看護師の人手不足が起きている原因は?実際の影響と解決策を紹介
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看護師の人手不足は、少子高齢化社会を突き進む日本において、大きな課題の1つです。看護師不足は、医療の質の低下にもつながります。現職の看護師の多くは、業務負担の大きさや勤務形態に不満を抱えている人も多く、離職率が高いという話も耳にします。では、看護師の人手不足を解消する方法はないのでしょうか。
看護師の人手不足を解消するためには、看護師が働きやすい環境を整えるために、医療機関が改善すべき点や対策がいくつかあります。本記事では、看護師の人手不足が起きている原因や、医療現場における実際の影響や解決策についてご紹介します。
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1.看護師の人手不足が深刻な現状
少子高齢化社会となり、労働力の不足が危惧されています。看護師の業界も人手不足が深刻な問題となっており、現状の改善を迫られています。では、看護師業界の現状が、どのようになっているのか見てみましょう。
看護師の有効求人倍率は約2倍
看護師の有効求人倍率は、職業全体と比較して約2倍という統計結果が出ています。人手不足を測る指標として、有効求人倍率があります。有効求人倍率は、「ハローワークの数求人数÷求職者」で算出可能です。算出された数が1の場合は、求人数と求職者が同率で、バランスが取れた状態となります。算出された数が1以下の場合は、求人数より求職者が多い状態です。また、算出された数が1以上の場合は、求職者よりも求人数が多い状態となります。
厚生労働省「職業安定業務統計」によると、2020年~2022年の職業全体の有効求人倍率は1.01~1.19へと推移しており、求人数と求職者はほぼ同率~求人数が若干多いという状況です。一方、看護師の有効求人倍率は2.05~2.20へと推移しており、有効求人倍率は約2倍という状況となっています。この数値から、看護師の人手不足は他の職業と比較して深刻であることがわかるでしょう。
有効求人倍率
職業全体 |
看護師 |
|
2020年 |
1.01 |
2.05 |
2021年 |
1.05 |
2.12 |
2022年 |
1.19 |
2.20 |
2025年に不足する看護師数
看護師の人手不足はすでに深刻化しているものの、2025年にはさらに状況が悪化すると予想されています。厚生労働省は2025年までに188万人~202万人の看護師が必要であると想定していますが、実際の看護師の数は175万人~182万人に留まるであろうと予測しています。そのため、2025年には最大27万人もの看護師不足になる可能性があるのです。
看護師不足となるのにはさまざまな要因があげられるものの、高齢化社会も大きな要因の1つです。日本は世界でも有数の高齢化社会であり、医療や介護のニーズが急速に増加しています。そのため、病院や介護施設、在宅医療の需要が拡大し、看護師の役割がますます重要になっています。しかし、看護師の数が需要に追いついておらず、求人数と求職者のバランスが崩れているのです。
看護職員就業者数(合計)
2016年 | 166万人 |
---|---|
2020年 | 173.5万人 |
2025年 | 180.1万人(需要推計) |
厚生労働省「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」より作成
看護師数は増加傾向
看護師の人手不足が続いている状況ではあるものの、看護師数自体は増加傾向にあります。2010年の看護師数は132万人ほどでしたが、2020年には157万人ほどへと増加しています。10年の間に、24万人ほど看護師が増加した計算です。
しかし、職業全体における平均有効求人倍率と比較して、2倍以上の売り手市場となっていることで、看護師数は増えても人手不足が深刻化していることを示しています。看護師数が増えても、まだまだ需要に追いついていないと言えるでしょう。
スカウトサービス登録はこちら2.看護師の人手不足による影響
看護師の人手不足は、病院や介護施設などの医療現場にも影響を及ぼします。人手不足が加速すると、満足に医療が受けられないリスクも考えられます。看護師の人手不足が医療現場に与える影響は、次の通りです。
患者の安全性問題
患者の安全性は、看護師数が大きく影響します。医療機関に必要な看護師の数は、それぞれの施設によって異なります。しかし、患者7人~10人に対し、看護婦1人の配置をすることが規定されているため、医療機関はそれを守らねばなりません。基準が定められているのは、1人の看護師がそれ以上の人数の患者に対応すると、医療ミスの生じるリスクが高まるからです。対応する患者数が少ないほど、看護師の負担が少なくなり、余裕を持って対応できます。
