労基へ相談可能な内容とは?労基へ相談する場合のメリットとデメリットについて解説
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労働に関する問題がある時、どのような機関へ相談したら良いのでしょうか。その問題が労働基準法に違反するような問題であれば、労働基準監督署への相談が適しています。ただし労働に関わる問題は多岐にわたるため、労基に相談できる問題がどのような内容なのかはわかりにくいですよね。この記事では、労基へ相談できる具体的な内容と、相談するメリット・デメリットを解説します。労働問題の解決に向けて参考にしてください。
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目次
1.労基(労働基準監督署)とは?
労基(労働基準監督署)とは、労働者を守るための機関です。労働基準法や労働安全衛生法などの労働に関する法律に基づいて、労働条件や職場環境などを良くするために活動しています。
労働時間や賃金などの確保に向けた活動のほか、労災保険の給付などを請け負っているのも労基です。職場の安全と労働者の健康は労基によって守られています。労基に相談できる内容は、具体的に次のようなものがあります。
- 賃金について
- 休憩時間について
- 有給休暇の取得について
- 過労死ラインを超えるほどの残業について
- 雇用契約について
- 労災の申請について
もしも企業が労働基準法を違反していたり、最低賃金法を守っていなかったりした場合には、労基が企業に対して指導をおこないます。是正勧告や立ち入り調査、指導などをおこなっても改善されない場合にはその企業を送検し、刑事罰を受けさせるように働きかけます。労基は労働に関する警察署のようなものだと考えてみてください。
一方で、労働基準法を違反していない場合には、労基に相談しても解決しない場合があります。パワハラなどの労働基準法に抵触しないような相談事については、労基ではなく労働局へ相談しましょう。
スカウトサービス登録はこちら2.労基に相談するメリット・デメリット
労基に相談することで問題を解決できる可能性もありますが、一方で解決につながらないケースもあります。それは労基の対応できる範囲や効力などに決まりがあるからです。
労基に相談すればすべて解決するわけではありません。ここでは、労基に相談するメリットとデメリットをそれぞれ具体的に説明していきます。
相談するメリット
企業が労働基準法に違反するような行為をおこなっていた場合、労基に相談することで、それらを改善させられる可能性があります。 労基は国が運営している機関のため、相談は無料です。困っていることがある時には積極的に労基へ相談してみましょう。
相談の結果、労働基準法に違反している可能性があると判断されると、労基は企業に対して立ち入り調査をおこないます。この調査は事前通告なしでおこなうことが可能です。そのため、企業にあらかじめ証拠を隠されてしまう可能性を減らすことができます。
しかし、自分が相談したことによって労基が立ち入り調査をおこなうとしたら、会社内で自分の立場が危うくなるのではないかと不安になりますよね。ですが、大丈夫です。相談の際に「会社に自分が相談したと教えないでほしい」とお願いしておくことで、会社に伝わらないよう対応してもらえます。匿名での相談も可能です。安心して相談してください。
調査をおこなった結果、労働基準法に違反している事実があれば、労基はその企業に対して是正のための指導や勧告をおこなえます。勧告を受けて、企業の行為が改善していく可能性があるのです。
相談するデメリット
労基がおこなう是正のための指導や勧告は、強制力のあるような命令ではありません。たとえ指導や勧告をしたとしても、企業がそれを無視してしまえば違法状態のままになってしまう恐れがあります。
また、労基は証拠がなければ動いてくれません。労基に相談し、指導してもらうためには、労働基準法に違反しているという明確な証拠が必要です。証拠を集めることは簡単ではありません。時間もかかりますし、必要な書類が手元に無いこともあります。日頃から仕事に関する記録をつけることや、契約書などを紛失しないようにしておくことが大切です。
さらに労基への相談件数に比べて、労基の数が足りていないという問題もあります。そのため、相談内容によって対応の優先度が変わってきます。優先度が高い相談は、命にかかわるような悪質な問題です。比較的軽い違反については後回しにされることが多いことを覚えておきましょう。
どうしても早く対応してもらいたい時には、労基以外の機関に相談することも考えてください。
スカウトサービス登録はこちら3.労基署で扱う相談内容5選
労基で扱う主な相談内容について、それぞれの例を紹介します。労基へ相談する時の参考にしてください。労基は労働者側、雇用主側の双方から相談を受け付けています。相談するか判断に迷う場合にも、とりあえず相談してみると良いでしょう。
採用要件・労働条件に関する相
採用や労働条件に関する相談の具体例を見てみます。
- 求人票に記載されていた内容が、労働契約の内容と違っていた
- 求人票のほかに、労働契約について書面で渡す必要があるのか
- 労働者と雇用主の双方が最低賃金未満の給与で良いと合意している状況でも、最低賃金以上の給与を払わなければいけないのか
- 期間の定めがない労働者を有期労働契約に変えても良いのか
- 労働者が事故を起こした場合、社用車の修理費を一部定額で請求すると就業規則に書いても良いのか
解雇に関する相談
解雇に関する相談には次のようなものがあります。
- 急に今日付けで解雇を言い渡された
- 雇用主が労働者に対し、自由に退職を求めても良いのか
- ミスが多い労働者を解雇できるか
- 「仕事がないため来なくていい」と言われたが、解雇に当たるのか
