言語聴覚士(ST)とはどんな仕事?年収、資格の取り方、需要と将来性を徹底解説!
- 更新日
「言語聴覚士って具体的に何をしているの?」
「言語聴覚士はどこで活躍しているの?」
言語聴覚士と聞いても、その仕事が具体的にどのようなものかピンと来ない人もいるかもしれません。どんな業務を行うのか、どの程度の収入が得られるのか、また、働くためにはどうすればよいのかなど、不明点は多いでしょう。
この記事では、言語聴覚士の仕事内容や資格取得の方法、さらには働き方や将来性について詳しく解説していきます。
言語聴覚士って魅力的な仕事かも!と少しでも思ってもらえれば幸いです。
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目次
1.言語聴覚士とは?
言語聴覚士とは、言語、聴覚、摂食(食べ物を口に入れて食べること)や嚥下(飲み込むこと)などに関する訓練や指導、支援を行うリハビリの専門職です。国家資格として定められています。
「言語」という言葉がついているため、単に話すことに関するリハビリを担当するイメージを持たれるかもしれません。しかし、言語聴覚士は言葉に関することだけでなく、摂食や嚥下はもちろん、発達、聴覚、認知など幅広い分野に携わります。
言語聴覚士は英語では「Speech-Language-Hearing Therapist」と言います。日本国内ではこの英語表記の頭文字を取って「ST」と呼ばれることがあります。
言語聴覚士の役割
言語聴覚士の役割は、患者が抱える問題の原因と仕組みを解明し、解決に向けてリハビリを行うことです。
言葉の障害や聴覚の障害、声や発声の障害、そして食べることに関する問題について、まずはその原因や仕組みを理解することが大切です。言語聴覚士は、どう対処すべきかを判断するために、テストや検査を行います。結果をもとに、必要な訓練や指導、アドバイスを行うのが主な仕事です。
言語聴覚士の歴史
日本における言語聴覚士の歴史はまだ浅く、現在のように国家資格として認められたのは1997年(平成9年)です。
世界を見てみると、ヨーロッパでは18世紀から、アメリカでも1900年代前半には、言語聴覚士と似たような資格が存在していました。比べて日本で言語聴覚士について考えられ始めたのは1960年代だと言われています。
資格が制定されるまでに40年近くかかったのは、どのように資格を認定するかについて議論がまとまらなかったためです。言語聴覚士は医療従事者であると同時に、対象者に教育を行う教育者でもあります。そのため、受験資格や担う役割について意見が分かれ、資格の制定が遅れました。
最終的には少子高齢化社会に向けて、言語聴覚士の制定を急ぐべきだと考えた政府が主導し、現在の形となりました。
言語聴覚士と理学療法士、作業療法士の違いは?
リハビリテーションの専門職と呼ばれる資格には3つの資格があります。
- 言語聴覚士
- 理学療法士
- 作業療法士
言語聴覚士に関しては、上でも紹介した通り、言語や摂食などのリハビリを担当する専門職です。
理学療法士は、「Physical Therapist」(略称:PT)とも呼ばれ、身体機能の回復を目的としたリハビリを担当します。ケガで歩行が困難になった方や、病気の影響で腕や手に麻痺が残った方などに対し、運動機能を回復するためのリハビリが主な業務です。
作業療法士は、「Occupational Therapis」(略称:OT)と呼ばれ、日常生活に必要な作業を行えるようなリハビリを担当します。洗面や歯磨き、家事、入浴、排泄などを自分の力で行えるように指導していきます。リハビリ対象者には精神的な障がいを持つ方も含まれるのも特徴です。
2.言語聴覚士の仕事内容とは?
