看護職賠償責任保険とは|新人看護師こそ保険に加入すべき理由、種類と選び方を解説
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「看護職賠償責任保険って加入すべき?」
「看護職賠償責任保険の種類が多すぎて選べない」
特にこれから看護師として働き始める方は、大きな期待と不安を持っていることかと思います。看護師の仕事は、病気やケガなどを理由に治療をしている方と直接向き合う仕事です。仕事をしていく中では、さまざまなケースに直面することがあり、そのケースによっては、訴訟など大きな問題に直面する可能性も否定できません。
そんな看護師の方を始め、看護職で働く方に特化した保険が、「看護職損害賠償保険」です。
この記事では、看護職損害賠償保険とはどのような保険かという点から、加入すべきかどうか、加入する場合はどの保険を選ぶべきかなどを細かく解説していきます。
これから看護師として働く方、看護師として働き始めて保険について考えている方などは、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
1.看護職賠償責任保険とは?
看護職賠償責任保険とは、看護職の方が個人的に訴えられたときなどに対応できる、看護職専用の保険商品を指します。もっともメジャーな商品は、「公益社団法人 日本看護協会」が提供する、看護職賠償責任保険です。この保険は、日本看護協会に加入すれば申し込めるということもあり、多くの看護師が加入している看護職賠償責任保険と言われています。
医療現場で働く以上、常に医療事故等、訴訟の対象となるリスクを負っています。看護師といっても、病院等医療機関に雇用されている存在であり、医療現場における訴訟問題の対象は、病院等の雇用者側と考えられがちですが、医療現場の場合そうならないケースも少なくありません。
医療現場における訴訟問題において、「債務不履行責任」に関しては、病院等医療機関が負う責任となります。患者との契約に関して、その内容に反した行為などが行われれば、訴えられるのは病院等ということです。
一方、患者に対する医療行為や看護行為など、直接関与する「行為責任」に関しては、医師や看護師が個人的に負うことになります。つまり看護師という職業は、場合によっては個人的に訴えられる可能性がある職種ということができます。
近年では特定看護師の導入や、医療現場の職場状況の改善のためにタスクシフトシェアなどを導入する流れが広まっており、看護師の責任範囲の拡大が顕著です。こうした傾向から、看護師の業務の重要性が高まり、同時に訴訟の対象となるリスクも高まっているといえる状況です。
こうしたリスクに備えるのが看護職賠償責任保険といえます。
看護職賠償責任保険の補償内容
看護職賠償責任保険は、日本看護協会だけではなく、多くの団体や企業が保険商品として提供しています。もちろん掛け金や補償内容にはそれぞれ違いがあるため、加入する際は、どの保険に加入するかを比較検討して加入するのが重要です。
補償内容に関しては、どの保険商品にも共通するものと、保険商品ごとに独自性があるものに分けて考えることができます。まずは、どの保険商品にも共通する補償内容を簡単に紹介しておきます。
- 対人補償
- 対物賠償
- 人格権侵害
- 初期対応費用
対人補償や対物補償は、患者やその持ち物に対する損害を補償するものです。医療事故により、患者が身体的な被害を被った場合などに、患者から看護師等に損害賠償が請求されますが、その損害賠償金を補償してくれるのが対人補償です。看護職損害賠償保険の基本となる部分でもあり、保険商品の中には「基本契約」として補償内容を提示しているケースも少なくありません。
人格権侵害とは、看護業務の中で、患者の人格を傷つけるような言動があったとして訴えられた場合に補償される項目です。初期対応費用には、被害を受けた患者に対する見舞金などが含まれます。
上記のような項目は、ほとんどすべての看護職損害賠償保険で補償されますが、保険商品によって補償額や、支給条件に差がありますので、掛け金とともに内容を確認することが重要です。
保険商品独自の補償内容は、保険商品によってさまざまです。看護師自身が職場でハラスメントを受けた場合、弁護士に相談する費用が補償されたり、看護師自身が感染症等に感染した場合に支給されたりなど、それぞれ独自の特徴がありますので、看護職損害賠償保険を選ぶ場合は、こうした独自の補償内容もしっかり比較検討して選ぶようにしましょう。
看護職賠償責任保険の加入率
では、現役看護師の方は、どの程度看護職賠償責任保険に加入しているのでしょうか?
