AIに看護師の仕事は奪われる?医療AIのメリットデメリットと活用事例を紹介
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「看護師の仕事はAIに奪われてなくなってしまうの?」
「AIを活用して看護師不足を解消することはできないかな?」
このような不安や疑問を抱えている人もいるのではないでしょうか。
たしかに、昨今のAI技術の進歩は目覚ましいものがあり「10年後には人の手が必要なくなる仕事」として危惧されている職業も多いのも現実です。
しかし、看護師は「人間らしさ」が求められる仕事なのでAIに奪われることはありません。また、AIを効果的に活用することで看護師の仕事負担量を減らすことも可能になります。
この記事では看護師の仕事がAIに奪われない理由、看護現場でAIを導入することのメリット・デメリットを紹介します。あわせて、AIを導入した事例も紹介していきます。
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1.AIに看護師の仕事は奪われる?
結論から言いますが、先述した通り看護師の仕事が完全にAIに奪われることはありません。
たしかに、AIの技術進歩は驚異的であり100%奪われないと断言することはできないと思うかもしれません。
しかし「人間らしさ」が求められる以上、今後どんなにAIが進化したとしても人間の看護師が全く必要ないといった事態になることはないでしょう。
ここでは、看護師の仕事がAIに奪われない理由を詳しく解説していきます。
看護師の仕事がAIに奪われない理由
看護師の仕事がAIに奪われることはないと断言できる一番の理由は、AIは患者さんの心のケアをすることができないからです。
看護師の仕事の重要な役割は、日々状態が変わる患者さんとのコミュニケーションや、痛い・辛いといった病気への思いに対して共感するといった人間的な部分にあります。
例えば、患者さんから「もう長く生きられないから、最期に好きなものが食べたい。」と言われたとします。
看護師は「口から食べる」ことを大切にしている患者さんが一定数いることを日々感じています。
仕事とはいえ、何度も看取りを経験する中で、叶えることが難しいと分かっていても「最期の希望くらいは叶えてあげたい」「患者さんの尊厳を守りたい」といった感情を持つようになります。
なので人間の看護師であれば、食事形態や食事を摂取する際の体制を工夫することで、一口でも安全に食べることができないか検討するでしょう。
一方、AIは人間の感情を理解することができません。看取りを経験することもないです。
なので、「あなたが口から食べ物を摂取することは、窒息や肺炎のリスクを高めるので控えたほうが良いでしょう。」といった、患者さんの気持ちを無視した返答をされる可能性が高いです。
このように患者さんの言葉から感情を読み取ることができず、コミュニケーションやケアに活かすことのできないAIが、心のケアのプロである看護師から仕事を奪うことはありえないのです。
AIが得意なこと、人間が得意なことの違い
AIは膨大なデータを短時間で分析し、パターンを見つけ出すことを得意としています。
過去の診療記録や看護記録、バイタルサインのデータに基づいて現在の患者の状態を予測することができるので、アセスメントや看護計画の立案に役立てることが可能です。
また、入退院サマリの作成や、日々のバイタルサイン、食事、排泄などの記録をカルテに入力するのにかかる時間もAIのほうが圧倒的に速いです。
一方、人間の看護師は共感能力、コミュニケーション能力、状況に応じた臨機応変な判断力に長けています。
患者さんの不安や痛みを理解し寄り添うこと、患者さん一人ひとりの個性や状況に合わせたケアを提供するといったことは、人間の看護師にしかできません。
AI自身はどう考えている?ChatGPTに質問してみた
一般的に広く知られる生成AI、ChatGPTに「看護師の仕事はAIに奪われますか?」と聞いてみました。
ChatGPTの回答:
看護師の仕事は、AIによって一部はサポートされるかもしれませんが、完全に奪われることは難しいと考えられます。AIはデータの分析やパターンの認識、診断のサポートなどで非常に役立ちますが、看護師の仕事には多くの人間的な要素が含まれています。
たとえば、患者とのコミュニケーション、感情的なサポート、細やかなケアなどは、AIが完全に代替するのが難しい領域です。また、看護師は状況に応じた柔軟な判断や対応を求められることが多く、これもAIには難しい部分です。
とはいえ、AIの進歩によって看護師の仕事が効率化され、より多くの時間を患者のケアに充てることができるようになるかもしれません。つまり、AIは看護師の仕事を完全に置き換えるのではなく、補完する形で進化していくでしょう。
スカウトサービス登録はこちら2.AIは看護師の仕事をどう変えるか?
