトやパート勤務で、一定の条件を満たしていないという方も国民健康保険に加入しているというケースがほとんどです。
つまり、一般的に考えれば、サラリーマンとその家族は社会健康保険、それ以外の方は国民健康保険ともいえます。
医師国保に関しては、加入条件が医師会に加入している医師、もしくはその家族、従業員であるということが条件です。加入条件という点では、社会健康保険や国民健康保険とは大きく違うということができます。
保険料の違い
医師国保と社会健康保険、国民健康保険において、一番大きな違いというと保険料が挙げられます。社会健康保険も国民健康保険も、加入している方の収入によって納付する保険料が決定するため、収入が保険料に影響するというのが基本です。収入の少ない方は保険料が安くなりますし、収入が多ければ保険料は高くなります。
一方医師国保の場合、保険料は収入に影響を受けません。仮に年収が1,000万円を超える医師であっても、その医師に雇用されており、初任給を受け取る看護師であっても、医師会が定めた金額を納める必要があります。
そのため、収入の多い方にとってはメリットが大きいシステムであり、収入が低い方にとっては、保険料負担が大きいというデメリットがあるシステムです。
看護師として働く場合、自身の収入によっては保険料負担が厳しくなる、楽になるというケースが考えられますので、その点は十分考慮して検討するのがおすすめとなります。
自家診療時の保険請求の違い
医師国保とほかの健康保険の違いに関しては、「自家診療」が保険請求の対象になるかどうかという点があります。
自家診療とは、医師が自身および家族、従業員である看護師等に対して行う診療全般です。医師が自分自身を診療することを自己診療といいますが、この自己診療も自家診療に含まれます。こうした自家診療に関しては、医師国保では保険の対象外となり、患者が全額を負担をしなければいけません。
自家診療が保険対象外となるのは、健康保険法と医師法という法律が大きく関与しています。健康保険法では自家診療を保険診療として認めていません。その理由は自家診療の場合、診療の実態があるかどうかを証明することが難しくなるからです。
保険を適用するということは、国庫からその診療代金の一部を支払うことを意味しています。国民全体から徴収する保険料から支払いを行う以上、そこに診療実態があることが必須と言えます。
自家診療の場合、例え実態がなくても診療を行ったとして請求をすることが可能です。こうした不正が行われる可能性があるため、自家診療は保険診療の対象外として法で規定されています。
また、医師法において、医師が行うのは「医業」と定義されています。医業とは業として医術を提供することを意味しており、自身等に対して行う医術は、業ではないという考え方になります。
自家診療自体は禁止されているものではありません。例えば医師が家族に緊急な処置が必要になった場合、医術を用いて対応することは違法ではありません。しかし、その医行為を業として申請し、保険適用を受けるのは違法ということになります。
自家診療に関しては、協会けんぽ(社会保険)の場合は保険対象となります。つまり協会けんぽに加入している医療機関の場合、従業員の診察を行った場合でも、保険診療の対象となるということです。
医師国保とほかの健康保険の大きな違いの一つとして、自家診療に対する対応があるという点は覚えておきましょう。
国民年金への加入の有無
健康保険と同時に確認しておきたいのが年金の問題です。一般的に国民健康保険に加入している方は国民年金、社会健康保険に加入している方は厚生年金への加入が義務付けられています。
看護師の方が転職等で医師国保加入となった場合、年金は国民年金に加入することになります。それまでの職場で厚生年金に加入していた方は、年金の切り替え申請が必要です。年金の切り替え申請に関しては、原則自分自身で行う形となります。年金手帳等必要書類を用意して、自身が住む地域の役場で申請を行うことになります。近年では、電子申請に対応する役場も増えていますので、お住いの役場が電子申請に対応しているかどうかなども確認しておくといいでしょう。
ちなみに国民年金の場合、年金納付額は看護師自身が全額を納付することになります。令和6年度の納付額は毎月16,980円です。一方厚生年金の場合は、加入者の収入によって納付額が決定します。細かい解説は省きますが、2024年10月時点では、標準報酬月額の18.3%が年金保険料の納付額であり、この金額を雇用者と折半して納付しますので、加入者負担分は標準報酬月額の9.15%という計算になります。
国民年金と厚生年金でどちらが加入者負担が大きいかは、加入者の収入次第ですが、場合によっては負担が大きくなるというケースがあることも覚えておくといいでしょう。
スカウトサービス登録はこちら3.医師国保に看護師が加入するメリット
ここまで医師国保とほかの健康保険の違いなどを解説してきました。では、実際に看護師の方が医師国保に加入する場合のメリットやデメリットを解説していきましょう。まずはメリットから解説していきます。
看護師が医師国保に加入するメリットには以下のようなことが挙げられます。
- 保険料が収入と関係なく決められている
- 加入地域によっては助成金がある
- 金銭的な負担が事業所にない
まずは保険料に関するメリットです。医師国保は上でも紹介した通り、収入に関係なく一定の保険料を納付します。つまりある程度の収入があれば、保険料負担が軽くなる可能性があるということになります。どの程度の収入で保険料負担が軽くなるかという点に関しては、都道府県ごとの医師会でも保険料に差がありますので一概には言えませんが、保険料が安定しているという点はメリットといえるでしょう。