看護職賠償責任保険の加入者割合を示した公的なデータはありません。「ナース専科」が行ったアンケートによると、看護職賠償責任保険への加入率は50%となっています。
この数値が絶対的に正しいということはないかと思いますが、資料としては十分参考になるでしょう。おおよそ2名に1名は何かしらの看護職賠償責任保険に加入しているといえます。
また、近年の看護職に関する職場環境の変化や、より広範な業務を請け負うようになった状況を考えると、今後はより看護職賠償責任保険への加入が重要になるかもしれません。
スカウトサービス登録はこちら2.新人看護師のうちから保険に加入すべき理由とは?
これから医療の現場に出る看護師の方には、看護職賠償責任保険に加入することが推奨されています。その理由を、実際のデータから解説していきましょう。
まずは、なんといっても看護師という業種は、医療事故の当事者になるケースが多いというい点が挙げられます。「公益財団法人 日本医療機能評価機構」が公表した、「医療事故情報収集等事業 2023年年報」から、医療事故に関するデータをいくつか紹介しましょう。まずは、医療事故に関与した職種に関するデータです。
職種 |
報告数 |
割合 |
---|---|---|
医師 |
3,944件 |
約48.9% |
看護師 |
3,549件 |
約44.0% |
その他の医療従事者 |
577件 |
約7.1% |
参照:日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業 2023年年報
医療事故に関与した職種を見ると、約半数は医師であり、その医師と遜色ない数字になっているのが看護師となります。看護師は、もっとも患者と接する機会が多く、また医師の医療行為のサポートも行うため、どうしても医療事故が発生すると当事者になってしまう傾向が顕著です。
看護師と同様に、医療事故の当事者となるケースが多い医師に関しては、「医師賠償責任保険」という保険商品があります。この保険商品の加入率に関しても、公的なデータはありませんが、医師に関するデータや情報を多く取り扱う「HOKUTO」というサイトで行った、研修医に対するアンケートでは医師全体の約80%、研修医の約65%がこの保険商品に加入しているようです。
医療事故に関与してしまう可能性がほぼ同等の医師と看護師を比較すると、万が一に備えて、医師賠償責任保険に加入している医師の割合は高く、看護職場賠償責任保険の加入率が低いことが分かります。
また、医療現場において、医療事故の要因となるケースが多いのが「ヒヤリハット事案」です。医療事故に発展しなかったとしても、その事故の発生に繋がるような状況になってしまったという事象です。医療現場において、ヒヤリハット事案に関与した方の職種別のデータも確認してみましょう。
職種 |
報告数 |
割合 |
---|---|---|
医師 |
2,145件 |
約6.4% |
看護師 |
24,237件 |
約72.8% |
その他の医療従事者 |
6,902件 |
約20.7% |
参照:日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業 2023年年報
医療現場におけるヒヤリハット事案の7割以上は、看護師が関与していることが分かります。上記の通り、もっとも患者と接する機会が多く、医療行為のサポートを行う看護師は、ヒヤリハットの事例も多く、意図していなくとも医療事故に繋がるような業務が多い職種ということができます。
ヒヤリハット事例に多く関与し、医療事故にも関与する可能性が高いということを考えると、看護師として働く以上、看護職損害賠償保険に加入しておくのが望ましいといえるでしょう。
看護職損害賠償保険は、商品によっても差はありますが、概ね年間3,000円程度で加入できる保険です。加入しやすさと、医療事故に直面するリスクを考えると、加入しておいて損はない保険といえるでしょう。
スカウトサービス登録はこちら3.看護職賠償責任保険に加入するメリット
看護職賠償責任保険は、看護師として働く以上、加入して損はない保険と言えます。では具体的に加入した場合のメリットについて考えてみましょう。
まずひとつは経済的なリスクの軽減という事が考えられます。もちろん保険に加入し、掛け金を支払うわけですから、その点ではデメリットがあるといえます。ただし、上記の通り、多くの看護職損害賠償保険は、年間3,000円程度の掛け金ですので、このデメリットはさほど大きなものではありません。
このデメリットと比較すると、万が一損害賠償請求をされた場合に支払う賠償金のリスクを回避できるというのは大きなメリットといえます。
例えば、救急搬送された患者が搬送後に死亡したというケースを考えてみましょう。医療行為自体に大きなミスは無かったとしても、初期対応が適切ではなかったと裁判で認められてしまった場合などは、看護師個人にも損害賠償請求が認められます。ある判例では、損害賠償金として約350万円の支払いが命じられたケースがあり、この金額に関しては、看護師が個人として対応しなければいけません。
