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零売薬局とは|自己負担になる?通販でも買える?取り扱い可能な医薬品も紹介

  • 更新日
投稿者:堀内 花音

「零売薬局ってどんな薬局?」
「零売薬局で薬を買う時は自己負担になる?」
「零売薬局の薬剤師として働いても問題ない?」

このような悩みや疑問はありませんか?

ドラッグストアとは違う第3の選択肢として注目が集まる零売薬局。薬剤師の新たな就職・転職先として、検討している方も多いのではないでしょうか。

本記事では、零売薬局の概要やメリット・デメリット、将来性などについて解説します。この記事を読めば、零売薬局の正しい知識が身につき、零売薬局に違法性はないのか、転職しても問題ないかどうかの判断ができるようになるでしょう。

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1.そもそも「零売」とは

零売とは、患者さんの受診が難しい場合などに限り、一部の医療用医薬品を薬剤師の指導のもと販売できる方法です。「分割販売」とも呼ばれています。零売を中心とした薬局運営を行うのが「零売薬局」です。

零売を行うためには、さまざまなルールが設けられています。原則として、医療用医薬品の販売は医師が発行する処方箋が必要ですが、一部の医薬品のみ、処方箋なしで販売できるのです。

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2.零売薬局で取り扱えるのは一部の医薬品だけ

医療用医薬品は、「処方箋医薬品」と「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」に分類され、零売薬局は「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」を取り扱います。医療用医薬品は約13,000種類あり、零売薬局で取り扱えるのは、そのうちの半分程度です。

薬は医療用医薬品だけではありません。薬の種類と取り扱い場所は下表のとおりです。

取扱場所

取扱者

販売方法

【OTC医薬品】
①要指導医薬品
②一般用医薬品

ドラッグストアなど

①薬剤師
②薬剤師/登録販売者

①対面販売
②オンライン可

【医療用医薬品】
①処方箋医薬品
②①以外の医療用医薬品

①薬局
②零売薬局

①②薬剤師

①②対面販売のみ

【処方箋医薬品とそれ以外の医療用医薬品との違い】

処方箋医薬品

処方箋医薬品以外の医療用医薬品

該当品

厚生労働大臣が告示により指定された医療用医薬品

古くから承認されている医薬品、一般用医薬品の成分として指定されている医薬品などが該当

処方箋

処方箋がないと販売・授与できない

原則として、処方箋が必要

品目数(2020年7月時点)

約20,000品目

約7,000品目

零売できる条件

原則として、医療用医薬品は医師が発行した処方箋が必要です。しかし、薬剤師が医師への診察を勧めたうえで、大規模災害で受診が困難な場合などの「正当な理由」があれば、処方箋なしで販売できます。

ただし、正当な理由がない場合でも、「一般用医薬品を考慮したが、やむを得ず販売せざるを得ない場合」などにおいては、「医師の受診勧奨を行い、薬歴管理を実施するよう努める」ことで販売可能です。

「やむを得ず販売せざるを得ない場合」においては、下記の注意点にも配慮しなければなりません。

  • 販売数量は必要最低限の数量に限定する
  • 必要に応じて、一般用医薬品などの使用を勧める
  • 必要に応じて、医師または歯科医師の診断を受けることを勧める
  • 販売した薬剤師の氏名や薬局の電話番号などを伝える
  • 購入履歴を2年間保存すること
  • 購入した者の連絡先を書面に記載し、保存するよう努めること

出典:厚生労働省|処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売について

いつから零売ができるようになった?零売薬局の歴史

零売という言葉自体は明治時代から存在し、当時は薬局間で行われる薬の売買方法として使われていました。現在の零売は、2005年の薬事法改正によって、「やむを得ない場合に限る」「医師の処方箋に基づく販売が原則」といったルールが明確化されたものです。

しかし、「やむを得ない場合」に限らず医療用医薬品を販売する零売薬局が増えたため、2022年に適切な販売方法について再周知されることになりました。そして2023年、「本来の目的から逸脱した処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売は重大な問題」として、零売を規制するための法改正に向けて検討を進めています。

