看護師がうつ病になったら復職できる?休職・退職すべきかどうかを事例とともに説明
- 更新日
まさか自分がうつ病になるなんて。うつ病と診断された人はそう感じる人が多いのではないでしょうか。
うつ病が現代病と言われて久しいとはいえ、周囲には理解されにくい病です。志を持って看護師になったのに、うつ病で働けなくなってしまう人は多数います。
うつ病になった看護師は、また社会に復帰することはできるのでしょうか。休職や退職をした方がいいのか悩む看護師も大勢います。
この記事では、看護師がうつ病になる原因と看護師として復職することはできるのか、休職や退職するにはどうすればいいのかなどを解説いたします。
- スカウト経由で内定率2.3倍!
- 希望に合った求人”だけ”を厳選してお届け!
- 「就業応援制度」で最大50,000円進呈
1.うつ病の定義
うつ病というのは、気持ちがひどく落ち込み憂うつでやる気が出ないという精神的な症状のほか、眠れない・体がだるいなど身体的な症状があります。
精神疾患のガイドラインとしてアメリカの精神医学会が定めたDSM-IVが世界中で用いられており、うつ病は「大うつ病性障害」と呼ばれています。診断の基準は「抑うつ気分」と「興味・喜びの喪失」が基本です。いくつかの項目に該当することで診断されます。
日々生活をしていると、気分が落ち込むことは誰にでもあります。学校や職場でのトラブルやペットを失った悲しみなどの原因で、その問題を解決したり時間の経過などによって次第に心が癒されていくことで回復します。
しかしうつ病はそれらの原因がなくても起こることがあり、簡単に克服するのが難しい病気です。脳のエネルギーが欠乏した状態になると脳全体にトラブルが生じ、それが原因でうつ病が発症すると考えることができます。
1-1.自分が感じるサイン
うつ病は自分では気づきにくい病です。あるいは気づいていたとしても医療機関を受診しない人が多く適切な処置を受けていません。
うつ病は早期に治療することで、症状も軽く早く回復することができます。以下のような症状があればうつ病が疑われます。
精神的な症状の場合
- 悲しい、憂うつ
- 興味がわかない、楽しみを感じられない
- 気力、意欲がない
- 集中力がなく散漫としている
- 決断力や判断力がない
- 心配事が四六時中忘れられない
- 自分はダメな人間と思い込む
- 死にたい気持ちが強い
身体的な症状の場合
- 食欲が低下したり増加した
- 疲れやすい、体がだるい
- 寝付きが悪い
- 夜中に何度も目が覚める
- 夕方より朝のほうが調子が悪い
これらの症状が2週間以上続いた場合、うつ病の可能性が高いため早めに医療機関を受診することをおすすめします。
1-2.周囲が感じるサイン
自分では気づかなかったり気づいているのに言い出せなかったりしても、周囲の人がそのサインに気づくことができます。はじめは些細な変化のためわかりにくいかもしれませんが、以下の項目に該当すればうつ病を疑ってみてください。
- 遅刻、早退、欠勤などが多くなった
- 元気や活力がない
- 体調不良を訴えることが多くなった
- ミスが多い
- 日常の動作が緩慢
- コミュニケーションを避ける傾向にある
- 飲酒量が増えた
他にもいつもと違う行動をするようになったなど、普段とは違うようなことが続くようであれば医療機関を受診することをおすすめします。
スカウトサービス登録はこちら2.看護師がうつ病になる原因
看護師という職業は、命を預かる責任のある仕事です。絶対にミスの許されない強い緊張感の中で、日々精神がすり減らされていきます。またほぼ立ちっぱなしの状態で患者への対応など、重労働も課せられています。
精神的にも体力的にも消耗する中、高い集中力も求められます。他の職業と比べてもかなりストレスの感じやすい職業と言えるでしょう。
また看護師不足などの問題を抱えている職場環境も近年社会問題にもなっており、過重労働をやむなく課せられている看護師も多くいます。
以上のようにストレスの多い職業である看護師は、うつ病を発症しやすい職業といえるのです。
新人看護師の場合(1~2年目)
高い意識を持って看護師として働き出した新人看護師は、早く一人前と認めてもらおうとして頑張り過ぎてしまうところがあります。日々現場で覚えなくてはいけないことは山ほどあり、もちろん失敗は許されません。
また上司や先輩看護師の叱責や患者のクレーム対応など人間関係での精神的な疲弊も、うつ病になる大きな要因でもあります。
