作業療法士の退職金はどれくらい?相場や計算方法について分かりやすく解説
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「作業療法士の退職金ってどれくらい貰えるの?」
「うちの職場は退職金ちゃんとでるのかな…」
このような疑問や悩みはありませんか?特に将来に不安を感じる方にとって気になるのが、退職金の問題だと思います。
今回は作業療法士の退職金について、厚労省や東京都産業労務局の公的データを用いて分かりやすく解説します。退職金制度の概要をおさらいしながら、医療福祉業界における退職金事情を見ていきましょう。
自身や家族の将来について考え退職金が気になる、という方の働き方の参考となれば幸いです。
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目次
作業療法士の退職金の相場はどれくらい?
作業療法士の退職金に関してだけまとめた公的なデータは存在しません。東京都産業労務局が公表している「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」の「モデル退職金(医療・福祉)」のデータを参考に、退職金の相場を紹介します。
最終学歴 | 勤続年数 | 自己都合退職 | 会社都合退職 |
---|---|---|---|
高専・短大卒 | 勤続3年 | 147,000円 | 191,000円 |
勤続10年 | 585,000円 | 666,000円 | |
勤続30年 | 2,386,000円 | 2,675,000円 | |
大卒 | 勤続3年 | 150,000円 | 202,000円 |
勤続10年 | 651,000円 | 725,000円 | |
勤続30年 | 2,626,000円 | 2,794,000円 |
出典:東京都産業労務局「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」
退職金の金額を決定付ける要因は、最終学歴、勤続年数、退職事由の3つです。
最終学歴は、退職金の計算の基となる基本給に関わります。多くの場合初任給の時点で、大卒と高専・短大卒で基本給の差があり、大卒の方が基本給が高いです。よって基本給が高い大卒の方が退職金を多くもらえます。
勤続年数によって金額が変わるのは想像しやすいかと思います。同じ職場で長く働けば働くほど、退職金を多く貰えます。
退職事由は自己都合退職と会社都合退職に分かれます。自己都合退職は、労働者の意思で会社に退職を申し出ることです。会社都合退職はその反対で、人員整理の為のリストラ等を指します。定年退職の場合は、会社都合退職の金額が支払われるケースが多いです。
※注意点として、上記は都内の従業員数が10~299人の医療機関・福祉施設のデータです。規模の大きい総合病院や国公立病院は含まれていません。あくまで参考程度の数字として見るのが良いでしょう。
2.作業療法士の退職金が高い職場
作業療法士の退職金が高い職場は、ずばり国公立の病院です。
作業療法士が国立病院で勤務する場合、2015年4月までは準公務員としての待遇でした。制度が変わったものの、当時と同じ水準で退職金を支給している病院が多く、退職金は高い傾向が続いています。
公立病院で勤務する場合は、地方公務員としての待遇になるので、国家公務員退職手当法に基づき退職金が支給されます。地方自治体によって金額の差はありますが、比較的高い退職金となります。
私立病院・民間の医療機関で退職金が高い職場を探す場合は以下のポイントに注意してください。
- 医療機関の規模が大きい(病床数や職員数など)
- 基本給の設定が高い
- 昇給額が高い(昇給率が高い)
規模の大きな医療機関の方が、基本給が高い傾向にあり、退職金も高くなる傾向にあります。そもそも基本給が高く設定されている医療機関でも、退職金は高くなるでしょう。
昇給率にも注目が必要です。初任給や、転職した際の基本給が高くても、そこから昇給していかないのでは、退職金の金額を考えた場合プラスではありません。過去の昇給率や、その医療機関が設定している昇給率も考慮に入れて、働く医療機関を決めることが重要となります。
3.そもそも退職金制度とは?概要をおさらい
退職金制度について改めて確認しましょう。意外と知られていない部分があります。
退職金制度とは、一定の年数以上勤務した労働者を対象に、その退職時に企業が退職金を支給する制度です。正式名称は「退職給付制度」といいます。
実は、法律上必ず退職金制度を導入する義務はありません。退職金制度を導入していない企業も世の中に沢山あります。
義務化されていないのであれば、なぜ退職金制度を導入するのでしょうか?理由は以下の通りです。
- 労働者のモチベーション維持
- 転職防止
- 企業イメージアップ
退職金の支給は、労働者にとってその企業で働き続けるモチベーションとなります。企業では退職金制度に関して、就業規則等で明記しており、その計算方法も開示するのが一般的です。自身の昇給、長期の勤続によって退職金がアップすることから、従業員のモチベーションを維持する効果と転職防止が期待できます。
企業のイメージアップという側面もあります。退職金を支払う=従業員に手厚い、というプラスなイメージを与えることができます。退職金を払えるだけ儲かっているとも捉えられます。より優秀な人材を集めるという採用面の効果が期待できます。
医療福祉業界の退職金制度の導入率は?
厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」によると、医療福祉業界の退職金制度の導入率は75.5%です。全産業の導入率74.9%とほぼ同じ水準です。
75%と聞くと多いように感じますが、裏を返すと4人に1人は退職金がありません。退職金を希望する方は、まずは就業規則等を確認し、退職金の支給の有無を確認するようにしましょう。
4.退職金制度の種類は主に4つ
退職金制度には、主に4つの種類があります。それぞれの特徴とメリットデメリットを見ていきましょう。
- 退職一時金制度
- 退職金共済制度
- 確定給付企業年金制度(DB)
- 企業型確定拠出年金制度(DC)
退職一時金制度は、もっとも想像しやすい退職金制度かと思います。企業が毎月退職金を積み立て、労働者が退職するタイミングで、退職金として支給する制度です。
退職金を受け取る側から見たメリットは、税負担が少なくなる可能性が高いことです。退職金は一般的な所得ではなく「退職所得」として扱われ、一定の控除額が設定されています。控除分に関しては非課税となりますので、税負担が軽くなる可能性が高い受け取り方法です。デメリットは受取総額が年金型と比較すると少なくなる可能性があることでしょう。
退職金共済制度とは、退職金を社外積み立てする制度です。社外積み立てをする先は、「中小企業退職金共済」や「特定退職金共済」となります。この2つの組織に関しては、運営機関が違うだけで、提供するサービスはほぼ同じと考えて問題ありません。
退職金共済制度を利用するメリットは社外積み立てであるという点です。退職金の原資となる部分を社外で確保しますので、万が一努めている会社が倒産をした場合でも、退職金は支払われます。また、それぞれの共済に加入するのが労働者本人となるため、共催の提供する福利厚生を利用することができるようになるのもメリットといえるでしょう。デメリットは、短期間の就労期間では退職金が発生しないケースがあることや、加入できるのが労働者に限られており、役員等は加入できない点です。
確定給付企業年金制度は「DB」とも呼ばれており、近年利用する企業が増えていると言われている退職金制度です。会社が信託銀行などと信託契約を結び、退職金の掛け金の運用責任を負う制度となります。確定の文字通り、給付される退職金は確定しており、仮に運用で損失が出た場合は、会社が補填することで退職金の金額を下げずに給付が受けられます。
確定給付企業年金制度のメリットは、上記の通り受け取る退職金が確定しており、運用成績に左右されないことです。また年金制度の文字がある通り、希望すれば年金型の支給が可能となり、退職後も毎月収入が得られる制度になっています。デメリットは自分の意思での運用ができないことでしょう。大きなリターンが期待できない分、給付が確定しているというのが特徴です。
最後に企業型確定拠出年金制度を紹介します。「DC」とも呼ばれるこの制度は、「DB」とは違い、加入者(労働者)本人が資産を運用する退職金制度です。掛け金は会社から支給され、労働者は毎月その掛け金を自分の意思で運用します。
企業型確定拠出年金制度のメリットは自身の運用により退職金を増やすことができるという点、デメリットは反対に退職金が減ってしまう可能性がある点です。同じ運用をするのであれば自分の力で運用したいという方には合っている制度といえるでしょう。
医療福祉業界の退職金制度はどれが多い?