看護師の仕事がAIに完全に奪われることはありませんが、医療現場にAIを導入することによって看護師の働き方は大きく変化していくことが予想されます。
ここでは、看護現場にAIが導入されることで看護士の働き方がどのように変わるか解説していきます。あわせて、看護現場にAIを導入するメリットとデメリットも紹介します。
看護現場へのAI導入のメリット
1)事務作業の効率化:
看護師が任される業務の範囲は医療職の中でも特に幅広く「看護師でなくてもできる仕事」も多く任されている現状があります。
入退院時の患者情報の入力や書類作成、患者さんのバイタルチェックや食事、排泄の記録などの反復的な事務作業をAIが代行することで、業務の効率化がはかれます。
また、輸液ポンプや採血スピッツなどの物品のやり取りをAIが代行することで、看護師は本来の業務である患者へのケアに集中できるようになります。
さらに、医療機器とAIを組み合わせることで、患者さんの状態をより正確かつ迅速に把握することができるようになり、適切なケアを適切なタイミングで提供できるようになります。
2)患者のモニタリング:
ウェアラブルデバイスやセンサーとAIを連携させることで、患者さんのバイタルデータをリアルタイムで監視することができるようになります。
例えば、心電図モニターをAIと連携させた場合、不整脈などの異常な兆候を早期に検出し看護師にアラートを送ることで、これまでよりも早い段階で患者さんの安全を確保することが可能になるでしょう。
3)教育の支援:
AIはシミュレーション技術を用いて、膨大な臨床データから教材を作成することを得意としているので、看護学生や新人看護師の教育に活用できます
また、臨床データから作成した様々な症例について、どのような看護が必要か検討することで、実際に現場で活かすことができる知識が獲得できるなど、看護職員のスキルアップを図ることが可能になります。
看護現場へのAI導入のデメリット
1)金銭的、時間的コストがかかる
AI導入にはまとまったコストがかかります。大病院であれば導入しやすいでしょうが、地域密着型の小規模な病院や診療所・クリニックで導入するのは難しいかもしれません。
また、新技術を導入するためには職員への教育が必要になります。電子カルテが導入されたときと同じように、使いこなせない職員が現れることが予想できます。
AIを使いこなせる人間と使いこなせない人間が混在する期間は、現場が混乱する可能性が高いです。
さらに、使いこなせない看護師の離職に繋がってしまう可能性も否定できません。
2)デジタルデバイド(情報格差)のリスク
看護師の間でAIを使いこなせる人間とそうでない人間が生まれてしまうと、AIを使いこなせない看護師は活躍の幅が狭くなってしまう可能性が高いでしょう。
また、スタッフ間だけでなく病院・施設間での技術格差が生まれる懸念もあります。
電子カルテが普及した現在では、紙カルテの病院が若い看護師から敬遠されるように、AIが使えない病院は若いスタッフ確保が難しくなるかもしれません。
格差が生まれるとケアの質の不均衡、経済的な格差、医療の不平等化などが進むデメリットがあります。
3)雇用が減少する可能性がある
AIが文書作成や物品の運搬、問診を代行することによって業務が効率的に回るようになります。業務の効率化によってより少ない看護師数で現場を回せるようになると、看護師の需要が減ることも考えられます。
人手不足が解消するまでにとどまれば良いですが、資格があれば食いっぱぐれることはないといった看護師のイメージは過去のものになる可能性もあります。
看護師に求められる役割・スキルは変化していく
・高度なコミュニケーション能力:
バイタルサインなどのデータ入力や物品の運搬、問診業務などAIが担う業務が増える一方で、患者さんとのコミュニケーションや感情的なサポートは依然として看護師の重要な役割となります。
AIを活用することで業務負担が軽減する分、看護師にはより高いコミュニケーション能力が求められるようになるでしょう。
患者さんの言葉に耳を傾ける傾聴能力や、患者さんの言葉の裏側まで読み取るような共感能力など人間の看護師にしかできないケアに必要となる能力をより磨くことが必要です。
・専門性の向上:
当然ですが、AIが提供する情報を活用してより高度な看護を提供するためには、医療・看護分野の専門知識を習得する必要があります。
アセスメントや看護計画の立案をAIにすべて任せるといった活用の仕方はできないことに注意が必要です。
また、看護分野の知識や技術のみならず、データ分析能力やAIを活用するためのスキルも求められるようになることが考えられます。
スカウトサービス登録はこちら3.医療AIの活用事例
ここでは、実際にAIを導入した事例をいくつか紹介します。
