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多職種連携って何?どんなものなのか詳しく説明

  • 更新日
投稿者:小松 和貴

多職種連携とは、医療や介護、福祉に関わる職種が専門性を発揮し、共通の目標に向かって職務を遂行することです。多様化する医療ニーズのなか、医療や介護現場では多職種連携が欠かせません。

本記事では、多職種連携の概要や在宅医療との関係性、携わる職種などについて解説します。この記事を読めば、多職種連携について理解が深まり、新しい視点を取り入れて仕事ができるようになるでしょう。

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1.多職種連携とは

多職種連携とは、医療や介護、福祉に関わる専門職が連携し、それぞれの専門知識・スキルを発揮しながら職務にあたることです。多職種連携により、医療・介護の質を向上させ、効率的なサービスを提供することを目的としています。

近年では、地域包括ケアシステムの実現に欠かせない手段としても注目されています。多様化する医療ニーズを支えるためには、多職種連携で多方面から支援していくことが必須です。

多職種連携はいつから始まった?

日本に多職種連携が取り入れられたのは、介護保険制度が制定された2000年からです。WHOでは、1980〜90年代にかけて多職種連携の重要性を示していました。ところが、当時の日本は多職種連携に関心がなく、注目されませんでした。

日本でも、高齢化による医療ニーズの増加など課題が浮き彫りになり、多職種連携が取り入れられた背景があります。しかし、日本における多職種連携の歴史は浅く、その方法が確立し普及しているとはいえない状況です。

多職種連携と厚生労働省の関係って?

厚生労働省は団塊の世代が全員75歳以上となる2025年に向けて、地域包括ケアシステムを推進しています。その地域包括ケアシステムを実現するために、多職種連携が必要です。

今後は各職種での情報共有が重要になるため、円滑な情報共有を実現する「ICTの活用」が有用とされています。厚生労働省の取り組みにより、地域包括ケアシステムを支える多職種連携の強化を目指しています。

多職種連携とチーム医療の違いって何?

多職種連携は、医療・介護・福祉にかかわる専門職がチームとなって連携し、患者様に質の高いケアを提供することです。それに対してチーム医療は、医療のテーマごとに専門職がチームを組み、互いに協力しながら治療やリハビリにあたります。

たとえば、チーム医療では

  • 緩和ケアチーム
  • 糖尿病ケアチーム
  • 褥瘡対策チーム
  • 感染症対策チーム
  • 認知症ケアチーム

といったように分野ごとでチームを組みます。つまり、多職種連携はより広義の意味をもち、その一部にチーム医療が含まれるということです。

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2.多職種連携と在宅医療

在宅医療のニーズが高まるなか、一人ひとりの利用者さんを支えるためには多職種連携が欠かせません。ここでは、在宅医療における多職種連携について解説します。

地域包括ケアシステムって何?

地域包括ケアシステムとは、要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい生活を続けられるように、地域が一体となって支える仕組みのことです。厚生労働省が2003年から推進している考え方です。

高齢化の進展状況は、地域によっても大きな差があります。市町村や都道府県が中心となり、地域の特性に応じた医療・介護・予防・住まい・生活支援を包括的に提供できる体制を目指すのが地域包括ケアシステムです。

地域包括ケアと多職種連携の関係

「住み慣れた地域(自宅)で安心して暮らしてもらう」という地域包括ケアの共通目標を達成するには、多職種連携が欠かせません。医師や看護師、介護士、理学療法士、作業療法士などが協働して、高齢者を支えることが求められます。

また、厚生労働省は高い専門性をもつ多種多様なスタッフが、互いに連携・補完しながら本人とご家族を支援する、「チーム医療」を推進しています。つまり、地域包括ケアの実現には、多職種連携の成否にかかっており、より良いチームづくりが重要になるのです。

地域医療構想って何?