言語聴覚士の具体的な仕事内容は大まかに以下の3つです。
- 検査・評価
- 訓練
- 助言・指導
まず、患者ごとに検査を行い、症状や問題について正確な評価をします。この評価に基づいて、さまざまな訓練を提供するのが主な仕事です。
訓練を進める中で、患者やその家族と密に連絡を取り、適切な助言を行います。日常生活で気を付けるべき点をしっかりとアドバイスし、指導することで、患者が問題なく日常生活を送れるようサポートします。
より詳しく見ていきましょう。
言語聴覚士が対象とする障害・疾患
日本言語聴覚士協会によると、以下の3つが中心です。
- 発声・発語
- 摂食・嚥下
- 成人言語・認知
話すことや食べることに関する指導が、言語聴覚士の業務の中心と考えて良いでしょう。言語聴覚士は、高次脳機能障害などの認知機能の低下に対するリハビリも行うため、認知に関する業務も多く含まれます。
言語聴覚士の対象となる患者は高齢者に限りません。話すことや聞くことに問題を抱える小児も対象となるため、幅広い年齢層の患者がいます。
病期に応じた言語聴覚士のリハビリ内容
患者の病期を以下の3つに分けて説明します。
- 急性期⇒障がい発生直後
- 回復期⇒症状が落ち着き回復に向かう
- 維持期⇒症状が改善した状態を維持する
急性期は、患者だけでなくその家族も現実を受け入れるのが難しいタイミングです。何より患者の容体が不安定なため、まずはその状況に留意しながらリハビリを行う必要があります。
回復期は、患者や家族の気持ちが安定し、比較的前向きにリハビリに取り組める時期です。このため、リハビリの効果が高く、スムーズに進行します。家族が落ち着いている場合は、今後の食事に関する指導も行いながら、回復を目指します。
維持期は最終段階で、単に訓練を行うだけでなく、社会復帰に必要なコミュニケーションについても指導することが重要です。この時期には、自宅でのリハビリが多くなるため、患者の状態をしっかり見極めながら社会復帰を手助けすることが求められます。
このように、言語聴覚士は話す、食べる、聞くことを指導するだけでなく、常に患者やその家族の心情に寄り添いながらリハビリを進めることが大切です。
言語聴覚士のチーム医療における役割
言語聴覚士は、医療現場においてチーム医療の一員として活躍することがあります。言語聴覚士が参加することが多いのは、以下の2つのチームです。
- 栄養サポートチーム(NST)
- 摂食・嚥下サポートチーム(SST)
NSTは、栄養状態が悪い患者や食欲が低下している患者に対し、適切な栄養素をどのように摂取してもらうかを他の医療従事者と連携して対応するチーム医療です。参加するのは、言語聴覚士、看護師、管理栄養士、医師などです。
このチームの中で、言語聴覚士は患者の嚥下機能を評価し、最適な食形態を提案します。
SSTでも、言語聴覚士の役割は同様です。SSTは、嚥下機能に問題がある患者を中心に、どのような食形態であれば効果的に摂食できるかをチームで判断します。主な対象者は、経口摂食が可能でありながら、うまく栄養素が取り込めない、または摂食が進まない患者です。
さまざまな専門知識を持つ医療従事者が協力し、自身の専門知識を活かして問題を解決していくのがチーム医療の特徴です。
言語聴覚士の小児リハでの役割
言語聴覚士の小児リハは、「ことば」「きこえ」「食べる」の3つの領域で障害を抱えた小児を対象にリハビリを行います。まだ自分の意思表示を上手くできない患者も多く、成人に対するリハビリ以上に、患者の状況や様子に気を配りながらリハビリを提供することが重要です。
話す訓練は、主に言語発達障害、吃音、構音障害などを対象とします。言語理解と表出の両面からアプローチを行い、年齢や症状に応じて、適切な訓練内容を個別に立案します。
聞く訓練は、聴覚障害全般を対象とします。聴力検査の実施や補聴器の使用方法の指導も行います。
食べる訓練は、脳性麻痺、ダウン症、口唇口蓋裂などの障害を持つ小児に対して、嚥下訓練を中心とした食事訓練を行います。
いずれの訓練でも重要なのが保護者支援と情報共有です。子どもとのコミュニケーションに悩む保護者へのアドバイスや、家庭でできる訓練の指導も行います。
言語聴覚士の療育での役割
療育は、障がいを持つ子どもが自立した生活を送るために支援することです。小児リハビリと内容は似ていますが、小児リハビリは医療、療育は障害福祉分野で使われることが多い言葉です。
