看護師の人員配置基準とは?看護基準・看護体制の種類や特徴、看護方式との違いを解説
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「看護基準:急性期一般7対1」
「一般病棟の看護体制は10:1です」
病院のHPや求人サイトで目にするこれらの言葉が、何を表しているのか疑問に思ったことはありませんか?
これらは看護師の人員配置基準に関する専門用語です。
今回の記事では、看護師の人員配置基準について詳しく解説します。
看護基準、看護体制は就職先を決めるうえでの判断材料になり得るため、病院選びの前に種類や特徴を理解しておくとよいでしょう。
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1.看護師の人員配置基準とは
看護師の人員配置基準とは、簡単に言うと病院等に配置すべき看護師の人数のことです。
看護師の人員配置基準は、「医療法に基づく人員配置標準」または「診療報酬上の看護配置基準」を指す言葉として使われます。混同されることが多いこの2つの違いを整理しておきましょう。
医療法に基づく人員配置標準
適正な医療を実施するためには一定水準以上の人員を確保する必要があることから、医療法では、病院・診療所に配置すべき人員の「標準」が示されています。
例えば一般病院の一般病床では、看護師の人員配置標準は「3:1」です。これは患者さん3人に対して看護師を1人配置しましょう、という意味です。
人員配置標準を満たさない場合であっても、患者さんの傷病の程度や医療スタッフの連携等により、一定水準以上の医療を提供することが可能な場合もあります。なので最低基準ではなく「標準」という言葉が使われています。
もし人員配置標準を下回った場合は、すぐに営業停止とはならず、都道府県により改善指導が行われます。標準人数の2分の1以下の状態が2年を越えて継続するなど改善が見られない際には、都道府県知事が業務停止命令を行うことが可能です。
診療報酬上の看護配置基準
診療報酬上の入院料を算定する為の施設基準に、看護師の人員配置基準が定められています。一般的に看護師の人員配置基準と言ったらこちらを指すことが多いです。「看護基準」や「看護体制」と呼ばれます。(以降この記事では、看護基準と呼びます)
看護基準は病院のホームページや求人に「〇対1(〇:1)」と表記されることが多いです。〇の部分が入院患者さんの数で、1は看護師の数です。
例えば急性期一般入院料1であれば看護基準は「7対1」です。これは患者さん7名に対して看護師を1名配置しないとだめです、という意味です。
上で述べた人員配置標準と違い「基準」なので、下回った場合は猶予期間後に入院料の算定が取消となります。多くの病院が看護師を常に募集しているのは、いつ退職者が出ても看護基準を満たせるようにしておく為という訳です。
看護師の人員配置基準を指す用語という点では同じですが、看護体制は他の意味を持つことがあります。
例えば、2交替制や3交替制といった勤務体制について「看護体制は2交替制です」と記載している病院があります。他には、看護師の人員配置基準と勤務体制、看護方式や看護記録をまとめて看護体制と総称するケースが見られます。(看護部の紹介ページに多い)
厳密な定義が無い言葉なので、病院や求人サイトによって解釈が異なることがあります。
一方で看護基準は、看護師の人員配置基準以外の意味で使われることが基本的にありません。そのため、この記事では看護基準という呼び方を採用しています。
2.看護師の配置基準の種類と特徴
ここでは、代表的な看護基準の種類と特徴を見ていきましょう。
2対1
特定集中治療室(ICU)の看護基準が2対1です。
入院患者さん2名に対して看護師1名と最も手厚い看護配置です。救急医療を担う大学病院や急性期総合病院で採用されています。
3対1、4対1
脳卒中ケアユニット(SCU)の看護基準が3対1で、ハイケアユニット(HCU)の看護基準が4対1です。
SCUは脳卒中専門の集中治療室で、大学病院や急性期総合病院のほか脳神経外科専門病院で採用されています。
HCUは高度治療室と言われ、ICUと一般病棟の中間に位置します。救急医療に携わる中小規模の急性期病院やケアミックス病院でも採用されています。
7対1
急性期一般入院料1の看護基準が7対1です。7対1入院料とも言われ、急性期病院の一般病棟で多く採用されています。
急性期看護が学びたい人は、この7対1を目印にすると良いでしょう。入退院が目まぐるしく忙しい傾向にありますが、多くの症例を学べ、優先順位を考えて仕事をするスキルが身につきます。
10対1
10対1は、急性期・慢性期・精神科の3つを紹介します。
まず急性期一般入院料2~6の看護基準が10対1です。看護師不足などの理由で7対1入院料が取れない場合に、10対1を採用するケースが多いです。中小から大規模まで多くの病院で見られます。7対1入院料と同じく急性期看護を学びたい人におすすめです。
次に障害者施設等入院基本料の看護基準に10対1があります。障害者施設等一般病棟は、重度障害者や難病患者を対象とする慢性期中心の病棟です。経管栄養や人工呼吸器が必要な方が入院されています。
最後は精神科救急急性期医療入院料の看護基準が10対1です。精神科スーパー救急とも呼ばれ、精神科病棟の中で設備面・人員面共に最も求められる基準が高いです。全国にある精神科病院の中で採用しているのはごく一部です。
13対1
13対1は、亜急性期・回復期・精神科の3つです。
まず地域包括ケア病棟入院料の看護基準が13対1です。亜急性期から回復期、レスパイト入院など幅広い機能を持つのが地域包括ケアの特徴です。
他職種連携による在宅復帰支援やリハビリ看護、入院から退院まで一貫したケアを学べます。中小規模の病院に多く見られます。