上で退職金制度に関して解説しましたが、退職金は大きく分けて2つに分類できます。それが一時金制度と年金制度です。
一時金は退職時に一括で退職金を受け取る方法です。上で紹介した中では、「退職一時金制度」や「退職金共済制度」が該当します。年金制度は毎月定期的に支給されるタイプの制度であり、上で紹介した「DC」や「DB」が当てはまります。
では、医療福祉業界における退職金制度はどうなっているのかを確認していきましょう。
一時金制度 | 年金制度 | 両制度併用 | |
---|---|---|---|
医療福祉業界 | 86.9% | 1.7% | 11.4% |
圧倒的に一時金制度を導入しているケースが多いことが分かります。
5.退職金の計算方法は主に4つ
作業療法士の方が受け取るであろう退職金は、退職一時金であるケースが多いことが分かりました。では、ここからは実際にどのくらいの退職金を受け取ることができるのかという点に注目して解説していきます。
まずは、退職金の計算方法に関して紹介していきます。退職金の計算方法は主に4つです。
- 定額制
- 基本給連動型
- ポイント制
- 別テーブル制
※退職金の計算方法に関しても企業が独自に設定できるため、ここで紹介する方法がすべてではないという点はご理解ください。
定額制とは、あらかじめ勤務年数等で支給される金額が決められている支給方法です。勤務年数で定められている場合、退職する方の役職や学歴、仕事上の成果とは関係なく同じ勤務年数であれば同じ金額が支給されます。
基本給連動性は、もっともポピュラーな支給方法です。退職時の基本給と勤務年数、さらに設定された係数を掛け合わせることで支給額が決定します。基本給が高いほど支給額が高くなりますので、初任給が高くなる高学歴の方や、勤務年数の長い方ほど高額の退職金を受け取ることができます。自己都合退職の場合、掛けられる係数の値が低くなり、支給される退職金がやや安くなるケースが多い支給法です。
ポイント制は、従業員に関するデータをポイント化し、そのポイントから退職金が決定する方式です。基本給・役職・勤務年数・退職理由などがポイント化されますので、定額制とは違い、同じ勤務年数でも退職金額に差が出ます。また、基本給連動性のように、学歴や勤務年数の影響が少ない方法でもあり、近年導入する企業が増えていると言われています。
別テーブル制は、勤務年数に応じた退職基準額と役職による係数、退職理由などがテーブル(表)にまとめられており、このテーブルを参考に退職金を決める方法です。基本給はほぼ影響しない算出方法です。
医療福祉業界の退職金の計算方法は?
医療福祉業界でどの計算方法が採用されているのかを調べたデータはありません。ただ一般的に基本給連動型が多いと言われています。基本給連動型の退職金の場合、重要なのは基本給と勤続年数です。退職金を高くするためには、昇給率の高い医療機関・福祉施設で長く働き続けることがポイントと考えられます。
基本給連動型の退職金を計算方法から、作業療法士のおおよその退職金額を計算してみましょう。作業療法士として同じ医療機関に35年間勤め、定年時に退職金を受け取るとします。このケースで退職時の基本給が35万円、会社都合退職の係数が1.0とした場合、退職金は1,225万円となります。
計算式:350,000(円)×35(年)×1.0=1,225,000(円)
6.まとめ
作業療法士の退職金の相場を、東京都産業労務局が公表するモデル退職金のデータを用いて試算しました。退職金の金額を決める要因は最終学歴、勤続年数、退職事由の3つでした。
作業療法士の退職金が高い職場は、国公立病院が挙げられます。民間の医療機関の場合は、より規模が大きく・基本給のスタートが高く・昇給率が高い職場を選ぶのがポイントです。
後半では退職金制度の概要に関しておさらいし、医療福祉業界における退職金制度の実態を紹介しました。医療福祉業界では、一時金制度の退職金制度が多く導入されていて、計算法は一般的に基本給連動型が多いと言われています。
退職金制度の導入は法律で義務付けられておらず、計算方法も企業の自由です。転職や就職の際は、退職金の支給の有無、さらに計算方法に関してもしっかりチェックしましょう。
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