地域医療構想とは、2025年の後期高齢者人口の増加などを見据え、地域の実情に合わせた効率的な医療体制を整える取り組みです。医療需要は地域によっても異なり、必要な病床の種類や数は変わります。しかし、地域によって医療の質がバラバラになるのは避けなければなりません。

そこで、全国どの地域でも安定した医療体制を提供できるように、地域医療構想の策定が制度化されました。2025年に向けて医療機関ごとの役割を明確にし、地域で連携していくことを目指しています。

医療と介護の連携について

在宅医療における医療と介護の連携は、利用者様が望む在宅療養を実現するために不可欠です。医療と介護が連携することで、利用者様の健康管理(看護)と日常生活(介護)の両方の面でサポートができるようになります。

しかし、医療と介護は、それぞれ保険制度が異なることから、多職種間の理解や情報共有がうまく連携できていません。医療と介護を一体的に提供するために、市町村の地域支援事業として「在宅医療・介護連携推進事業」の取り組みが全国的に進んでいます。

在宅医療を受けるための費用はどれくらい?

在宅医療の費用は、サービス内容や収入、年齢などによりさまざまです。基本的には、通院した場合と変わらず、1〜3割負担となります。在宅医療にかかる費用の内訳は、訪問診療代・薬が出た場合の薬代・介護保険サービスにかかる費用(1〜3割負担)・その他費用などです。

医療保険において、在宅医療(訪問診療で院外処方箋を交付する場合)にかかる自己負担額の目安は以下のとおりです。

  • 1割負担の方で月2回の在宅医療:月7,000〜12,000円
  • 3割負担の方で月2回の在宅医療:月20,000〜25,000円

採血検査や心電図などを実施した場合は、別途で費用がかかります。

また、月の負担額が一定額を超えた場合は、超えた金額が後で払い戻される「高額療養費制度」の利用も可能です。

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3.多職種連携に携わる職種って?

ここでは、多職種連携に携わる職種について、どういった役割があるのか解説します。

主治医の役割

主治医は、看護師や介護士など他のメンバーに、治療の面で重要な情報提供や助言などを行うのが役割です。多職種連携では、それぞれの専門性から意見で相違があり、ときには職種間で対立する場面もあるでしょう。

医師がリーダー的存在として、異なる専門職の専門性を理解し、お互いに尊重できるように働きかけることが求められます。

薬剤師の役割

多職種連携における薬剤師の役割は、服薬説明や服薬指導、薬の管理です。調剤薬局に行くことができない患者様の代わりに、自宅に薬を届ける役割もあります。在宅療養をしている患者様のなかには、認知症や介護が必要な方も多いです。

そのため、以下のような問題が多く見られます。

  • 薬の飲み忘れ
  • 重複服用
  • 誤った方法での薬の管理
  • 副作用の発生

薬剤師は他の専門職と情報共有しながら、服薬指導や薬歴管理、医師へ処方の見直しを提案するなど、治療効果を高めるアプローチをしなければなりません。

看護師の役割

看護師は、多職種連携の中心的な役割を果たしています。患者様のケアに直接かかわり、医師と他の職種との間に立ち、情報共有や調整をする重要な存在です。

患者様にもっとも近い立場でかかわる看護師は、健康状態や生活状況などを多く知ることができます。患者様の背景を理解し、コミュニケーションを通して信頼関係を構築していかなければなりません。

また、看護師は介護士や理学療法士、ケアマネジャーなどとも接点が多いです。チームの仲介役として情報を共有し、全体の連携が円滑になるように調整する役割があります。

ケアマネジャーの役割

多職種連携におけるケアマネジャーの役割は、関係機関との連携・調整、家族対応などです。また、利用者様とサービス提供事業所をつなぐ、橋渡し的な役割もあります。

ケアマネジャーの主な仕事はケアプランの作成です。ケアマネに求められるのは、多職種連携を考えたうえで、計画を立てることです。ケアマネジャーが専門機関とうまく連携できるかによって、利用者様のケアにも影響が出ます。

