看護師が心理学を学ぶ方法|心理カウンセラーのなり方、民間資格の種類も解説
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「日々患者さんと接していくにつれ、心理学に興味を持つようになった」「身体だけでなく、心にもアプローチできるようになりたい」そう思って心理学を学び始める看護師さんも少なくありません。
心理学を学んで看護の仕事に活かしたい方や、心理カウンセラーに転向したい方もいらっしゃるでしょう。
しかし、忙しい中できちんと学べるのか、また学んだことによってどんなメリットがあるのか不安に思いますよね。
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1.<はじめに>看護師が心理学を学ぶメリット
看護師が心理学を学ぶことによって、患者さんに対してはもちろん、自分自身にもメリットがあります。
対患者さん
心理学で学んだことは、患者さんとのコミュニケーションでも役立てることができます。相手に共感し、相手の立場になって考えることを学ぶからです。
自分が患者さんの立場だったらどう思うか、またどうして欲しいか、具体的に自分を相手の立場に置き換えて考えられるようになります。
特に外との関わりが減ってしまう入院中の患者さんにとっては、看護師が大きな心の拠り所となります。自分に寄り添ってくれる、自分を理解してくれる安心感は信頼関係を築くうえでも非常に大切です。
心理学を学ぶことで、患者さんとのコミュニケーションの取り方が分かってきます。適切なコミュニケーションが取れれば、患者さんとも良好な関係を築けるでしょう。
患者さんをケアするうえで身体のケアはもちろんのこと、心のケアも非常に大切です。
患者さんは常に病気や不安と闘っています。治療はいつまで続くのか、治療した結果治る見込みはあるのか、入院中の仕事のことなどさまざまな悩みや不安を抱えています。ときには、その不安を看護師にぶつけてしまうこともあるでしょう。
そんなときに寄り添ってくれる看護師がいることは、患者さんにとって大きな支えとなるに違いありません。
不安なときにどう寄り添えばいいのか、その不安をぶつけられたときにどう対処するべきか。心理学を通じて、不安感の緩和方法や寄り添い方を学べば、患者さんに安心感を与えられるようになります。
対同僚看護師や他職種で働く人
心理学の知識は、共に働く医療従事者たちとのコミュニケーションにも役立てることができます。人間がどんな状況で、どんな感情になるかを学ぶことは、相手の気持ちを理解することにもつながります。
例えば、下記のような場面で落ち込んだり、怒りを覚えたりしたことはないでしょうか?
- きつい言葉を投げかけられる
- 冷たい態度を取られる
- 失敗以外のことを指摘される
普段は自分を責めてしまうような場面でも、心理学を学ぶことで相手の言動や行動の根底にある意図を理解でき、必要以上に落ち込まないで済むようになります。また、相手への接し方も変わってくるため、人間関係をより円滑にすることができます。
心理学で学んだ知識は、チームや後輩をマネジメントするのにも役立ちます。人間はただ指摘をされるだけでは、やる気を失ってしまいます。心理学を通じて一緒に働く人たちの心を動かす話し方を学ぶことで、モチベーションを高めることにつながります。また行動の背景にある動機についても理解を深めることによって、相手の立場に立ったマネジメントができるようになります。
- 注意したら、相手が落ち込んでしまった
- 相手に指示をしても、その通りにやってくれない
このような場合、どうして落ち込んでいるのか、自分が指示したことをやってくれないのか、相手の心理を理解しようとすることで、アプローチ方法や対策方法が見えてきます。
対自分
心理学の知識は自己成長に繋げることもできます。心理学を学ぶことは、多角的な視点を養い、自分自身のことを理解することにもつながります。
・挫折経験からの立ち直り方
挫折経験からなかなか立ち直れなかったり、必要以上に自分を責めてしまったりしたとき、心理学を学ぶことで、自分の行動や感情の背景を理解し、自分自身を客観的に見ることができます。その上で、次から同じミスを繰り返さないためにはどう対処すればいいか、行動パターンが見えてきます。
・自分自身のモチベーションの上げ方
人間は毎日やる気に満ちあふれているわけではありません。しかし、そのようなときでも仕事はこなさなければなりません。気持ちが落ち込んだとき、どのようにすれば自分のモチベーションを上げられるか、心理学を学ぶことで分かってきます。
心理学は自己成長に活かせるツールなので、日常生活や職場でのパフォーマンスをあげるのに役立ちます。
看護師は人の命と常に向き合わなければなりません。
少しのミスでも重大な事態に繋がる可能性があるうえ、日頃の激務や人間関係の悩みから精神的に辛い思いをする人も多くいます。心の不調が身体に出てきてしまうこともあるでしょう。
しかし、まだまだ看護師へのメンタルケアの制度は整っていません。つらいときでも、自分自身で気持ちの対処ができるようになるだけで心理的負担はだいぶ変わってきます。
心理学を学ぶことで、自分の気持ちを多角的に分析できるようになります。自分の気持ちの変化にも敏感になり、限界になる前に気づけます。自分なりのストレス対処法も確立できるようになるので、メンタルケアをしながら生活することは非常に重要です。
スカウトサービス登録はこちら2.看護師が心理学を学ぶ具体的な方法とは?