療育を行う主な施設には以下のようなものがあります。
- 放課後等デイサービス
- 療育センター
- 教育機関
療育センターには、重症心身障害児者施設などが含まれます。
医療福祉以外では、教育機関が挙げられます。小中学校や特別支援学校などが含まれます。教育機関には、言語聴覚士の設置が進んでおらず、全国的に人材不足と言われています。
3.言語聴覚士の仕事のやりがいと大変さ
言語聴覚士の仕事は多岐にわたり、やりがいと大変さが共存しています。ここでは、言語聴覚士のやりがいと大変さについて紹介します。
言語聴覚士のやりがいと魅力
言語聴覚士の仕事のやりがいは、目の前にいる患者が回復していく様子や成長する姿を身近で感じられることです。
例えば、脳卒中の後遺症で話すことが難しくなった方が、訓練により言葉を取り戻し家族と喜びを分かち合う姿。
発達障害で言葉が出せない小さな子どもが、一生懸命練習して「ママ」と声を出す瞬間。
言語聴覚士は患者との距離が近く、患者が回復していることを実感しやすい仕事です。患者さんやそのご家族から直接「ありがとう」の言葉をもらえることは、何物にも代えがたいやりがいです。
また、力仕事が少ないため、女性でも長く続けられる点も言語聴覚士の魅力の一つです。
言語聴覚士の大変なこと・辛いこと
一方で患者との距離が近い分、大変な部分もあります。患者の中には気難しい方もいますので、気を遣うケースも少なくありません。認知のリハビリでは思うようにいかないシーンも多いですし、患者やその家族からリハビリの効果を疑問視されるようなことがあれば、気に病んでしまうケースもあるかと思います。
また、言語聴覚士は、他の医療職と比べて収入が高くないというのも事実です。詳細は後の項で解説します。
患者に寄り添いリハビリを行うという大変な業務でありながら、現状そこまで収入面が優遇されていないというのは辛い部分になるかもしれません。
4.言語聴覚士はどこで働いている?
言語聴覚士が実際どのような職場で働いているのかを確認しておきましょう。
言語聴覚士の仕事現場は、医療機関や介護施設、福祉施設などが中心です。日本言語聴覚士協会の調査によると、言語聴覚士の約90%がこの3つに関連している施設で働いているという結果が出ています。
言語聴覚士が働く意外な職場や、言語聴覚士の求人状況などについて解説していきましょう。
一般企業で働く言語聴覚士もいる
意外な職場としては一般企業というケースもあります。日本言語聴覚士協会の調査によると、0.4%程度ではありますが、一般企業に努めている言語聴覚士がいるようです。
具体的な業種を挙げると、1つは補聴器メーカーや人工内耳のメーカーです。特に営業職で活躍しているケースが多いようです。言語聴覚士は、話すことと同時に聞くことの専門家でもあります。こうした専門知識を活かし、顧客の症状や状況を理解した上で、自社の商品を勧めるという働き方があります。
また、一部食品メーカーの開発関係の部署で働く言語聴覚士の方もいらっしゃるようです。摂食や嚥下に関する専門知識が、新製品の開発に生かせるのでしょう。
言語聴覚士の資格を取得することで、身に付いた専門知識を活かせる職場というのは、想像以上に広がっているようです。
言語聴覚士の求人数は多い?
言語聴覚士の求人がどの程度なのかという点を解説していきたいと思います。
参考までに、ハローワークでの求人数をチェックしてみました。比較対象として理学療法士、作業療法士の求人数と合わせて紹介しましょう。(各数字は2024年10月29日調査時点のものです。)
資格 | 有資格者数 | ハローワークの求人数 |
---|---|---|
言語聴覚士 | 39,896人 | 6,285件 |
理学療法士 | 213,735人 | 13,341件 |
作業療法士 | 108,885人 | 12,251件 |
単純に求人数だけを比較すると、言語聴覚士の求人は少ないです。理学聴覚士、作業療法士の半分ほどです。
しかし、有資格者の人数に対しての割合を考えると、言語聴覚士の求人数は一番多いことが分かります。 理学療法士は約20万人に対して求人数は約1,3万件しかありませんが、言語聴覚士は約4万人に対して約6千件もあります。
5.言語聴覚士になるには?