仕事のシフトも慣れない新人看護師にとっては大きなストレスです。生活環境の変化や体への負担も大きくなります。
生活の変化だけでも多大なストレスがかかるのに、右も左もわからないことだらけ。看護師になったときの志を見失って不安にかられてしまうこともしばしばです。
仕事量や責任が増えたことによる場合
看護師として経験を積めば、周囲から信頼されベテランとしてさらにレベルアップが求められるようになります。
自ずと仕事量は増え、責任のある仕事を任されるようにもなるのです。やり甲斐のある仕事につい無茶をして体調が悪くなったり精神的に疲弊してしまうこともあります。
上司と部下に挟まれてそれぞれの主張に振り回されるなど、人間関係の苦悩も放っておくと取り返しのつかないことになるのです。
対人関係によるものの場合
看護師は女性の多い職場です。女性は男性に比べるとコミュニケーション能力に長けていますが、女性特有の人間関係の難しさもあります。特に看護師は職業柄もあってひとりひとり自立した人が多いため、自己主張の強い人を相手にしなければいけない時は精神的なストレスとなるでしょう。
とはいえ同じ職場で働くならチーム力も求められます。新人看護師であろうとベテラン看護師であろうと、それぞれの立場で人間関係をうまく保つ努力が必要です。
人間関係がうまくいかない場合は仕事もスムーズにいかず、劣悪な職場環境になる可能性が高くなります。劣悪な職場環境では精神的な負担がかかり負の連鎖が生まれ、うつ病を発症するリスクが高くなるのです。
スカウトサービス登録はこちら3.うつ病になったら休職・退職すべき?
うつ病になると仕事を続けていくのが難しくなります。その流れで休職や退職を考えるのは当然の流れですが、自分ひとりの考えで決めるのは良くありません。
うつ病にかかっている時は、正しい判断ができる状態とは言えないからです。特に退職は自分の今後の人生に関わってくる重大な決断が必要です。現在が辛いからと言って安易に決めてしまうと後悔することになる可能性もあります。
まず以下のことを試してみてはどうでしょうか。退職するのはそれからでも遅くはありません。
退職前に試してみること
うつ病になって、気力も自信もなくなり今後の希望も見いだせなくなって退職するべきだと判断しても、それは今だけの気の迷いかもしれません。早まった決断をせずにまずはいろいろ試してみましょう。
まずは今の職場環境を変えることを上司などに相談してみてはいかがでしょうか。
例えば看護師の働き方として、夜勤勤務やハードワークなどシフトによって日々の生活に乱れが生じている場合に体調を崩してしまうことがあります。異動や配置転換などを相談して、日勤勤務のみに変更してもらうのもひとつです。
また異動によって職場を変えることができるなら、提案してみるのもいいかもしれません。環境が変わることが気持ちを切り替えるきっかけとなり、精神的な負担の軽減に繋がることもあります。
うつ病が出始めているときは、まずは心も体も休ませることが大事です。
そのためには忙しい職場で休みをとりにくい状態だとしても、休暇をとる決断をしてください。退職をするのは、休暇をとってしっかり休んでから考えても遅くはないはずです。
責任感の強い看護師は無理をして仕事を続けようとする人が多いですが、働けなくなってしまったらもっと周囲に迷惑がかかってしまうことになります。自分がうつ病であることを自覚をして、堂々と休みをもらうようにしましょう。
心も体もゆっくり休めて、復職や退職のことを考えればいいのです。
自分がうつ病かもしれないと気づいたら、周囲の人に相談することが重要です。誰かに不安をうち明けることで、ため込んでいたもやもやがすっきりするかも知れません。
家族や友人などに悩みを聞いてもらうことも大事ですが、同じ職場の上司などにも相談してみましょう。配置転換や異動など、具体的な提案やアドバイスをしてもらうこともできます。
誰にも話さないでいることで孤独感が増し、益々悪化してしまうこともあります。ちゃんと理解してもらうように、ゆっくりと話を聞いてもらうようにしましょう。
一人で悩んでため込んで決断するのはとても危険です。できるなら辛くなる前から信頼できる人と会話をするようにしておくことが大事です。
うつ病の原因は、いろんなものが重なり合った結果であることが多いためわからない場合も多々あります。しかし自分の心の中としっかり対峙すれば、見えてくるものもあります。
原因と考えられるものをひとつひとつメモに書き出してみると、頭の中が整理できます。まずは職場なのか人間関係なのか業務なのか、辛い原因がどこにあるのか探してみます。その原因が明白になれば対応することは簡単です。