もちろん、損害賠償金だけではなく、裁判が行われますので、その訴訟費用(弁護士)費用も必要であり、上記のケースでは、総額600万円以上の支払いが必要だったようです。
看護職損害賠償保険に加入していれば、この600万円以上の費用の多くの部分を保険でカバーすることができます。年間3,000円ほどの掛け金で、こうしたリスクを回避できるというのは、経済的に大きなメリットといえるでしょう。
もうひとつ考えられるのが精神的な負担の軽減というメリットです。そもそも看護師の業務は、患者の様態に直結する仕事であり、場合によっては死に直面するようなシーンも少なくありません。日常的な業務をこなす中でも常に高い緊張感が必要な業務であり、そもそもが精神的負担の大きな職業と言えます。
そんな業務の中で、医療事故というケースに巻き込まれてしまった場合、意外と相談できる相手が限られているのが看護師です。多くの看護職損害賠償保険を提供する団体・企業では、こうした看護師の相談窓口を開設しています。専門的な知識を有し、また医療事故という特殊なケースに関しても知識がある相談員に相談できることで、心理的な負担は大きく軽減されるでしょう。
また、こうした専門家に相談できることで、その後の自身の看護師としてのキャリアを守ることができるようになるかもしれません。
看護師としての資格を取得し、看護師として働いていくためにも、心理的な負担を減らしてくれるのが、看護職損害賠償保険への加入ともいえるかもしれません。
スカウトサービス登録はこちら4.看護職賠償責任保険の選び方
看護職損害賠償保険は、加入しておいて損はない保険です。万が一のリスク回避のために加入するメリットは大きく、看護師として働く以上、まずはどの保険に加入するかを検討すべきでしょう。
看護職損害賠償保険は、団体や企業が提供しており、多くの保険商品が存在します。その中から1つを選んで加入するのが一般的です。もちろん複数加入するという選択肢もありますが、上記の通り補償内容はかぶる部分が多い保険でもあります。特に働き始めの時点では、経済的な意味でも加入する保険は1つに絞るのがいいでしょう。
では、そんな看護職損害賠償保険を選ぶ場合のポイントをいくつか紹介していきましょう。
- 保険料の比較
- 加入資格を満たしているか確認
- サポート体制が手厚いかどうか
- 補償の適用範囲の確認
比較すべきポイントは上記の通りです。保険料を比較する際は、掛け金と支払われる保険料の上限金額を比較検討し、自身の生活に適した保険を選ぶのが重要です。支払われる保険料の大きい商品は、その分掛け金も大きくなりますので、このあたりのバランスを意識して選ぶようにしましょう。
保険商品によっては、加入条件が設定されているものもあります。日本看護協会が提供する看護職損害賠償保険の場合、日本看護協会への加入が条件となりますので、自身が条件を満たしているかどうかを確認しておきましょう。
あとは万が一のケースを想定して考えます。万が一の事態になった場合のサポート体制や、補償が適用される範囲などをしっかりと確認しておきましょう。サポート体制には、上でも紹介した相談窓口などが挙げられます。補償適用範囲に関しては、各商品の紹介資料や紹介サイトなどで詳しく触れられているかと思いますので、この点をしっかりと確認したうえで加入するかどうかを検討してください。
スカウトサービス登録はこちら5.看護職賠償責任保険の種類と特徴
看護職賠償責任保険を提供しているのは、日本看護協会等の団体や、民間の保険会社などがあります。その中から、代表的な保険商品をいくつか紹介していきたいと思います。
提供企業・団体 |
掛け金(年間) |
補償内容(1事故あたり) |
---|---|---|
日本看護協会 |
2,650円 |
|
Willnext (株式会社 メディクプランニング オフィス) |
Aプラン 2,980円 Bプラン 3,440円 |
|
ナース専科 (三井住友海上) |
1,580円 |
|
株式会社メディカル 保険サービス |
5,640円 |
|
株式会社 エージェント・ インシュアランス・ グループ |
3,340円 |
|
参照:
日本看護協会 Willnext ナース専科 株式会社メディカル保険サービス 株式会社エージェント・インシュアランス・グループ日本看護協会の看護職賠償責任保険
公益財団法人 日本看護協会が提供している看護職賠償責任保険は、もっともポピュラーな保険商品といえるでしょう。掛け金はそこまで高くはないものの、補償範囲はしっかり確保されていますので、比較的利用しやすい保険商品と言えます。
ポイントは加入条件です。日本看護協会の看護職賠償責任保険に加入するためには、まずは日本看護協会に加入する必要があります。日本看護協会の年会費が5,000円、さらに都道府県ごとに設置されている「都道府県看護協会」への年会費が必要です。