言語聴覚士は国家資格であるため、国家試験に合格する必要があります。また、国家試験を受験するためには、満たすべき受験資格があります。
ここでは、言語聴覚士になるための方法について詳しく解説します。
言語聴覚士取得の3つのルート
言語聴覚士の国家試験を受験するための受験資格取得には、主に3つのルートがあります。
- 大卒後、専修学校等で2年間学ぶ
- 高卒後、専修学校等で3~4年間学ぶ
- その他のルート
大卒の方は、言語聴覚士専科を有する専修学校・専門学校、または大学・大学院の専攻科で2年間学び卒業することで受験資格を取得できます。
高卒の方は、言語聴覚士専科を有する専修学校や専門学校、大学などで3~4年間学び、卒業することで受験資格を得ます。通う養成施設によって必要な年数に差がありますが、取得する単位には差がないため、通学年数が短い養成施設ほど授業がタイトな設定になっていると考えられます。
その他には、外国で言語聴覚士に類する資格を取得している方や、言語聴覚士の履修科目を一定程度修めている方も含まれます。履修科目を一定程度修めている方は、指定校で1年間学び卒業することで受験資格が得られます。
言語聴覚士の資格取得のためには、最低でも高卒の学歴が必要です。学歴が中卒、もしくは高校中退という方は、まずは「高等学校卒業程度認定試験(高卒認定試験)」に合格し、高卒認定を受ける必要があります。
最短ルートは、高卒認定を取得し3年生の養成施設(短大等)に入学する方法です。
言語聴覚士の養成校について
言語聴覚士試験の受験資格を得るために必要な養成施設について簡単に説明します。
養成施設では、言語聴覚士になるために必要な知識を教えています。設置には文部科学大臣または都道府県知事の認可が必要です。認可を受けている養成施設は全国に設置されています。
- 大学(4年制)
- 大学(2年専攻科)
- 短期大学専攻科
- 養成施設(高卒対象)
- 養成施設(大卒対象)
2024年現在、これらの養成施設において夜間のみの学部を設置している施設はありません。言語聴覚士の受験資格を得るためのカリキュラムは、夜間だけでは既定の期間内で履修するのが難しいのが現状です。すべての養成施設は昼間部または昼間と夜間の複合でカリキュラムを組んでいます。
自身の住む地域に養成施設があるかどうかを確認したい方は、以下のサイトで検索できますので、参考にしてください。
通信教育では言語聴覚士試験の受験資格が取得できません。
言語聴覚士の受験資格を持っている方が、通信教育で勉強をして国家試験合格を目指すというのは可能です。ただし、そもそも通信教育では受験資格が得られませんので、言語聴覚士の試験対策講座を開講している通信講座はほぼありません。
言語聴覚士の国家試験・合格率について
受験資格を満たせば、後は国家試験に挑戦するのみです。言語聴覚士の試験は年に1度の実施です。例年2月に実施されるため、受験する方はここを目標に勉強計画を立てましょう。
言語聴覚士試験の概要を、第27回言語聴覚士国家試験(2025年2月実施)を参考に紹介します。
試験日 | 2025年2月15日(土曜日) |
---|---|
合格発表日 | 2025年3月26日(火曜日)14時 |
受験手数料 | 38,400円 |
試験地 | 北海道・東京都・愛知県・大阪府・広島県・福岡県 |
試験方式 | マークシート方式 |
試験科目 | 基礎医学、臨床医学、臨床歯科医学、音声・言語・聴覚医学、心理学、音声・言語学、社会福祉・教育、言語聴覚障害学総論、失語・高次脳機能障害学、言語発達障害学、発声発語・嚥下障害学、聴覚障害学 |
出題数 | 各出題分野から基礎科目100問、専門科目100問 |
合格基準 | 200点満点で120点以上(正答率60%) |
出題数(200問)と合格基準(正答率60%以上)は例年一定なので、第27回試験も同じと考えてよいでしょう。言語聴覚士の試験はとにかく出題数が多いです。正しい知識を身につけるはもちろんとして、解答スピードも意識して対策する必要があります。
続いて言語聴覚士試験の合格率を紹介していきましょう。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2019年度 | 2,486名 | 1,626名 | 66.0% |
2020年度 | 2,546名 | 1,766名 | 62.9% |
2021年度 | 2,593名 | 1,945名 | 75.0% |
2022年度 | 2,515名 | 1,696名 | 67.4% |
2023年度 | 2,431名 | 1,761名 | 72.4% |
直近5年の平均 | 12,571名 | 8,794名 | 70.0% |
例年およそ7割程度の合格率ですので、資格試験の中では比較的合格率の高い試験と言えます。とはいえ、理学療法士や作業療法士の試験合格率は80%台で推移していますので、リハビリ職としては難易度が高い試験といえるでしょう。
言語聴覚士になるための学費はどれくらい?