しかし、現状においては、看護師1人が10人の患者に対応している医療現場が多く、患者の安全性への影響が危惧されています。看護師の人手不足を解消し、対応する患者の数を減らすことが、患者の安全性の向上につながるでしょう。
病床数の減少へ
看護師の人手不足は、病床数にも影響します。医療機関が患者を受け入れるためには、患者7人~10人に対して看護師1人配置という基準を守らねばなりません。基準を満たす数の看護師がいないと、患者に対して質の高いケアを提供することが難しくなります。
病床数が多くなるほど、患者のモニタリングや緊急対応、日常的なケアなどこなす作業量も多くなり、現場の看護師の負担が多くなってしまいます。安全性を確保するために、病床数を減らして対応するしかなくなるのです。
閉鎖・閉院もありうる
看護師の人手不足は、閉鎖・閉院の引き金になりかねません。看護師不足は、患者への医療の質が低下するなど、運営に影響を与えるだけではないのです。経営面にも影響を及ぼし、閉鎖・閉院につながることもあります。現実に、看護師の人手不足により、閉鎖や閉院の危機に直面している医療機関は少なくありません。医療機関の閉鎖・閉院は、事業者へ大きなダメージを与えますが、地域医療にとっても大きな打撃となります。
中でも、地方や小規模な医療機関への影響は大きいでしょう。大都市では病院の数も多く、他の病院に患者を転院させる選択肢もあります。しかし、地方の病院では数も少ない傾向があり、患者の受け入れ能力が大幅に低下してしまいます。地域医療全体に影響を及ぼし、医療サービスの格差が広がることも考えられるでしょう。そのため、看護師の人手不足は、早急に取り組むべき課題です。
スカウトサービス登録はこちら3.看護師の人手不足をひきおこす要因
看護師の人手不足は、いくつもの要因が重なりひきおこされています。1つの要因でないことが、解決するのを難しくしています。看護師の人手不足をひきおこす主な要因は、次の通りです。
少子高齢化で看護需要が増大
日本は、海外諸国と比較して少子高齢化が深刻化している筆頭国の1つです。高齢者は何かしらの慢性疾患を抱えていることが多く、慢性疾患患者の増加に対応するために、看護師の需要が高まっています。病院や介護施設だけでなく、在宅医療の需要も高く、入院患者や訪問看護に必要な看護師の数も不足しています。そのため、少子高齢化による医療需要の増加に、看護師の供給が追いついていない状況です。
高齢者の人口は、今後ますます増加することが予測されています。2025年には、日本の総人口における65歳以上の比率が30%ほどに達し、2060年には40%ほどを占めるとされています。看護師の需要はさらに高まることが予想できるでしょう。より多くの病床が必要となるほか、在宅医療の利用者の増加も予測され、看護師の人材不足が、さらに加速していくと考えられます。
業務負担も増大
看護師の人手不足は、業務負担が増加していることも要因の1つです。看護師の人手不足は今に始まったことではなく、慢性的に人材不足の状況が続いています。しかし、少子高齢化に伴い人材不足が加速したことで、看護師の業務負担も増大しています。そもそも、看護師業務は他の業種と比較しても範囲が広く、仕事量が多く負担の大きい仕事です。
基本業務は医師の診療の補助や患者の看護となりますが、看護記録を作成するなど、事務仕事も行わねばなりません。また、定期的に夜間勤務もあり、場合によっては業務外の仕事を行う必要があります。業務負担が多く、1日中業務に追われている状態です。
2022年に実施された日本医療労働組合連合会の調査によると、調査に応じた3万6,000人もの看護師のうち、慢性疲労感があると回答した人が78.4%に達しています。また、健康不安を感じると回答したのが66.8%、強いストレスを感じていると回答したのが65.4%でした。看護師の業務負担が大きいため、肉体的にも精神的にも、ギリギリの状態で働いている看護師の多いことが見て取れます。
また、病床数が多い・看護師1人に対する患者数が多いという状況において、慢性疲労を感じる看護師が多い結果となっています。厚生労働省のデータによると、日本は人口1,000人あたりの病床数が世界で最も多いのが現状です。およそ13床の病床数は、アメリカの約2倍です。そのため、日本の看護師の業務量は、アメリカの看護師の約2倍であることがうかがえます。