また、医師国保の保険料は年間で決まっており、それを毎月分割して納付するのが一般的です。そのため、賞与がある場合、賞与から保険料が差し引かれないというメリットもあります。
社会保険の場合、加入者の収入によって保険料が決定しますので、賞与が支給された場合、その賞与に対しても保険料がかかるため、保険料等が差し引かれた金額が支給されます。この点も医師国保のメリットと考えられるでしょう。
全国の医師会では、医師国保加入者に独自の助成金を支給しているケースがあります。こうした助成金はほかの健康保険では見られないものもあり、この点もメリットといえるでしょう。
例えば東京都医師会では、女性加入者を対象に、乳房エコー検診を受ける場合5,000円を上限とした助成金が支給されます。ほかの医師会でもそれぞれ助成金を支給しており、この点はメリットといえるでしょう。
最後に紹介するのは、主に雇用する医師にとって大きなメリットです。医師国保は事業所負担がなく、加入者が全額負担をします。社会保険と比較すると事業所にとっては保険料負担がないというのがメリットです。もちろんこれは事業所にとってのメリットですが、事業所に保険料負担がなく、財政的な負担が少ないということは、そこで働く看護師にとってもメリットがあると考えられます。
保険料負担がない分を人件費に回せると考えた場合、看護師の収入面でもプラスがあると考えられるからです。医師国保に加入している職場への転職等を希望する場合、待遇面もしっかりチェックして検討するのがおすすめと言えます。
スカウトサービス登録はこちら4.医師国保に看護師が加入するデメリット
医師国保に加入することが、看護師にとってデメリットとなる可能性も十分にあります。そんなデメリットもいくつか紹介していきましょう。
- 扶養家族が増えると保険料も増える
- 収入が少ないと保険料負担が大きい
- 自家診療分の保険請求ができない
医師国保は世帯単位での加入が原則です。そのため扶養家族が増えれば、それだけ保険料負担が増えるということになります。もちろん家族に関する保険料に関しても、収入に関係なく一定ですので、収入が増えないまま扶養家族が増えるとなると、保険料負担が一気に増えてしまいます。
当然収入が減った場合でも保険料負担が減ることはありません。転職等で収入が減っても、保険料負担は変わりませんので、金銭面で厳しいというケースは考えられます。それまで社会保険適用の医療機関に勤務していて、医師国保のクリニックに転職したら、保険料負担が一気に増えて驚いたという声も少なくありません。
保険料の負担は毎月の生活に直結する大切な部分です。就職や転職の際には、この点も十分に理解し、検討する必要があります。
自家診療が保険の対象外という点も無視できないポイントです。看護師として働く中で、体調の悪い日もあるかと思います。風邪をひくなど体調が悪くなった場合、勤務している病院で診療を受けてしまうと、全額自己負担となってしまいます。そうならないためにはほかの診療所やクリニックを利用する必要がありますが、当然仕事は休みをもらう必要があります。医療機関に務めながら、診察を受けにくくなるというのはデメリットでしょう。
また、特に女性看護師の方にとってのデメリットとしては、保険内容の差も大きな問題といえるかもしれません。特に出産や育児に関する部分でほかの保険とは保険内容に差があります。
まず医師国保では出産手当金が支給されません。また、産休・育休中でも保険料の支払い免除が受けられないため、保険料の納付を続ける必要があります。女性に限らない保険内容の違いとしては、加入する医師国保によっては傷病手当が出ないというケースもあり、この点もデメリットと考えることができるでしょう。
医師国保は納付金額や保険内容において、決定的なデメリットがあると考えられます。そのため看護師が医師国保に加入するのはデメリットが大きいという論調が多いというのが現実です。
もちろん、一定以上の収入があり、これ以上扶養家族が増えないという看護師の場合、反対にメリットが大きいという考え方もありますので、まずは医師国保という制度の内容をしっかりと理解し、自身にとってメリットとデメリットのどちらが大きいのかを自分で判断するのが重要になります。
スカウトサービス登録はこちら5.まとめ
医師国保は、各都道府県に設置されている医師会に所属している医師が加入できる保険制度です。また、その医師の家族も加入対象者となります。さらにその医師が独立開業した場合、そのクリニックで働く従業員も医師国保に加入するケースが考えられます。
医師国保はこのように加入条件が特殊であり、看護師の方でもその概要を知らないというケースが多いでしょう。特徴は保険料が収入の影響を受けないという点や、国民年金への加入が義務付けられているという点です。これらの特徴は、看護師にとって収入に直結する問題でもありますので、しっかりと理解しておく必要があるでしょう。
また、保険の内容については、自家診療が保険診療の対象外であったり、出産や育児に関する保証に差があるという特徴もあります。いずれも加入するかどうかの条件としては大きな条件となりますので、しっかりと検討するのが重要です。
医師国保は看護師にとって、一概にデメリットばかりというわけではありません。看護師の方にとってはメリットの方が大きいと感じるケースも多々あるかと思いますので、何より自分自身の場合、メリットとデメリットのどちらが大きいのかを判断するのが重要です。
さらに転職や就職の場合は、保険制度がすべてではありません。待遇や通いやすさ、従事する業務など、ほかの項目も併せて考える必要があります。そのためにも、まずは医師国保という制度に関する基礎知識をしっかりと身に着けて、職場探しをするようにしましょう。
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