言語聴覚士になるための学費は、年間150万円程度です。4年制大学の場合、4年間の総額は600万円前後となります。
進学情報サイトのスタディサプリ進路によれば、言語聴覚士を目指せる私立大学の初年度納入金(入学金、授業料など)の分布は以下の通りでした。初年度は入学金の分高くなるので、平均すると年間150万円程度が目安となります。
- 121~140万円:6校
- 141~150万円:6校
- 150万円以上:25校
専門学校の場合については、実例を見ていきましょう。
札幌医学技術福祉歯科専門学校の言語聴覚士科(3年課程)の学費は、初年度164万円、2,3年次は144万円です。
東京医薬看護専門学校の言語聴覚士科(4年課程)の学費は、初年度176.7万円、卒業までの納入金額の目安は671.3万円とあります。
大学・専門学校のどちらの場合でも、学費は年間150万円程度と見積もっておくといいでしょう。
言語聴覚士を目指したいと思っても、学費の高さでためらう方もいるかもしれません。そんな時は奨学金制度や給付金を活用しましょう。
- 第一種奨学金
- 第二種奨学金
- 専門実践教育訓練給付金
現役の学生の方が申請できる奨学金には一種と二種があり、一種は無利子、二種は有利子となっています。一種を受けるためには、一定程度の成績を残すことが条件です。
社会人の方が申請できるのが「専門実践教育訓練給付金」です。申請には以下の条件が必要となります。
- 雇用保険に2年以上加入
- 離職後1年以内の進学
上記の条件を満たす方は、最大112万円の返済不要の給付金が受け取れます。
社会人からでも言語聴覚士を目指せる?
社会人からでも言語聴覚士を目指せます。ただし、それなりの覚悟は必要です。
養成施設の中には、平日は夜間、土日は昼間に授業を行っているところがあります。こういった養成施設であれば、働きながらでも受験資格を得ることは可能です。実際に30~40代で言語聴覚士の資格を取得し、転職している方もいらっしゃいます。
ただし、養成施設は2~4年という長期間の通学が必要です。その間週末や平日の夜にプライベートな予定を入れるのが難しくなります。家庭がある方は、ご家族の理解がないと通学は難しいかもしれません。
スカウトサービス登録はこちら6.言語聴覚士の給料事情とは?
これから言語聴覚士を目指す方は、どの程度の収入が望めるのか気になると思います。言語聴覚士の給料事情については、別記事で詳しく解説しているので、重要なポイントだけ紹介します。
言語聴覚士の平均年収は約432万円
厚生労働省「令和5年度賃金構造基本統計調査」によると、言語聴覚士の平均年収は約432万円です。内訳は以下の通りです。
月給 | 年間賞与 | 年収 | |
---|---|---|---|
言語聴覚士 | 30万900円 | 71万4,400円 | 432万5,200円 |
432万円という金額が高いのか低いのか、全産業平均のデータと比べてみましょう。
国税庁の「令和4年分民間給与実態統計調査」によると、給与所得者全体の平均年収は458万円でした。男女計と男女別の結果を表にします。
男女計 | 男性 | 女性 | |
---|---|---|---|
全産業平均 | 458万円 | 563万円 | 314万円 |
言語聴覚士 | 432万円 | 452万円 | 409万円 |
男女計では、言語聴覚士の年収は全産業平均よりやや低いと言えます。ただ男女別に見ると、女性の言語聴覚士の年収は全産業平均より約100万円高いことが分かります。
言語聴覚士の給料は?【年収・月収・時給】年齢別データや収入アップの方法も紹介
言語聴覚士の給料について、年齢別の年収推移や他職種との比較、収入を上げる方法、そして言語聴覚士の将来性について、公的データを用いながら紹介していきます。
詳細を見る7.言語聴覚士のキャリア・スキルアップについて
言語聴覚士のキャリアアップ・スキルアップについて解説していきましょう。
言語聴覚士は管理職になれる?