調査においては、仕事を辞めたいと感じながら働いている看護師が、約8割を占めることも報告されています。仕事を辞めたい理由として、約6割が業務負担の大きいことをあげており、8割以上が人員不足により十分な看護ができないと感じているとの結果です。看護師の業務負担を軽減し、仕事を辞めたいと思わせない環境づくりをすることが課題となるでしょう。
不規則な勤務時間
看護師の人手不足の要因は、不規則な勤務時間もあげられます。看護師の勤務体制は、日勤・準夜勤・夜勤の3交代制で、シフトはローテーションするのが一般的です。また、オンコールで呼び出され、緊急対応するケースもあります。会社勤めのように、午前9時~午後5時までなど規則正しく勤務できるわけではありません。毎日のように異なるシフトで働くのは、体への負担が大きいうえに、プライベートの時間を確保するのも難しくなります。
とくに、結婚している看護師や子持ちの看護師は、夜勤勤務が障害になってしまいがちです。小さい子どもは急な発熱など体調を壊しやすいうえ、夜は一緒にいてあげたいのは当然のことです。夜勤なしの勤務、時短勤務など、ライフスタイルに合わせた働き方ができないと、仕事を続けるのが難しくなります。
また、医療機関は慢性的な人手不足に直面しているため、夜勤の時はとくに業務負担が増えてしまいがちです。少人数の看護師で病棟巡回をするほか、ナースコールにも対応しなければなりません。業務負担が多いため、休憩時間も十分に取れず、余裕がない状態での勤務を強いられます。人手不足であるとわかっているため、休暇が取りづらい状況でもあり、ライフワークバランスを崩してしまい、離職という道を選ぶ看護師も少なくありません。
高い離職率
看護師の人手不足をひきおこす要因は、高い離職率です。日本医療労働組合連合会の調査結果からもわかるように、仕事を辞めたいと思いながら働く看護師の数は、約8割にも及びます。看護師の約8割が潜在的な離職希望者であるため、労働環境や勤務形態を改善しないことには、潜在的離職希望者が、実際に離職することになりかねません。
新しい看護師を採用しても、離職率が高いままでは、根本的な解決策とは言えません。定着率を上げるために、何らかの対応をする必要があるでしょう。
看護師が離職するタイミングは、出産や結婚などがあげられます。社会的にも育児や家事も男女平等にすべきと唱えられているものの、まだまだ女性の負担の大きいのが現状です。そのため、結婚や出産をきっかけに、いったん退職するケースが一般的です。その後、子育てが落ち着いたタイミングで、復職するケースもあります。
ただし、一度離職した看護師が復職するケースは、あまり多くありません。年齢が高くなるほど、復職しない割合が大きくなっていきます。看護師の資格を保有しているものの看護師として働いていない潜在看護師は、全国に80万人近く存在するとされています。2025年には最大27万人の看護師不足になると予測されていますが、潜在看護師のうちの3分の1が復職してくれれば、看護師の人手不足は大幅に改善できるでしょう。
スカウトサービス登録はこちら4.看護師の人手不足に対応する解決策
看護師の人手不足に対応するために、医療施設の経営者側も、対策を練ることが命題となっています。適切な対策を実施し、看護師の労働環境を整えることが、人手不足解消のカギとなります。医療施設の経営者が看護師の人手不足に対応する解決策は、次の通りです。
給与待遇や福利厚生の見直し
看護師の人手不足に対応する解決策は、給与待遇や福利厚生の見直しです。給与待遇や福利厚生を充実させると、看護師の働きやすい環境が作り出せます。看護師の採用にも良い影響を与え、人手不足の解消につながることが期待できるでしょう。
給与待遇の改善が難しい場合でも、福利厚生を手厚くすることで、定着率のアップにつながります。福利厚生で力を入れるべきなのは、看護師が安心して働ける環境づくりです。看護師が抱える不満を理解し、それが解消できる対策を練ることが大切です。
給与待遇や福利厚生の見直しについては、それぞれの医療機関によってできることが異なります。職場環境を整えることも大切ですが、プライベートを充実させるサービスの提供も、看護師の精神衛生を向上させるのに役立ちます。看護師の給与待遇や福利厚生として充実すべき事柄としては、次の2つがあげられるでしょう。
- 夜勤手当や残業手当の充実
- 院内託児所の設置
- 育児休業・介護休業が取得しやすい労働環境の整備
夜勤手当や残業手当を充実させることは、看護師として働くモチベーションの向上につながります。夜勤や残業は、看護師の慢性的な疲労感を募らせる要因になっており、その辛さで離職を考える人もいるほどです。業務量に見合う手当が支払われることで、適切な給与形態の実現ができます。中には、残業手当が支払われない、業務量に見合わない残業手当の医療施設も存在するため、給与形態の向上は現職看護師の離職の抑止や潜在看護師の就業が期待できます。