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3.零売薬局は少ない?東京都内の店舗を一部紹介

2023年時点で、零売薬局の数は約100店舗です。国の政策方針である「軽い不調は自分でできるだけ手当てする」セルフメディケーションが推奨されてから、零売薬局は増えつつあります。

しかし現状は、6万店舗ある調剤薬局と比べると、かなり数は少ないです。全国的に認知されているわけではなく、現在は東京や大阪などの都市部が中心となっています。
例として、東京都内の店舗を一部ご紹介します。

※2024年9月時点

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4.零売薬局では自己負担?保険の対象にはならない?

零売薬局では、公的保険が適用されないため、薬代は全額自己負担です。また、零売薬局で販売される医療用医薬品の価格は、店舗によっても異なります。つまり、処方箋医薬品よりも安い場合もあれば、高い場合もあるのです。

しかし、薬代を安く設定してしまうと、患者さまが「安く済むなら受診しないほうがいい」と誤解する可能性があります。そのため、日本零売薬局協会では、「受診時の自己負担額に近い価格」での販売を推奨しています。

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5.零売薬局で買える医薬品・買えない医薬品

厚生労働省が公表している「零売に関する基本知識/日本零売薬局協会の取り組み」によると、零売薬局で買える医薬品・買えない医薬品のカテゴリーは以下のとおりです。

零売薬局で買える医薬品 零売薬局で買えない医薬品
・痛み止め
・かぜ薬全般
・ステロイドの塗り薬
・鼻炎・かゆみの薬
・ビタミン剤
・漢方薬
・胃腸薬
・医療用保湿剤
・点眼薬

※一部、零売薬局で販売できない医薬品もあります。
・抗生物質
・高血圧の薬
・睡眠薬
・高脂血症
・糖尿病の薬
・向精神薬など

出典:厚生労働省|零売に関する基本知識/日本零売薬局協会の取り組み

零売薬局で買える医療用医薬品は、古くから承認されている医薬品や、一般用医薬品の成分として指定されている医薬品などが該当します。

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6.零売薬局での薬の買い方 オンラインでも買える?

零売薬局で医療用医薬品を購入する際は、訪店→ヒアリング→対面で購入といった流れです。来店前に電話やオンラインで相談することも可能です。ここでは、ヒアリングと対面での購入について詳しく解説します。

①ヒアリング

まずは、患者さまの基本情報や健康情報をヒアリング。そのうえで、薬剤師が薬の使用目的や健康上のリスクなどを鑑みて、零売が可能であるかを判断します。

全体相談のうち、20%程度は「受診が可能な方」や「OTC医薬品で対応できる場合」などにより販売を断っています。

②対面での販売

ヒアリングした結果、薬剤師から医療用医薬品の販売が「やむを得ない」と判断された場合に購入可能です。オンラインでは購入できず、対面での購入のみです。

また、購入できる医療用医薬品の量は、薬剤師のヒアリングと状況を鑑みて、必要最低限しか購入できません。

零売薬局で購入できるケース・購入できないケース

前述したとおり、ヒアリングの時点で20%程度の患者さまは断っています。では、どのようなケースが購入できる・できないのでしょうか。一例は以下のとおりです。

<購入できるケース>
「定期的に服用している薬を切らしてしまった。数日服用を中止すると、健康上の問題が発生する。しかし、GWでクリニックが休みのため受診できない。体調を考えるとすぐに服用したい」
→体調や服薬歴などをヒアリングしたうえで対応

<購入できないケース>
「風邪のような症状があるが、まだ医師の診察を受けていない。とりあえず風邪薬で様子を見たい」
→医師の診察がなければ判断ができないため購入不可。丁重にお断りするとともに、受診勧奨を薬剤師から行う。

零売薬局には何をもっていけばいい?