言語聴覚士でももちろん管理職に就くことは可能です。ただし、その数は多くはないというのが現実です。
多くの医療機関においては、リハビリ担当部門が1つに統一されています。その中で管理職を選ぶとなった場合、やはり人数の多い業種の方が選ばれる確率が高いです。言語聴覚士の人数は、理学療法士と作業療法士の人数よりも少ないです。そのためリハビリ部門の管理職になる確率は低いという訳です。
ただし、大きな病院となるとリハビリ部門も、理学療法科、作業療法科、言語聴覚科に分類されているケースがあります。こうした病院では十分に管理職が目指せるかと思います。
キャリアアップの定番、認定言語聴覚士とは?
言語聴覚士には、生涯学習を目的としキャリアアップを目指すために、「認定言語聴覚士」という制度があります。認定言語聴覚士になることで出来る業務が増えるという訳では無いですが、高い専門性やスキルの証明になります。
認定言語聴覚士になるためには、5年以上の臨床経験に加え、日本言語聴覚士協会が実施する生涯学習プログラムの受講が必要です。生涯学習プログラムは基礎プログラムと専門プログラムに分かれており、基礎プログラムのすべてと、専門プログラムから4科目の修了が認定言語聴覚士となる条件となっています。
★基礎プログラム
- 臨床のマネージメントと職業倫理
- 臨床業務のあり方進め方
- 職種連携論
- 言語聴覚療法の動向
- 協会の役割と機構
- 研究法
★専門プログラム
- 関連科目/言語・認知発達、言語・認知の加齢変化、音声言語聴覚医学、認知科学、心理学、言語学、音声学
- サービス提供システム
- 成人言語・認知/失語、高次脳機能障害
- 言語発達障害
- 発声発語障害/小児、成人/摂食嚥下障害
- 聴覚障害/小児、成人
- 臨床実習
- 研究法
- 症例研究
専門プログラムに関しては、自身の臨床経験の中から必須と感じたものを受講するのがおすすめです。
言語聴覚士のスキルアップにおすすめの民間資格
言語聴覚士の業務に関連する民間資格を取得し、スキルアップする方法があります。代表的な資格には以下が挙げられます。
- 栄養サポートチーム(NST)専門療法士
- 呼吸ケア指導士
- プロフェッショナル心理カウンセラー
- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士
上記のような資格を持つことで、特定の業務に関するさらに深い知識を身に着けることができるでしょう。
また、パーキンソン病の患者に対するリハビリ訓練法の1つに「LSVT LOUD」があります。この治療法は、理学療法士や作業療法士、そして言語聴覚士を資格を持った方が、試験をクリアして初めて行える訓練法です。こうした試験に挑戦することもキャリアアップに繋がるでしょう。
言語聴覚士のダブルライセンスはあり?
言語聴覚士がさらに業務の幅を広げるため、ダブルライセンスを目指す方法もあります。
- 言語聴覚士×管理栄養士
- 言語聴覚士×公認心理師
- 言語聴覚士×ケアマネジャー
- 言語聴覚士×介護福祉士
資格取得の過程で、資格に応じた専門知識を身に付けることができます。言語聴覚士の業務の中で活かされることが多いでしょう。
言語聴覚士の独立開業について
言語聴覚士は独立開業することが可能です。理学療法士・作業療法士と違い、言語聴覚士には、医師の指示なしで行える訓練があります。ずばり「言語訓練」と「構音訓練」の2つです。
言語聴覚士として独立開業する場合、実施できる事業としては以下が考えられます。
- ことばの教室
- こどもの発達相談、支援室
- 完全自費リハビリ
8.言語聴覚士に向いている人とは?