院内託児所を設置することも、福利厚生として看護師に喜ばれる対策です。子どものいる看護師は、就業中は託児所に預けるのが一般的です。しかし、託児所は預かり時間が定められているため、夜勤の際は子どもを預ける場所が見つからないというケースもあります。地域によっては、託児所の数が少ないため、子どもを預ける場所がないため職場復帰できない看護師も存在します。
院内託児所の設置は、仕事の合間に子どもの様子を確認できるなどのメリットもあり、子持ちの看護師が安心して働ける環境です。結婚や出産でいったん離職した看護師が、仕事へと復帰しやすい職場となるでしょう。
育児休業・介護休業の取得は就労者にとって当然の権利です。しかし、人手不足の職場においては、育児休業・介護休業を取得しにくいケースもあるようです。育児休業や介護休業が気軽に取りやすい職場環境であれば、結婚や出産、親の高齢者を理由に離職する看護師も少なくなるでしょう。いったん仕事を辞めてから復帰するよりも、休業後に仕事復帰をするほうが、ハードルは低いはずです。
給与形態や手当を充実させることも大切ですが、休暇が取りやすい環境を整えることも大切です。働きやすい環境が整い、休暇も取りやすいとなれば、定着率復職率も高まるでしょう。
医療DX化による業務効率化
看護師の人手不足に対応するための対策として、医療DX化による業務効率化も大切です。医療DX化とは、医療デジタル技術を導入することで、看護師の業務負担を軽減できます。また、医療DX化で電子カルテや電子処方箋などを導入することで、患者に質の高い看護が提供できるようになります。
業務が効率化すると、看護師の人数を増やさなくても、業務をスムーズに行いやすくなるからです。看護師の業務負担を減らすために、医療ロボットを導入する医療機関も増えています。医療DX化で、看護師は本来の業務に集中できるようになるでしょう。
医療DX化は、病院や介護施設だけでなく、訪問看護においても業務効率の向上につながります。訪問スケジュールの調整が効率的にできるため、限られた人数の看護師を適切に配置できます。
キャリアアップの支援体制
看護師の人手不足に対応するための対策として、キャリアアップの支援体制を整備することも大切です。キャリアアップの支援とは、認定看護師・専門看護師の資格取得やキャリア養成支援制度の導入などがあげられます。キャリアアップを目的として資格取得などを志すことは、看護師として働くモチベーションを高めるのにも役立ちます。
また、看護師がキャリアアップを目指し勉強することで、看護師の質が総合的に高まることも期待できるでしょう。具体的なキャリアアップ支援のプランとしては、定期的な研修や学会参加、オンライン教育プログラムなどがあげられます。また、研修の費用補助を行うのも効果的です。
求人方法の見直し
看護師の人手不足に対応するための対策として、求人方法の見直しもあげられます。看護師の採用を増やすためには、魅力的な職場であることをアピールすることが重要です。そのためには、求人サイトを上手に活用する必要があります。
単に求人情報を掲載するだけにとどまらず、職場環境が良好であることを写真や動画で示したり、待遇が良いことを記載することが大切です。好条件の職場であることをアピールできれば、求職者の興味を引けるでしょう。良質な看護師を確保することにもつながります。
スカウトサービス登録はこちら5.まとめ
医療機関においては、人手不足により看護師の業務負担が多いという現状が続いています。日本の看護師の業務負担は、諸外国と比較しても多く、病床数あたりの業務負担率はアメリカの約2倍という過酷な労働環境です。しかし、このままの状態を続けていると、将来的にも看護師不足の深刻化することが予測されており、離職率や復職率を上げるための対策も練られています。
危機感の高い医療機関ほど、看護師の人材確保のために労働環境を整え、定着率の向上を目指しています。看護師が転職や復職を考える際には、労働環境が整っている医療機関を探すと、ライフワークバランスの取れた働き方ができるでしょう。仕事へのモチベーションを高く保ちながら、働き続けられます。
また、慢性的な看護師不足に悩まされる医療機関においては、夜勤手当など給与形態の見直しが必要です。そのほかにも、院内託児所の設置など、看護師に寄り添った職場環境を整えることが課題となります。働きやすい職場は求職者を引きつけ、良い人材を確保しやすくなります。十分な人材を確保できると、看護の質の向上にもつながり、患者からの信頼も厚くなるでしょう。
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