管理栄養士の役割

多職種連携における管理栄養士の役割は、食や栄養に関する視点から、専門職と情報共有や意見交換をすることです。食欲の低下や栄養状態が悪い方に栄養サポートを行う際、カルテの情報だけでは足りないこともあります。

食べることを阻害する原因を探るために、本人やご家族とのヒアリングを重ねることが重要です。しかし、管理栄養士だけの働きでは、情報収集に限界があります。

多職種から治療や服薬の状況、口腔内の状況などを細かく共有してもらうことで、よりよい栄養サポートができるようになります。そのため、管理栄養士は単なる栄養サポートだけでなく、多職種との情報共有や意見交換が欠かせません。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の役割

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などの専門職は、医師の指示に従って在宅生活で必要となるリハビリを提供します。患者様に適切なリハビリを提供するために、多職種との情報共有が大切です。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は、以下のように役割が異なります。

  • 理学療法士:歩行、起き上がるなどの「基本動作」を中心にリハビリを提供
  • 作業療法士:料理をする、字を書くなどの「応用動作」を中心にリハビリを提供
  • 言語聴覚士:話す、食べる、聞くなどの「コミュニケーションや食事」を中心にリハビリを提供

このように、それぞれ別の視点から患者様にリハビリを行うため、多職種連携は必須です。リハビリ職だけでなく、医師や看護師などと情報共有しながら最適なリハビリを提供する役割があります。

医療ソーシャルワーカーの役割

医療ソーシャルワーカーは、社会福祉士資格と精神保健福祉士資格の国家資格保有者を総称した呼び方です。総合相談窓口のような役割があります。

患者様やご家族の生活状況や経済状況を的確に把握し、社会資源の活用ができるように支援します。また、退院後の生活に繋げるべく、地域の多職種と連携を図り、患者様が安心して在宅生活ができるように支援することも重要です。

つまり、患者様の質の高い生活を支えるのが医療ソーシャルワーカーの役割といえます。そのためには、幅広い職種を理解して連携を図り、地域を含めたチームづくりが求められるでしょう。

介護職員の役割

介護職員は、介護施設や自宅で生活する介護保険の利用者様に対し、生活全般を援助するのが役割です。具体的には、食事や入浴、排泄などの介助、居室の掃除やレクリエーションの実施など幅広く行います。

利用者様の状態は一人ひとり異なるため、それぞれのニーズに応えることが大切です。しかし、介護職員だけの体制では限界があります。看護師や理学療法士、管理栄養士、ケアマネなどと連携することで、利用者様やご家族に適切な支援が可能になるのです。

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4.多職種連携が必要になったのはなぜ?

日本では少子高齢化が急速に進み、医療ニーズが多様化しています。その影響で高齢者を支える働き手が不足しており、医療の質や効率性の向上、安全性を保つためにも多職種連携は不可欠です。

ここでは、多職種連携の必要性やメリットと課題を解説します。

医療・介護サービスの質の向上

医療・介護サービスの向上には、多職種連携が重要です。多職種が患者様にかかわることで、それぞれの視点から幅広い情報収集ができるようになります。

その情報を多職種間で共有すれば、それぞれの専門的な観点からアセスメントを行い、治療やケアの最適解を導き出せます。

その結果、各専門分野の職種が自分の役割に集中し、能力を発揮できるので、ケアの質の向上につながるでしょう。

また、患者様によってかかわる職種は異なります。どの職種と連携を図ればよいのか検討しながら対応することが大切です。

患者の多様なニーズに対応するため

日本では高齢化が急速に進み、医療や介護を必要とする要介護者が増えています。生活習慣病や認知症など、慢性疾患を併存している方も多いです。また、生活様式の違いや家族関係のあり方など、医療・介護ニーズはどんどん多様化・複雑化しています。

そこで、患者様の症状や生活状況ごとに柔軟に対応できる、多職種連携が不可欠です。さまざまな専門分野の知識とスキルをもつ職種が協力することで、多角的なアプローチが可能になります。