言語聴覚士に向いているのは、何より人間そのものに興味があり、コミュニケーションを取ることが好きな人です。
言語聴覚士は、患者やその家族と協力し、患者が社会復帰できるよう手助けするのが主な業務です。そのため、人間に対する興味や関心を持つことが大前提となります。
また、患者は一人ひとり異なる考えや思い、性格を持つため、それぞれの患者に合わせたリハビリの提案が必要です。個別ケースに対応する臨機応変さも重要なスキルと言えるでしょう。
こうした前提を踏まえた上で、言語聴覚士に向いている方の特徴や性格などを紹介していきます。
言語聴覚士に向いている人の特徴・性格
言語聴覚士に向いている人の特徴や性格は以下の通りです。
- 粘り強い
- 観察力がある
- 協調性がある
- 向上心がある
リハビリは、行ってすぐに結果が出るものではありません。訓練・指導を続ける粘る強さはなにより重要な要素と言えます。またリハビリを行う場合、常に患者の様子を観察し、患者に合わせたリハビリの提案が重要です。そのための観察力も欠かせない要素といえるでしょう。
言語聴覚士の業務は、医師や看護師、理学療法士、作業療法士と連携しながら進めるケースが少なくありません。チームで医療を行うので協調性が求められます。
最後に必要なのが向上心です。リハビリの手法に関しては日進月歩で進化しています。常に新しい情報を仕入れ、最適なリハビリ法を提案できるように学び続けることが重要と言えるでしょう。
言語聴覚士に求められる能力・スキル
言語聴覚士として求められる能力やスキルを紹介していきます。
- コミュニケーション能力
- 共感力
- 問題解決能力
コミュニケーション能力は必須です。患者はもちろんとしてご家族、医師、他の医療スタッフなど様々な関係者と連携して業務を進めるので、コミュニケーション能力は必要な能力と言えます。
患者の中には、普通の人には当たり前のことができない方も多くいます。そういった方々の状況を理解し、受け止め、一緒にリハビリに励んでいくためには、共感力が必要となります。
最後に問題解決能力です。言語聴覚障害は個人差が大きく、標準的な治療法が全ての患者に適用できるわけではありません。患者ごとに異なる症状を正確に分析し原因を特定したり、既存の治療法を応用して適切なアプローチを考案する能力が求められます。
9.言語聴覚士の需要・将来性について
ネットで言語聴覚士について調べていたら、「言語聴覚士はやめたほうがいい」という言葉を見つけて、目指すことを不安に感じてしまった方もいるかと思います。
最初に言ってしまえば、これはネット特有の技法です。「やめたほうがいい」「やめとけ」といった刺激的な言葉を使うことによって、閲覧数を増やそうという目的で使用しているケースが多いです。あまり深刻にとらえる必要はありません。
とはいえ、中には本気で「やめたほうがいい」と書いているサイトもありますので、そのあたりを踏まえた上で、言語聴覚士の需要や将来性について解説していきましょう。
なぜ「言語聴覚士はやめたほうがいい」と言われる?
言語聴覚士はやめたほうがいいと本気で書いているサイトは、どんな理由を挙げているのでしょうか。多くのサイトが挙げている理由をまとめてみました。
- 人間関係が辛い
- 配属希望が通らない
- 理学療法士、作業療法士と比べて需要が少ない
- 収入が少ない
こうした理由が目立ちますが、そもそも人間関係や配属希望の問題は、言語聴覚士に限った問題ではありません。ほかの医療従事者も抱える問題であり、言ってしまえば業種を問わず多くの社会人が抱えている問題です。この理由を挙げて、言語聴覚士だけやめたほうがいいと主張するのは理にかなっていません。説得力に欠けると思います。
理学療法士・作業療法士と比較して需要が少ないという主張の根拠が、「言語聴覚士は数が少ないから」というものを多数見かけます。これは明確に間違っています。理学療法士・作業療法士と比較して、数が少ないからこそ需要が多い、人材不足であるというのが事実であり、そもそもの論拠が間違っています。
収入に関しては上でも触れたとおり、全産業平均より年収が少ないのが現状です。やめたほうがいい理由があるとすれば、この収入面だけでしょう。ただ女性の言語聴覚士の平均年収は全産業平均より100万円ほど高いということは念押ししておきます。
言語聴覚士が少ない理由とは?