零売薬局には、お薬手帳や処方している医薬品の説明書を持参すると、スムーズに対応してもらえます。病院で受診する際は保険証が必要ですが、零売薬局では不要です。

ただし、本人確認を求められる場合があるため、保険証を持っておくと安心です。また、患者さまの健康状態や購入目的によっては、購入できなかったり、数量を限定されたりする場合があります。

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7.零売薬局のメリット・デメリット

ここでは、零売薬局を利用するメリット・デメリットを解説します。メディアでは、零売薬局のメリットばかりが報じられていますが、デメリットもきちんと理解したうえで利用しましょう。

メリット

零売薬局のメリットは以下のとおりです。

  • 緊急時に薬を入手できる
  • 薬剤師に相談して適切な薬を入手できる
  • 重篤な病気の早期発見に繋がる
  • OTC医薬品の正しい使用について学ぶことが出来る

一部で「処方箋なしで医療用医薬品が買える」「時間短縮になる」というメリットが伝えられていますが、それは適切な零売薬局の利用方法ではありません。それぞれのメリットを解説します。

緊急時に薬を入手できる

零売薬局の大きなメリットは、緊急時に薬を購入できることでしょう。それが零売薬局の本来の目的でもあります。

たとえば、「30日分の処方薬が切れてしまった。薬を飲まないと健康上の問題があるが、年末年始で病院がお休みなので、すぐに服用したい」といった緊急時でも入手できます。

薬剤師に相談して適切な薬を入手できる

零売薬局では薬剤師に相談し、適切な判断のもと薬を購入できる点がメリットです。薬剤師が患者さまの健康状態、服薬歴などを考慮してやむを得ない場合に限り、医療用医薬品を購入できます。
薬剤師から薬の説明を受けながら、納得したうえで購入できる点はメリットです。

重篤な病気の早期発見に繋がる

零売薬局の利用により、重篤な病気の早期発見につながる可能性があります。零売薬局で行うヒアリングは、単に薬を販売する目的ではなく、患者さまの健康状態を把握し、必要に応じて受診を促す役割もあるのです。

たとえば、患者さま自身は軽度の症状だと思っていても、実は重篤な病気の前兆であるケースも少なくありません。そのため、零売薬局の薬剤師が受診を勧めることで、早期に医療機関で診断・治療を受ける機会が増える点はメリットといえるでしょう。

OTC医薬品の正しい使用について学ぶことが出来る

零売薬局でヒアリングを受けているなかで、患者さまがOTC医薬品を使用している場合は、正しい使用方法について学ぶことができます。また、症状によっては医療用医薬品の使用に頼らず、OTC医薬品で十分に対応できるケースもあります。零売薬局の利用により、適切なセルフメディケーションの促進にもつながるのです。

デメリット

零売薬局のデメリットは以下の2点が挙げられます。

  • 保険が適用されない
  • 全国に店舗がない

まず、零売薬局で購入できる医療用医薬品は、保険適用外です。薬の価格は、零売薬局によっても多少異なります。日本零売薬局協会の指針により、受診時の自己負担額に近い価格で設定されていることが多いですが、節約目的で利用しないようにしましょう。

また、全国的に店舗数が少ないのもデメリットです。2023年時点の零売薬局の店舗数は約100程度です。店舗数が徐々に増えているとはいえ、利用したくても利用できないのはデメリットでしょう。

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8.零売薬局で働く

零売薬局で働くためには、医療用医薬品を取り扱うことができる薬剤師資格が必要です。ここでは、零売薬局で働く薬剤師の業務の流れと、働くうえで気をつけるべき点について解説します。

販売までの一連の流れ

零売薬局の販売プロセスは以下の4ステップです。

  1. 来店前の事前相談
  2. 店舗でのヒアリング
  3. やむを得ない場合の販売
  4. フォローアップ
来店前の事前相談

事前相談では、零売についての基本的な説明を電話やオンラインで行います。そのうえで、患者さまの氏名や性別、生年月日などの基本情報と、症状、既往歴、服薬歴などの健康情報をヒアリングします。