次に回復期リハビリテーション病棟入院料1,2の看護基準が13対1です。急性期治療を終えた主に脳血管疾患と運動器疾患の患者を対象に、在宅復帰や社会復帰を目指して集中的なリハビリを行います。
入院時はADLが低く介助量も多かった患者が、リハビリでみるみるうちに回復して自立して退院していく姿を見られるのが醍醐味です。近年、回復期リハビリテーション病棟は増え続けています。
最後は精神科急性期治療病棟入院料の看護基準が13対1です。急性期の精神症状が顕著で、集中的な治療が必要な患者を対象として、原則として3ヶ月以内の短期入院を目標とします。
15対1
15対1と言えば、精神病棟入院基本料の15対1入院基本料です。精神一般15対1とも呼ばれます。
精神科病院で最もメジャーな看護基準で、急性期から慢性期まで様々な精神疾患に対応しています。
数は多くないですが、地域一般入院料3の看護基準も15対1です。一般病床なので急性期が中心と思いきや、中身はかなり慢性期に近いです。地域に根差した小規模な病院で見られます。
20対1
まず療養病棟入院基本料の看護基準が20対1です。療養型病院やケアミックス病院で見られます。
2024年度診療報酬改定で、療養病棟入院基本料はADL区分と医療区分の組み合わせで計30区分に分けられましたが、看護基準は20対1で共通です。
療養病棟と一口で言っても中身は様々です。在宅復帰に向け積極的にリハビリに取り組むところもあれば、終末期や看取り中心の病院もあります。経管栄養やレスピの割合も病院によって異なります。
もう一つは認知症治療病棟入院料の看護基準が20対1です。認知症と診断され精神症状および行動障害が認められる方、また日常生活に支障が見られ、自宅や施設での介護が困難な方を対象としています。
認知症専門病院や精神科病院の病棟の一部で採用されることが多いです。認知症を専門的に学びたい方にオススメです。
3.看護基準・看護体制と看護方式は何が違う?
看護基準・看護体制は看護師の人員配置基準を指す言葉で、「病棟の入院患者数に対して看護師が何人配置されているか」を表します。
看護方式は、看護師がどのような組織で行動するかを指す言葉で、「病棟の入院患者に対して看護師がどのように看護を提供しているか」を表します。
チームナーシングや機能別看護と言われるものが看護方式です。せっかくなので種類と特徴を紹介しておきます。
看護方式の種類と特徴
代表的な看護方式を表にまとめました。
チームによる看護 | 専任での看護 |
---|---|
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効率的なケアを実現 | 個別性の高いケアを実現 |
チームナーシングは、病棟を複数のチームに分け、チームごとに患者の看護を行う看護方式です。各チームにリーダーと経験や能力の異なるメンバーを配置し、協力して看護にあたります。
個々の看護師の能力差があっても一定水準の看護を提供できる利点があります。
固定チームナーシングは、病棟の看護師を複数の固定チームに分け、各チームが特定の患者群を継続的に担当する看護方式です。チームは月や年単位で固定され、リーダー、サブリーダー、メンバーなどの役割分担を行います。
この方式では、入院から退院まで一貫したケアが可能となり、患者との信頼関係構築や継続的な観察が容易になります。また、チーム内の看護師同士も信頼関係を築きやすく、より良いチームワークを発揮できます。
機能別看護は、看護業務を機能ごとに分類し、それぞれの業務を専門的なスキルを持つ看護師が担当する方式です。例えば、点滴・投薬、採血、バイタルチェックなどの業務ごとに担当を決め、各看護師がその特定の業務を複数の患者に対して行います。
この方式の利点は、業務の効率化と専門性の向上です。一方で、患者との継続的な関係構築が難しく、全体的な患者の状態把握が困難になる可能性があります。
プライマリーナーシングは、1人の看護師が1人の患者を入院から退院まで一貫して担当する看護方式です。担当看護師は看護計画の立案、実施、評価を責任を持って行います
の方式の特徴は、患者との信頼関係構築や細かな変化の察知が容易になること、看護師の主体性や専門性が発揮できることです。
モジュールナーシングは、日本独自の看護方式で、チームナーシングとプライマリーナーシングを組み合わせたものです。
病棟を複数のチームに分け、さらに各チーム内で少人数のモジュール(単位)を作ります。このモジュールが担当患者の入院から退院まで一貫した看護を提供します。
この方式のメリットには、継続的な看護の実現、看護計画の立案・実施・評価のしやすさ、患者の個別性に応じたケアの提供などがあります。
パートナーシップナーシング(PNS)は、2人の看護師がペアを組んで患者のケアを行う看護方式です。このペアは、互いの特性を活かし、対等な立場で協力し合いながら看護を提供します。
通常、経験豊富な看護師と新人看護師がペアになることが多く、1年間を通じて共に活動します。日々の看護ケアだけでなく、委員会活動や病棟内の業務まで協働で行い、成果と責任を共有します。
この方式により、安全性の向上、新人教育の促進、看護の質の向上が期待できます。また、看護師個人の負担軽減にもつながります。
4.まとめ
看護師の人員配置基準は、「医療法の人員配置標準」と「診療報酬上の看護配置基準」を指す言葉で後者の意味で使われるのが一般的です。
看護配置基準は、看護基準や看護体制とも呼ばれ、〇対1または〇:1で表されます。患者1人に対して看護師が〇人配置されるという意味でした。
看護基準には様々な種類があり、ICUの2対1から療養の20対1まで代表的なものを紹介しました。
看護基準と看護方式は別物で、看護方式は看護師がどのような組織で病棟の患者に看護を提供するするか表すものでした。
今回の記事で用語の理解が進み、病院選びのヒントになったら幸いです。
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