言語聴覚士が、理学療法士や作業療法士と比較して人数が少ないのは事実です。しかも圧倒的に少ないといえます。その最大の理由は、歴史が短いことです。理学療法士と作業療法士の国家資格制定は1965年ですが、言語聴覚士の制定は1997年です。言語聴覚士の歴史で触れましたが、言語聴覚士は制度制定に時間がかかってしまいました。歴史が短い分、資格者数が少なくなっています。
歴史が浅いために、養成施設の数が少ないのも人数が少ない原因の一つでしょう。学びたくても学べない方が相当数いるということが想定されます。
また、作業療法士や理学療法士の試験と比較すると、試験の難易度が高いという点も考慮する必要があるかもしれません。
言語聴覚士の需要は増えています!
将来性を考える場合に気になるのが需要です。結論、言語聴覚士の需要はありますし、増え続けています。
少子高齢化社会と言われ数十年、日本の医療は「入院中心」から「在宅中心」へと移行が進んでいます。在宅復帰と在宅生活の継続に欠かせないのがリハビリ職の存在です。
まず病院では回復期医療を担う、回復期リハビリテーション病床と地域包括ケア病床が増加しています。例えば回復期リハビリ病床は2020年3月時点では86,397床でしたが、2024年3月時点では95,055床に増えています。
在宅復帰に向けてリハビリを行う回復期病床が増えているので、必然的にリハビリ職の言語聴覚士の需要が増えている訳です。
そして在宅生活を支える訪問看護ステーションと訪問リハビリ事業所も同じく増加しています。訪問看護ステーションの増加が顕著で、2017年時点では9,422事業所でしたが、2023年には14,074事業所と約1.5倍に増えています。実際、訪問看護ステーションでの言語聴覚士求人は増加しています。
そして、これから増えていくと注目されるのが、教育機関での言語聴覚士の活躍です。
奈良県教育委員会が令和7年度より、奈良市内の小学校に言語聴覚士の資格を持った教員を配属することにした、と2024年3月のNHKニュースで報じられました。学校への言語聴覚士の常勤での配置は全国的にも珍しいですが、こうした動きは今後増えていくことが予想されます。
背景には、障害や病気などで通常の学習や生活が難しい子どもが支援を受けながら一般の学校に通うケースが増えていることが挙げられています。2022年12月、読売新聞に小学生の8.8%が発達障害を持っている可能性があるという記事が出て話題となりました。この数字は2012年の調査と比べて2.3ポイント増えており、今後も増加する可能性が指摘されていました。
回復期医療と在宅医療の推進、教育機関でのニーズ拡大を考えると、言語聴覚士の需要はさらに伸びていくことでしょう。
出典:奈良 NEWS WEB「再来年度から奈良市の小学校に言語聴覚士を常勤で配置へ」
出典:日本経済新聞「小中学生の8.8%に発達障害の可能性 文科省調査」
10.最後に|ここだけの話、言語聴覚士は転職しやすい
言語聴覚士は転職しやすいです!
求人サイトの中の人として、多くの言語聴覚士求人に携わり、様々な採用担当者と話をしてきた筆者の結論です。実際、コメディカルドットコムのデータベースを参照すると、言語聴覚士はほかの医療従事者と比べて採用率が高いです。
病院の採用担当者に聞いた話を紹介しましょう。同じリハビリ職の理学療法士と作業療法士は、学校からの新卒採用やハローワーク・病院HPの採用サイト経由で必要な人数を確保できることがあります。北海道などリハビリ学科のある学校が多いエリアで見られる傾向です。
しかし、言語聴覚士はこういった方法だけでは集めることが難しいです。なので言語聴覚士のみコメディカルドットコムや他の求人業者を利用して募集をかけるというケースが少なくありません。(過去には、関西のとある大学病院で言語聴覚士のみが集まらず、急ぎ求人をお願いされたということもありました。)
言語聴覚士が転職しやすいことは、具体的な数字のデータにも表われています。厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「jobtag」のデータによると、言語聴覚士の有効求人倍率は4.16倍(2024年10月29日確認時点)です。1人の言語聴覚士に対して4.16件の求人があるということなので、かなりの売り手市場です。
この記事が、言語聴覚士を目指すか悩む方の背中を押すことができれば幸いです。
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