「心理学を学びたいけどどうやって学べばいいの?」「仕事をしながらでも勉強できるの?」という方に、忙しい中でも仕事と両立しやすい勉強方法をご紹介します。始めやすい順に4つ記載します。
独学で本やWebサイトから学ぶ
まず最初に誰でも気軽に始められるのが、本を読んだり、WEBサイトで調べたりすることです。
心理学にも分野やテーマはたくさんありますが、多くの本は必要な分野やテーマごとにまとまっているため探しやすいです。ただ、いきなり難しい論文のような本を読んでしまうと、難しくて挫折してしまう可能性があります。最初は「入門書」などわかりやすいものから読み始めましょう。
またひとつの文献のみだと、考えが偏ってしまうこともあるため、広い視野を持つためにもなるべく同じ分野でも複数の本を読むようにしましょう。
【メリット】
- 分野やテーマごとにまとまっているものが多いため、必要な知識を選んで学べる。
- 専門家が書いた情報が手軽に得られる。
- 初心者にもわかりやすくまとめられた入門書もある。
【デメリット】
- 難しい文献もある。
- ひとつの情報源だと知識が偏りやすい。
- 購入する場合は書籍の購入費がかかる。
- (自分に合った本が見つかるまでは図書館がおすすめ)
今はインターネット上にも、心理学にまつわる記事や動画がたくさん出ています。
無料で見られる反面、信ぴょう性の低い情報もあるため、できる限り心理の専門機関や専門家が運営しているサイトやブログを見るようにしましょう。
例としては、100年以上の歴史を持つ心理学会である公益社団法人・日本心理学会が運営する「心理ミュージアム」があります。
また、各大学の心理学科のページもおすすめです。
【メリット】
- 知りたいことを手軽に調べられる
- 専門家が書いた情報もある。
- 無料
【デメリット】
- 専門家以外が書いた信ぴょう性の薄い情報もある。
- 論文など読みづらい文章もある。
セミナーや1日体験レッスンへの参加
「いきなり長期講座に申し込むのは抵抗がある」「どの学び方が自分に合っているかわからない」という方は、セミナーや心理講座の1日体験レッスンを受けてみるのはいかがでしょうか?
心理学や脳科学を学べる機関がセミナーや体験講座を定期的に開催しています。
料金も無料のものから数千円のものまでありますので、ご自身が興味のある分野のものをまずは探してみましょう。
セミナーや体験講座を1回受けるだけでも、心理学の概要がわかったり、どういったことを学ぶのかが見えてきます。
【メリット】
- 心理学の講座をお得に体験できる。
- 入門としての概要を知ることができる。
- 自分に合ったスクールや講座を知ることができる。
【デメリット】
- 1回だけでは知識が身につかないことがほとんど。
- 長期講座へ勧誘される場合がある。
通信講座に申し込む
働きながら通学するのは体力的にもスケジュール的にも難しいという方には、自宅で好きなときに学べる通信講座がおすすめです。
心理カウンセラーにも様々な分野や資格がありますが、今は通信講座でも取れる資格があります。試験も自宅で受けられるので、仕事の合間に集中して資格取得を目指すことができます。
また、初心者でも安心して学べるコースや、課題の添削を行ってもらえる講座もあります。費用もスクールに比べると安価なのが特徴。ただし、通信講座は理論的な部分のみの学習で、実際の心理カウンセリングの練習ができない場合がほとんどです。スクールによってはオンラインで実践的な練習ができるコースもあるので、その点にも注意して探してみましょう。
【メリット】
- 忙しい人でも無理なく学べる。
- 費用的負担が少ない。
- 通信でも取れる資格がある。
【デメリット】
- 自分で勉強時間を確保する意志が必要。
- 気軽に質問ができない。
- 理論のみの場合実践的に学べない。
大学・短大などへ通学する
心理学を本格的に学びたい方や、大学での履修が必須の資格を取りたい方は通学をおすすめします。
心理系の主要資格には下記3つがあります。
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 認定心理士
これらの資格取得には試験に合格することが必要ですが、受験資格に「指定大学または大学院で特定の科目を修了した者」とあります。
つまり、大学もしくは大学院で学ばない限り、この3つの資格は取得できません。
看護師から心理の分野にキャリアチェンジする場合は、大学もしくは大学院での勉強も視野に入れると良いでしょう。社会人向けに夜間や通信にも対応した大学院もあります。
また、資格取得は視野に入れていないが、より専門的な心理学の知識を身につけたいという方であれば心理学を学べる短大もあります。
【メリット】
- 本格的に学びたい人は専門家から専門的な知識が学べる。
- 大学・大学院で学ばないと取れない資格の取得が可能
【デメリット】
- 莫大な年数・費用がかかる。
- 学業と仕事の両立が大変。
看護師が学ぶべき心理学の分野とは?