どうしてもわからない場合などは、周囲の人に相談してみましょう。なにかヒントが見つかるかもしれません。
しかし結局、うつ病の原因は自分にしかわからないし治すのも自分にしかできないのです。しっかりと自分の深層心理と対話してみましょう。
退職するときは
休職をしたり異動や配置換えなどの対応をしても改善されない場合は、退職を選択することも間違いではありません。無理をしてこのまま看護師を続けることで病気が悪化してしまう可能性が高いなら、退職して治療に専念することをおすすめします。
うつ病は無理をすることが一番やってはいけないことです。ただ、その決断は心身ともに落ち着いているときにすべきです。感傷的になっている時など判断力が低下している状態では危険です。自信が無い時は、誰かに必ず相談するようにしてください。
退職は生活がかかっていることですし、人生の大きな決断でもあります。そのことを忘れずにしっかりと考えるようにしましょう。
休職や退職の決断をしたら、まずは精神科を受診して診断書を発行してもらいます。
診断書があれば、現在自分がうつ病であることを証明することができます。心の病気の場合、上司などに状況の説明をするのが難しいですが医者の診断書があれば安心です。
診断書があることで休職や退職の手続きもスムーズになります。
また診断書は傷病手当を申請する際に必要となる書類です。退職したあとの失業保険を受給する際に「特定受給資格者」として扱ってもらうためにも必要な書類となります。特定受給資格者になれば給付制限の期限を待たず、すぐに失業保険を受給することができます。
うつ病であることは、周囲には隠さずに伝えるようにしましょう。
あまり公表したくないかもしれませんが、周囲の協力を求めるためにも伝えておくことはとても大切です。同じ職場の人も、なんだかわからないまま仲間が退職してしまう不安よりも、ちゃんと原因がわかっている方が安心できます。
周囲の理解があることは、自分も安心です。またいつか復職する場合にも隠して退職するような罪悪感からは解放され、堂々と看護師に戻ることができます。
誠実であることは、今後の生き方にも繋がるのです。
うつ病から復職した看護師の事例
うつ病になってしまった看護師がどのようにして復職したのか、具体的な例をもとにみていきます。
30代の女性看護師は、残業の多い職場で多忙な毎日を送っていました。休日は自己啓発の勉強をするなど仕事に対して真面目で熱心です。精神科遺伝負因はなく、今までに精神科にかかったことはありません。五年前に結婚し夫と2人暮らしです。
こちらの女性看護師は、うつ病を発症しながらも働きながら治療を続けていましたが、なかなか回復しなかったため休業することを決断します。
参照:厚生労働省「こころの耳」
入院患者が多くて非常に忙しい職場に新人看護師が就職してきて、その指導員も努めることになりました。指導に加えて看護発表の準備などで多忙は極め、その頃からうつ病の症状がではじめます。
同僚が話していることが気になったり夜中に目が覚める、疲れやすいなどの症状が気になります。毎日のように相談にくることを心配した看護師長の紹介で、精神科を受診することになりました。
診察により気分の落ち込みのほかに不安や焦燥感も認められたため、仕事を続けながら薬物療法が開始されます。
また職場の上司にも相談しました。症状や経過などを説明し現在の業務量を減らしてもらうよう依頼。しかしもともと真面目で熱心な性格もあり、業務をおろそかにできず投薬もきちんと摂取できないなどの弊害が続き、症状は改善されませんでした。
結局、休業することを選択。ようやく少しずつ改善はしたものの、2人暮らしの夫が仕事へ出かけて日中ひとりになると、途端に不安や焦燥感にかられ症状が強くなってきます。
その後夫と母親も病院へ行って医師と面談をします。医師からは「必ず症状はとれるので心配しないこと」との説明がありました。そして家族も協力することを依頼されます。
以後も薬が処方され家族の支援を受けることで、次第に症状は落ち着いてきました。ずっと外出することのできない状態でしたが、行動範囲も広がり生活に支障をきたさない程度に回復しました。
現在は看護師長とも相談をし、生活リズムを崩さず頑張り過ぎない、薬をきちんと摂取することなどを約束し復職にむけて準備しているところです。
回復するまでに1年近くの時間を要しました。しかししっかり休んで治療に専念したことで復職に繋がることがわかります。
うつ病で退職した看護師も復職可能!