事前相談で零売できないと判断した場合は、受診を勧めたりOTC販売などの代替案を薬剤師から行うことが多いです。

店舗でのヒアリング

事前相談の内容に加えて、患者さまの詳しい背景や薬の使用目的、健康上のリスクなどを確認するプロセスです。店舗によって異なりますが、10分程度ヒアリングを行います。

やむを得ない場合の販売

ヒアリングし、医療用医薬品の販売がやむを得ないと判断した場合は、応急処置的な位置付けで必要最低限の薬を販売します。販売は、患者さまと薬剤師が対面にて行うのがルールです。

フォローアップ

やむを得ない場合に販売した場合でも、販売を断った場合でもフォローアップを行います。販売した場合は、その後の症状や副作用の確認。販売を断った方には、提案した内容を行ったか、体調面の変化がないかなどの確認をします。

零売薬局で働く薬剤師が気を付けるべきこと

零売薬局で働く薬剤師が気を付けるべきポイントは、以下の3点です。

  • 事前カウンセリングはしっかりと
  • やむを得ない場合のみ販売する
  • 初めて使う薬に関しては特に慎重に

それぞれ解説します。

事前カウンセリングはしっかりと

零売はまだまだ認知度が低い薬局の形態です。零売の正しい利用方法を知らない患者さまは、「時間短縮できる」「病院に行くのが面倒」といった間違った目的で利用する方も少なくありません。そのため、事前カウンセリングにてしっかりと説明し、適切に利用してもらうことが大切です。

やむを得ない場合のみ販売する

零売で医療用医薬品を販売できる条件は、「やむを得ない場合」のみです。原則として、医療用医薬品は医師が発行した処方箋が必要なことは忘れてはいけません。

初めて使う薬に関しては特に慎重に

患者さまが初めて使用する薬を販売する際は、特に慎重に判断しましょう。基本的には、これまで処方された薬を販売することが望ましいです。

過去に服薬した薬であれば、アレルギーや副作用のリスクが低く、安心して使用できるためです。そのため、初めて使う薬に関しては、慎重に判断しなければなりません。

零売薬局に向いている人の特徴

零売薬局は調剤薬局での勤務と比べて、薬剤師にはより専門的な知識が求められます。医師の処方箋なしに医療用医薬品を販売するため、薬剤師は医師の指示がない状態で判断を下す必要があるからです。

また、事前のヒアリングやフォローアップでは、患者さまとのコミュニケーションが必要となります。そのため、「スキルアップしたい方」「コミュニケーションをより重視した勤務先で働きたい方」にとっては新しい転職先のひとつといえるでしょう。

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9.零売薬局の課題と今後

一部の零売薬局で、「医師の診断がなくても医療用医薬品を購入できる」といったメリットだけを強調した広告を出しているのは不適切として、医師会などから指摘されています。行政指導が行われていますが、明確に禁止されていないのが現状です。

いわゆるグレーゾーン的な扱いです。原則として、医師が発行する処方箋が必要なことを忘れてはなりません。しかし、やむを得ない状況に限らず、日常的に零売を行う薬局が増えていることが問題視されています。

そこで厚生労働省は、2022年8月に適切な販売方法について再周知することになりました。また、「通知だけで適正な販売を指導するには限界がある」として、零売を規制するための法改正に向けた検討も進めています。とはいえ、患者さまにとってメリットもあるため、ドラッグストアとはまた違う「第3の選択肢」として注目されていくでしょう。

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10.まとめ

零売薬局とは、やむを得ない場合に限り、一部の医療用医薬品を処方箋なしで販売できる薬局のことです。零売薬局は法的に認められたものですが、販売の際にルールが設けられています。

グレーゾーン的な見方もあるため、今後は販売方法について規制強化していく予定です。しかし、零売に関して医師会から批判の声が上がる一方で、利用者からは一定のニーズがあるのも事実です。

今後の動向をチェックしながら、新しい転職先として検討してみるのもよいでしょう。

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URL:https://www.2ndlabo.co.jp

2022年4月よりセカンドラボ株式会社に入社。主にクリニックを中心に医療介護向け求人メディア「コメディカルドットコム」の採用課題のサポートを行う。

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