不足している専門知識を補うため

豊富な専門知識や技術をもつ職種でも、単体では多様化する医療・介護ニーズには対応できません。各専門分野に精通する職種が連携することで、不足している知識を補い合える点が多職種連携が必要とされる理由です。

たとえば、看護師だけのケアでは、生活状況の視点やリハビリの視点が欠けてしまいます。他の職種と密なコミュニケーションを取り、お互いに不足している知識を補い合うことで、患者様やご家族の細かなニーズにも応えられるのです。

多職種連携のメリット

前項までに解説した多職種連携の必要性を踏まえると、

  • 医療・介護サービスの質の向上につながる
  • 多様化・複雑化するニーズに対応できる
  • 不足している専門知識を各職種で補える

といったメリットがあります。多職種連携を実践すれば、看護師や介護士、ケアマネ、作業療法士など、異なる専門家の解釈を交えてサービスの提供ができます。ケアの質の向上はもちろん、各職種で知見の拡大やスキルアップなどの相乗効果も期待できるでしょう。

多職種連携のデメリット

多職種連携のデメリットは、職種間のコミュニケーションによってかえって悪い方向にいく可能性があることです。各職種はそれぞれの専門性を追求する傾向があり、独自の価値観や考え方を築いています。

「相手も同じ意見のはずだ」「こっちの意見の方が正しい」といった思い込みがあり、それが行き違うことでトラブルにも発展しがちです。多職種連携は各専門分野に特化した人たちが連携することで相乗効果が生まれ、質の高い医療・介護を提供できるようになります。

しかし、多職種連携の体制が整っていない職場の場合、コミュニケーションギャップが生まれ、かえってデメリットになるでしょう。

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5.多職種連携の課題と対策とは

ここでは、他職種連携の課題と対策について解説します。

人材教育トレーニングの不足

多職種連携の課題は、専門性を高める機会が少ないことです。多職種連携によって医療・介護サービスの質を向上させるためには、各職種が専門性を高めなければなりません。

しかし、人手不足などの影響で、教育や研修などの学びの場が少ないのが現状です。多職種連携で活躍できる人材の教育・育成など、トレーニングの場を充実させる必要があります。

情報交換・情報共有がすぐに出来ない

情報交換・共有がすぐにできない点も課題の一つです。互いに時間がなかったり、忙しさが理由で遠慮したりなど、すぐに連携が取れないケースが目立ちます。

また、各職種はそれぞれの業務に従事しているため、スケジュールが合わないことも多いです。

限られた時間で連携するためには、ZOOMなどのオンラインツールの活用がおすすめです。施設の垣根を越えて、オンラインですぐに情報共有・意見交換ができるようになります。

情報を共有する相手や内容の範囲の難しさ

多職種連携では、さまざまな職種とかかわります。どの職種に、どのような情報を共有すればよいのかわからない方も多いです。また、それぞれの視点や考え方、問題の捉え方が異なり意見が対立するなど、コミュニケーション上の難しさもあります。

対策としては、定期カンファレンスの開催や連絡ノートなどを使って、丁寧に共有することが大切です。さらに、多職種とコミュニケーションを取る際は、

  • 専門用語などはわかりやすく言い換える
  • 相手の意見もしっかり聞く
  • こまめな報連相を心がける

などの配慮も欠かせません。

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6.まとめ

多職種連携はそれぞれの職種の専門知識とスキルを活かすことで、医療・介護サービスの質の向上につながります。地域包括ケアシステムの構築が進むなか、多様化・複雑化した医療ニーズに対応するためには多職種連携が欠かせません。

多職種連携で活躍していくためには、相手からのコミュニケーションを待つのではなく、自分から提案していくのも大切です。普段から多職種と積極的にコミュニケーションを取るようにしておけば、自身のキャリアアップ・スキルアップにもつながるでしょう。

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2022年4月よりセカンドラボ株式会社に入社。主に病院を中心に医療介護向け求人メディア「コメディカルドットコム」の営業・採用課題のサポートを行う。

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