心理学と一口に言っても、様々な分野があります。看護や医療業界で活かしたいのであれば、どの分野を学ぶかが大事です。
この記事では看護師の方に特におすすめしたい分野を紹介します。
社会心理学とは、自分の行動や心理が社会や集団からどのような影響を受けるかについて研究する分野です。
人は他者や周囲からの影響を受けます。わかりやすい例えで言うと、「行列ができている店の料理を美味しいと思い込む」「SNSでの批判に傷つく」などです。また相手を説得させたり、集団に同調するなど、「相手」との関係性から生じる行動についても学びます。
医療現場では同僚や患者さんとのコミュニケーションが欠かせません。社会心理学では集団における人間関係について学べるので、その知識が現場でのコミュニケーションに活かせるでしょう。
行動心理学とは、人間の行動を観察し、その行動を引き起こす要因を研究する分野です。
人間が意識的・無意識的に取る行動に対し、どうしてそのような行動をとるのかを分析します。さらに、分析した結果をもとに行動の改善へとつなげます。
行動心理学を学ぶことで患者さんの行動や習慣に焦点を当てて、より患者さんの立場になって考えられるようになります。
臨床心理学とは、心の問題を抱える人に対して、その原因を探り問題を軽減・解消することを研究する分野です。
患者さんの心理的な問題やストレス、精神疾患を分析し対応するための知識を習得します。
学んだ知識はうつ病などの精神疾患や発達障害がある人へのアプローチの他に、「毎日不安を感じている」「夜なかなか寝付けない」「職場に行くと動悸がする」など原因不明な心理的症状を抱える人への対処法にも活かせます。
「発達」とは人間が生まれてから大人、さらには高齢者になるまでの過程での心身の変化を指します。発達心理学とは、人間の成長を通じて心理的特性がどのように変化するのか、またその心理的特性が発達にどのように影響するのかを研究する分野です。
年代別の行動と心理を理解することは、患者さんとのコミュニケーションを円滑にするうえで効果的です。例えば、大声を出して診察を嫌がる子供や、医者の指示が聞けずに薬を拒む高齢の方など。心理的特性を理解することで、対応方法も見えてくるでしょう。
発達心理学はさらに乳幼児心理学・児童心理学・青年心理学・老年心理学と、年代によって細かく分野が分かれます。
自分が所属する科や、頻繁に接する患者さんの属性も考えながら、より細かい分野を選択するのもよいでしょう。
スカウトサービス登録はこちら3.看護師が心理カウンセラーになるには?
心理学を学ぶ方法や、看護師として役に立つ心理学の分野についてご紹介しました。
ここからは、看護師から心理カウンセラーに転向したい方に向けて心理カウンセラーになる方法をお伝えします。
心理カウンセラーとは?
心理カウンセラーとは、悩みを抱える方の心のサポートをする仕事です。心理学の知識を活かしてカウンセリングを行い、相談者さんが自分で問題に気づき、自発的に解決できるよう促します。
学校や仕事、恋愛や家庭など、相談者さんが悩みを抱える環境も、悩みの要因もさまざまです。
資格は必要か
心理カウンセラーの資格はさまざまですが、心理カウンセラーになるために資格は必要なのでしょうか?