参考までに東京都看護協会の年会費は5,000円です。つまり、東京都内の看護師が、日本看護協会の看護職賠償責任保険に加入するためには、年間掛け金の2,650円のほかに、日本看護協会の年会費5,000円、東京都看護協会の年会費5,000円の合わせて12,650円が毎年必要になります。
もちろん、看護協会に加入するメリットは、看護職損害賠償保険だけではなく多岐にわたりますので、日本看護協会に加入するかどうかという点も含めて保険への加入を検討する必要があります。
Willnext(株)メディクプランニングオフィス
ほかの保険商品と比較すると、補償内容が多岐にわたっているのがWillnextの特徴です。各社共通の補償内容に加え、鍵交換や感染見舞金など、さまざまなケースに対応できる保険といえるでしょう。
また、保険商品はAプランとBプランが用意されており、それぞれ掛け金や補償内容の上限金額に差があります。より安心したいという場合はBプラン、とりあえず加入したい場合はAプランと、自身にあったプランを選べるのもポイントです。
看護師としてこれから働き始める方は、経済的に不安な面があるかもしれません。そういった方は、まずはAプランに加入し、看護師として働く中で、余裕があると判断した場合にBプランに変更するという事も可能です。
ナース専科
ナース専科の特徴はなんといっても掛け金の安さでしょう。年間の掛け金が1,580円でありながら、補償において重要な基礎的な部分はしっかり補償しており、掛け金を抑えたいという方にはおすすめの保険商品と言えます。
ただし、もちろん掛け金が安いこともあり、補償される場面は限定されるのは避けられません。ほかの保険商品と比較すると、さまざまな費用に対応しているというわけではなく、医療事故が発生してしまった際、重要になる部分のみの補償となります。
看護職損害賠償保険には加入したいけど、できるだけ掛け金を抑え、かつ最低限の補償をしてもらいたいという方におすすめの保険商品といえるでしょう。
株式会社メディカル保険サービス
株式会社メディカル保険サービスは、医師や開業医、医療機関などに特化した保険の提供を行っている企業です。そのため補償内容が非常に手厚く、看護師の方が安心して働ける保険商品を提供しています。
ほかの保険商品と比較すると、年間掛け金こそ高額になりますが、その分補償内容が充実しており、基本契約(対人賠償)は1事故あたり最大1億円、契約期間中合計で最大3億円までの補償が受けられます。
そのほか、初期対応費用や訴訟費用などの補償も充実しているため、万が一の事態が発生しても十分に対応できる充実の補償内容といえるでしょう。
株式会社エージェント・インシュアランス・グループ
株式会社メディカル保険サービスと同様に、医療従事者に特化した保険商品を提供しているのが株式会社エージェント・インシュアランス・グループです。
医療事故が発生してしまった場合の損害賠償金はもちろん、訴訟に関わる費用、弁護士費用、初期対応費用なども補償対象となりますので、安心して看護師業務にあたることができます。
掛け金も他の保険商品と比較してそこまで高額ではないことが特徴であり、比較的加入しやすい保険といえるでしょう。この看護職損害賠償保険に加入するためには、「働く女性の会」への加入が条件となりますが、男性の看護師の方でも加入可能ですのでご安心ください。
スカウトサービス登録はこちら6.まとめ
看護師という仕事には、大きな責任が付きまといます。看護師は業務上患者の命や病状と向き合う必要があり、こうした重要な業務に常に従事するということになります。業務上の過失がなくとも、看護師の対応により、患者の様態に大きな変化をもたらしてしまう可能性があり、またその結果医療事故というケースが発生することも否定できません。
近年では、看護師の業務範囲拡大など、看護師が負う責任はより重くなっており、看護師としてきちんと業務と向き合っていても、結果として医療事故の当事者になってしまうというケースが増えているとも言われています。
こうした医療事故などに備えるための保険が看護職損害賠償保険です。看護職損害賠償保険に加入することで、万が一の辞退でも経済的な負担を軽減することができ、また通常の業務においても、精神的に余裕を持って業務に当たれるようになるでしょう。
これから看護師として働く方は、まずは看護職損害賠償保険への加入を検討するのがおすすめです。多くの保険商品は、年間の掛け金が3,000円前後であり、大きな出費とはなりません。この出費で万が一の備えができるのであれば、加入して損はないともいえます。
保険商品は多くの団体や企業が提供していますので、掛け金や補償内容、また補償時のサポートなどを比較検討し、自身に合った保険商品を選ぶようにしましょう。
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