看護師がうつ病で退職してしまっても、復職は可能です。
しっかりと治療に専念して病気を克服することができればいつでも復職することはできます。うつ病によってやる気や気力を失われてしまっているだけで、回復すればまた「働きたい」という気持ちがわいてきます。
ただそう思っても復職に対しては不安も大きいでしょう。心身ともに無理をしないことを念頭におきつつ、精神科の医師と相談しながら検討することをおすすめします。
復職を決めたら、働く場所をどこにするかをよく検討するようにします。
元の職場に復職する場合のメリットは、新しく仕事を覚える必要がありません。人間関係などもわかっているのであらゆる面で安心です。
同じ職場でも部署などの配置換えだと、人間関係や仕事の流れなどは把握しながら、新しいことを覚える真新しさがあります。少し気分が変わることでリセットできます。
まったくはじめての職場で看護師として復職する場合は、なにもかも新しいことばかりになってしまいます。覚えることや人間関係の構築など大変な面もありますが、スタートラインに立ったような心地良さを味わうことができます。
また自分がどんな職場で働きたいかをしっかり見極めてライフスタイルに合った職場を選ぶことができるのは大きなメリットです。
看護師の紹介派遣を利用すれば、仕事の内容を絞って探してみるということも可能です。この際、自分の望む仕事内容に就いてみることも検討してみてはどうでしょうか。
自分の今あるスキルを活かしてみるのもいいですし、今後のことも考えて新しいスキルを習得することを選択してもいいでしょう。
さまざまな現場経験を積んでみたいなど、これからやってみたいことを思う存分やってみてもいいかもしれません。
派遣会社は希望に合った仕事内容の派遣先を見つけてくれますので、希望をしっかり伝えて心地よい職場環境と仕事内容を探してみてください。
スカウトサービス登録はこちら4.周囲にうつ病と思わしき人がいる時の対応
もし自分の周囲でうつ病と思わしき人がいたら、どのように対応するのが正解なのでしょうか。
うつ病というのは先述のとおり自分でも気づきにくく、またとても繊細な病気です。精神状態が非常にナイーブな状態であるにも関わらず、本人が自覚していない場合もあります。
周囲だからこそ客観的な立場で気づけることもありますが、サポートするのは慎重でなければいけません。本人に寄り添っていることやサポートをする、また理解しているという姿勢を見せることがポイントです。
そして安心できる環境を作ることを意識します。あとは心が開くまで焦らずに待ち、うつ病の原因についてヒアリングします。
相談内容に従って、専門の相談機関を案内したり治療のために専門家へ繋げたりするようにします。その際、自分にできることだけにとどめておき、決して自己の判断で指摘や指導などしないように注意します。
スカウトサービス登録はこちら5.傷病手当と失業給付は最大約2年6ヶ月!
うつ病と診断されたら、傷病手当と失業給付を合わせて2年6ヶ月受けることができる可能性があります。
そのためには医師の診断書が必要となりますので、うつ病の可能性がある場合には必ず医療機関を受診するようにしましょう。
傷病手当は最大で1年6ヶ月受け取ることができます。また失業給付は、医師の診断書と就職困難者となれば、受給日数は最大で360日となります。
よって合計で約2年6ヶ月受給することができるのです。休業している間は、給付金を受けながら休養することが可能となります。
休業したり退職する決断を迷う理由に、経済的困難に不安があることというのがあります。しかし社会保険制度をうまく活用することで、すぐに困窮することはありません。
無理をして仕事を続けることでうつ病を悪化させてしまっては回復するのも時間がかかってしまいます。経済的な不安がないのであれば、できるだけ早めに判断をし治療に専念することができます。
スカウトサービス登録はこちら6.まとめ
多様化が叫ばれ多種多様な考え方や自由な生き方が認められるようになってきた現代社会ですが、簡単には変えられないものもたくさんあります。
絶対に失敗は許されず常に緊迫した状況の中で働かなければいけない看護師という職業もそのひとつです。看護師になる人の多くは、真面目で責任感が強く我慢強いのが特徴的です。そのため、知らず知らずの内にうつ病を発症し治療が遅れたことで悪化してしまうケースもたくさんあります。
うつ病は早期発見し早期の治療を行えば、治療することができます。無理をせず誰かに相談し、とにかくしっかり休むことが大切です。
うつ病を早期発見するためには、まずそのサインに自分で気づくこと、また周囲の人も気づいてあげられる体制を整えておくことが肝心です。
また治療のため休業や退職することを経済面で躊躇する人もいますが、社会保険制度をうまく活用することで解消される問題もあります。
うつ病になるのは誰のせいでもありません。脳が疲労して起こる現代病なのです。自分が悪いと感じることはありませんし周囲の誰かの責任でもありません。それらをしっかりと理解した上で今後の治療法や休業や退職をするのか、看護師としてどう生きていくかを考えていきましょう。
事業所からスカウトがくる!
- スカウト経由で内定率2.3倍!
- 希望に合った求人”だけ”を厳選してお届け!
- 「就業応援制度」で最大50,000円進呈