心理カウンセラーになるために資格は必須ではありません。実際にカウンセラーの資格がなくてもカウンセラーとして活躍している人はいます。しかし、就職・転職となると資格を取得していることが必須条件となっている求人がほとんどです。実務経験がないのであれば、「しっかりした心理学の知識を身につけている」という証明のためにも資格は取得しておいたほうが良いでしょう。
資格取得をすることで次のようなメリットがあります。
- 求人で資格取得を必須にしているところが多いので、応募できる求人の幅が広がる。
- 相談者さんの信頼や安心につながる
- カウンセラーとして独立することも可能
心理カウンセラーは看護師のように資格が必須ではないため、資格を取る必要はないと思われがちですが実際は資格がないと応募できない求人がほとんどです。
知識をしっかり身につけて、今後のキャリア形成に活かすためにもぜひ資格取得を目指しましょう。
心理カウンセラーの資格は大きく分けて2つあります。
臨床心理士・公認心理師を取得する
ひとつは大学・大学院を卒業し、試験を受けて取得できる臨床心理士、公認心理師があります。
臨床心理士・公認心理師とは、いずれも心の問題や悩みを抱える相談者さんに対して、臨床心理学に基づいた知識を活かして支援や援助をする仕事です。
公認心理師 |
臨床心理士 |
|
登録者数 |
71,987人 |
41,883人 |
資格の分類 |
国家資格 |
民間資格 |
必要な学歴 |
大学卒業 |
大学院修了 |
試験の合格率 |
76.2% |
66.5% |
資格の更新 |
なし |
あり(5年毎) |
主な仕事 |
カウンセリング |
カウンセリング |
求人数(ハローワーク) |
1,391件 |
1,576件 |
臨床心理士と公認心理師の大きな違いは、資格の分類にあります。
臨床心理士が民間資格なのに対し、公認心理師は2017年施行の公認心理師法で定められた、日本初の心理に関する国家資格です。
公認心理師の登録者数は7000名以上なのに対し、臨床心理士は4000名以上と公認心理師の方が多いです。(※2024年9月現在)
公認心理師は大学卒業必須なのに対し、臨床心理士は大学院修了が必須のため取得までのハードルが高いからかもしれません。
心理系の民間資格を取得する
大学や大学院で心理学を専攻していなくても取得できる民間資格もあります。
認定試験を受けるものや、特定の講座を受けて取得できるものなど様々です。
ここでは具体的に3つ紹介します。
スカウトサービス登録はこちら4.心理カウンセラーの民間資格3選
メンタルケア心理士
メンタル心理士はメンタルケア学術会など3つの団体から認定が受けられる資格です。
医療や福祉機関で心理カウンセラーになることが想定されており、精神解剖生理学、精神医科学、カウンセリング基本技法などが試験の内容になっています。
認定団体 |
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取得条件・方法 |
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費用 |
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学習の目安 | 約4ヶ月 |
活かせる場所 | 医療、一般企業など |
詳しくはメンタルケア学術学会の公式サイトをご覧ください。
ケアストレスカウンセラー
ケアストレスカウンセラーはメンタル疾患の疑いのある方への対応や、メンタル疾患の予防など心のケアができる人材を目指した資格です。
通信講座の受講などは不要で試験に合格すれば取得可能なので、すぐに資格を取得したい人におすすめです。
認定団体 | 職業技能振興会 |
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取得条件・方法 |
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費用 | 試験受験料 10,000円 |
学習の目安 | 約3〜4ヶ月 |
活かせる場所 | 福祉、一般企業など |
詳しくは一般財団法人職業技能振興会の公式サイトをご覧ください。
福祉心理カウンセラー
福祉心理カウンセラーは、心理学だけではなく、福祉の現場で必要な知識も習得します。病気を治療中の方や、高齢者などに対して、福祉の知識と心理学の知識の両方を活かしながらサポートします。
認定団体 | 日本メディカル心理セラピー協会 |
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取得条件・方法 | ・認定試験に合格すること(正答率70%) |
費用 | 試験受験料 10,000円 |
学習の目安 | 約2ヶ月 |
活かせる場所 | 福祉、医療、一般企業など |
詳しくは日本メディカル心理セラピー協会の公式サイトをご覧ください。
5.まとめ
心理学を学ぶことは、看護師の仕事をするうえでもとても役に立ちます。
患者さんの心のケアだけでなく、一緒に働く仲間とのコミュニケーションや、自分のメンタルケアにも活かすことができます。また、これから心理カウンセラーを目指す方でも、看護師として患者さんに寄り添ってきた経験を活かせるはずです。
看護師と同じように、心のケアができる心理カウンセラーのニーズは年々高まってきており、人々の生活の中で非常に重要な存在となっています。
大学院に通うことが難しくても、通信講座や認定資格を受けるだけで取得できる資格もありますので、この機会にぜひ心理学を学んでみてください。
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