活用例1:システムAIの活用で転倒転落リスクを評価した事例
・課題
入院時に漫然と転倒転落評価シートを利用している。
高齢者が増加したことで92%の患者さんが転倒ハイリスクと評価されていた。
・導入したAIと取り組み内容
転倒転落評価システムAI(言語解析AI)を導入。
過去3年分のデータと実際に転倒転落を起こした患者さんのデータをAIに学習させた。
分析したリスク評価から、要因別にデータを抽出・レーダーチャート化して患者に即したケアにつなげた。
・結果
AIが自動で分析してくれるため、患者さん1人あたり5分かかっていた転倒・転落リスクの評価をする必要がなくなった。
導入前は年間460件あった転倒転落インシデントの報告数が、導入後は年間284件まで減少した。
導入前は92%患者さんが転倒ハイリスクと評価されていたが、導入後は45%に減少し、本当に注意が必要な患者さんが分かるようになった。
参考サイト:日本看護協会「患者の転倒転落リスクをAIで予測し多職種連携で個別ケアを実践する!」
活用例2:業務自動化AIの活用により管理者の労力を軽減させた事例
・課題
管理者の手作業による看護師の勤務管理(採用、退職、異動、産休、育休、時短勤務時間の変更など)のデータ管理に、多くの時間と労力がかかる。
大量のデータを人間が手作業で行うため、ヒューマンエラー(転記ミス・計算ミスなど)が頻繁に起こっていた。
・導入したAIと取り組み内容
RPA(Robotic process automation:業務自動化AI)を導入。
看護管理者が「人員管理データ集計・資料作成」の作業工程を洗い出す。
洗い出した工程を担当者と確認し、システムを構築した。
・結果
データ管理・入力に毎月3〜4時間要していたが、作業を全てRPAが行うため毎月5分の印刷時間だけで済むようになった。
転記ミスや計算ミスが防止できることで、正確な資料作成が可能となった。
資料作成にかかる消耗品が不要になり、経費が削減された。
参考サイト:日本看護協会「RPA ( Robotic process Automation:ロボットによる業務自動化 ) 導入による看護管理業務の効率化」
活用例3:AI問診の導入により問診にかかる時間が短縮した事例
・課題
紙ベースの問診票は内容が画一的なので、患者さんに記入してもらったあと看護師追加で情報収集を行っており、事前問診に時間がかかっている。
問診票の内容を電子カルテに打ち直す事務的な手間がスタッフの負担になっている。
・導入したAIと取り組み内容
ユビーAI問診を導入。(タブレットやスマートフォンを利用した事前問診システム)
患者さんの抱える症状や病歴などからAIが必要な質問事項を考えることで、従来の画一的だった問診とは異なる患者さんにあわせた問診を行った。
・結果
紙ベースの問診票を管理(カルテへの取り込み、ファイリングなど)の手間がなくなった。
患者さん1人あたりにかかる問診時間が5〜10分短縮されたことで診察待ちの時間が短縮、看護師の残業時間も減少した。
参考サイト:AI問診の活用で初診患者大幅増にもスムーズに対応。看護師の負担も軽減されました。
参考サイト:待ち時間が10分から3分に短縮!AI問診と予約システムの連携による事前のカルテ立てで混雑時の対応がスムーズに
活用例4:音声入力AIの導入により看護師の記録時間が短縮した事例
・課題
患者さんに行ったケアの記録やバイタルチェック、食事、排泄などの日常的な記録に時間がかかっている。また、リアルタイムで記録をすること推奨されているが、処置ごとにパソコンで記録をするのは現実的ではない。
さらに、共有のパソコンで記録をしているため、記録をするたびにキーボードに触れる必要があり接触感染の機会になっている。
・導入したAIと取り組み内容
看護記録支援システムを導入。
専用のアプリを利用して、バイタルサインの数値や実施したケアの内容を音声データをその場で保存し、スタッフステーションに戻ってからカルテに転送する。必要に応じて転送した記録を少し修正するだけで看護記録が完了するようにした。
・結果
ベッドサイドや移動中にリアルタイムで記録をすることが可能になった。
手作業での入力に比べて、音声入力では看護記録にかかる時間が51%短縮された。
音声入力を活用することでパソコンに触れる機会が少なくなり、接触感染の機会が減少した。
参考サイト:AIを活用した看護記録支援システムとは
活用例5:AIを活用して入院患者の不穏行動を見抜いた事例
・課題
入院患者の34%が点滴などのルートをいじったり、ベッド柵を乗り越えたり、病院内を徘徊したりといった不穏行動を起こしている。
不穏行動を起こす患者さんは、通常の患者さんより退院が19日遅れている。
・導入したAIと取り組み内容
不穏行動を起こした患者数十人のデータを事前に学習させた。
患者に装着した時計型のセンサーから体温、心拍数などのデータを収集し、不穏行動を起こす患者に共通する特徴を抽出、不穏行動を未然に防ぐ取り組みを行った。
・結果
不穏行動の予兆を平均40分前に71%の確率で察知することに成功した。
治療の妨げとなる不穏行動を事前に防止することで、入院期間を短縮することが期待されている。
参考サイト:AI活用で「退院早く」 患者の“不穏兆候”を見抜く技術、NECが開発
活用例6:自立搬送ロボットを活用して本来の業務に集中できる環境を作った事例
・課題
人手不足や高齢化社会での患者数の増加に伴い看護師の業務の範囲が広くなっており、看護師の業務時間の中で患者さんに対するケアとは直接関わりのない雑務が多く発生している。
具体的には、看護師が行っている業務の約4割が「看護師でなくてもできる仕事」であった。
・導入したAIと取り組み内容
自立搬送ロボットを導入。
従来は看護師が行っていた薬剤・フットポンプ・輸液ポンプ・シリンジポンプ・低圧持続吸引器、採血スピッツなどの物品のやり取りをロボットが自動で行うようにした。
・結果
他の部署への移動を伴う物品のやり取りという、看護師でなくても務まる仕事を看護師がする必要がなくなったことで、本来の看護業務に集中できる環境が作られた。
夜間などのスタッフが少ない時間帯に、急変するリスクが高い患者さんのそばを離れる必要がなくなった。
参考サイト:自律搬送ロボットと“協働”し、看護師本来の業務に集中できる環境に(トヨタ記念病院)
活用例7:生成AIを搭載した電子カルテシステムを活用し医療文書作成にかかる時間を短縮した事例
・課題
慢性的な人手不足による看護師ひとりあたりの業務負担量の増加。
高齢化社会における受診・入院患者の増加も、看護師の業務負担量の増加に拍車をかけている。
・導入したAIと取り組み内容
生成AIを搭載した電子カルテシステム「MegaOak/iS」を導入。
医師や看護師の作成する診療情報提供書(紹介状)や退院サマリなどの医療文書をAIが代行することができるようになる。
具体的には、電子カルテに記載された情報を経過・検査・処方などに分類する。情報を時系列ごとに整理し、重要なキーワードをピックアップした上でAIにより文書が自動的に生成される。
・結果
診療情報提供所や退院サマリなど、医療文書の作成にかかる時間を平均47%削減でき、表現や正確性についても医師から高い評価を受けた。
AIが文書を自動で生成してくれるようになったので、患者さんのケアなど本来の看護業務を行うことができるようになる。
参考サイト:NEC、生成AIを搭載した電子カルテシステム「MegaOak/iS」の販売を開始
活用例8:AIによる非接触でのバイタルサイン測定
・課題
バイタルサイン測定をするたびに患者と接触するため、看護師自身が感染症にかかる危険がある。また、看護師は複数の患者を担当するのが通常であり、感染を広げてしまうおそれもある。
・AIと取り組み内容
スマートフォンによる非接触バイタルサイン測定を開発。
スマートフォンやタブレット、PCに備えられたカメラを用いて、血圧や心拍、血液酸素飽和度の測定が非接触で可能となる。
スマートスピーカーを用いた心拍モニタリングシステムを開発。
スマートスピーカーから部屋に向けて音波を発することで、心拍をモニタリングする。
高精度な心拍数測定を非接触で達成できるだけでなく、不整脈などの不規則な心拍を適切に識別することが可能という。
・結果
病院で導入された事例は無いが、今後導入されることで看護師のバイタルサイン測定にかかる時間の短縮・感染リスクの軽減につながることが期待されている。
また、AIであれば測定したバイタルサインから患者さんの状態を正確にアセスメントすることができるので、患者さんに適した看護計画が立てられるようになることも期待されている。
参考サイト:非接触でバイタルサインを測定~AIが実現、リモート時代の新しい疾患管理~|「医」の最前線
スカウトサービス登録はこちら4.まとめ
看護師の仕事は患者さんと関わる「人間らしさ」が必要な仕事と、看護記録などの「人間らしさ」が不要な仕事に分けられます。
「人間らしさ」が重要視される看護師の仕事がAIに奪われることはないでしょう。
しかし、AIを全く取り入れることができないということはなく、むしろ上手に活用することが重要な時代になっていくでしょう。
AIは、患者さんとのコミュニケーションや心のケアを苦手とする一方で、看護記録や情報収集などの単純作業を得意としています。
これからは看護師もAIと共働していく時代といえます。AIを上手に活用して、業務負担の軽減・残業時間の短縮・業務の効率化につなげていきましょう。
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