- 賃金支払い日に「月末で辞めてくれ」と言われた場合、予告手当などはどうなるのか
賃金/給料に関する相談
賃金や給与に関する相談は次のようなものがあります。
- 賃金の支払い日が土曜の場合、前倒して金曜日に払ってもらえるか
- 一方的に賃金を下げられたが、やむを得ないのか
- 労働者が起こした事故による修理代について、賃金から差し引いても良いのか
- 会社の都合で休業する場合、従業員の給与はどうしたら良いのか
- 台風の影響で休業としたが、その日は無給にしても良いのか
労働時間・休日数に関する相談
労働時間や休日についての相談は次のようなものがあります。
- 労働時間が長いわりに休憩がほとんど取れない。休憩についての決まりはどうなっているのか
- 年間カレンダーで決められた休日が会社の都合で頻繁に振り替えられる
- 週40時間制とはどういうことなのか
- 自宅待機をするように命じた時には、その待機時間は労働時間になるのか
- 36協定を結ぶ労働者の代表を会社が勝手に選ぶことは違法か
退職に関する相談
退職に関する相談は次のようなものがあります。
- 会社に辞めたいと告げて、即日退職することは可能か
- 会社側から辞めてほしいと言われたのに、退職届を出すように強要された
- 退職届を上司が受け取ってくれない場合、退職できないのか
- 退職金がなかなか支払われない場合、どうしたら良いのか
- 退職金の規定が入社時から今までの間に変更になっていて、退職金が少なくなっている。問題ないのか
このような相談に対して、労基はアドバイスや調査などの対応をしてくれます。
スカウトサービス登録はこちら4.労働基準監督署に相談・通報する際の流れ
実際に労基へ相談する流れは以下の通りです。
また、厚生労働省が委託事業としておこなっているものはこちらです。それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。
最寄りの労働基準監督署に相談に行く
労働基準監督署は各地にあります。各都道府県内に複数設置されていますので、最寄りの労働基準監督署へ相談するようにしましょう。相談できる時間は平日の8:30~17:15です。所在地については厚生労働省のホームページから都道府県ごとに検索できますので探してみてください。
また、労働に関する相談は他の方法でも可能です。 厚生労働省がおこなっている事業は以下のようなものがあります。
- 総合労働相談センター
- 労働基準関係情報メール窓口
- 長時間の荷待ちに関する情報メール窓口
労基への相談は平日の日中しかおこなえませんが、メールであれば24時間相談可能です。ただしメール相談は、情報提供程度にとどまる可能性もあります。より強く対応を促したい場合には、直接相談することが望ましいでしょう。
また、厚生労働省が委託事業としておこなっているものはこちらです。
- 労働条件相談ほっとライン
- 労働基準監督署チャットボット
- 労働保険適用・徴収、労災保険相談ダイヤル
- 労働保険相談チャット
- 働く人の「こころの耳」相談
必要に応じて適した方法を選んで相談してください。
相談する時には相談内容をしっかりまとめ、可能な限り証拠を集めて持参しましょう。労働基準法に違反していると認められなければ、労基は調査や指導のために動いてくれません。個人の主観だけでは証拠になりませんので注意してください。
労働基準監督署の職員からアドバイスを受ける
相談内容について、労基の職員から労働基準法にのっとったアドバイスを受けます。 自分の置かれている状況や会社の対応が労働基準法に違反しているかどうか、自分では判断ができない場合にも労基へ相談してみると良いでしょう。労基で対応できるものについては対応してもらえますし、対応できないものに対しては適切な相談窓口を教えてもらえます。
労基の仕事内容は、労働者や雇用主の相談を受け、企業に改善を促すことです。 たとえば労働者が会社とトラブルになっている時、労働問題の知識がある第三者に間に入って欲しいと思うことがあります。可能であれば、労基に仲介してもらいたいと思うこともあるでしょう。
しかし労基にできることは相談と是正指導のみです。会社と労働者の間に入り、仲介するような活動はおこなっていません。仲介してもらいたい場合には、別の機関への相談も視野に入れてください。
必要に応じて会社に対して立ち入り調査・是正勧告を実行
労働基準法に違反した状況である場合、労基は以下の行動を取る可能性があります。
- 調査
- 是正勧告
- 逮捕
労基には労働基準監督官という専門の職員が在籍しており、臨検監督や司法警察官の権限を持っています。裁判所の許可を受けずに立ち入り調査をおこない、必要があれば逮捕や強制的な調査をおこなうことができるのです。
労基にしっかりと対応してもらいたい場合は、相談ではなく「申告」をすると良いでしょう。相談だけでは「情報提供」として扱われてしまう可能性があります。しかし申告では、労働基準法に違反していることを告発し、対応を求めることが可能です。
労基には沢山の相談が寄せられており、後回しにされたり対応してもらえなかったりということも少なくありません。相談をうやむやにされないためにも、重要な問題については申告することが大切です。
スカウトサービス登録はこちら5.労基へ相談する前に準備するもの
労基へ相談する時には、やみくもに相談するのではなく、労働基準法に違反している証拠や相談内容をまとめてから相談するようにしましょう。 労基は労働基準法に違反していなければ対応できません。対応を求めるためには、労働基準法に違反している証拠が必要です。
では、具体的にどのようなものが証拠として扱われるのでしょうか。それぞれの状況に応じて具体的に見ていきましょう。
会社の違反内容を説明する資料・証拠
客観的に見て、労働基準法に違反しているとわかるものは証拠として使用できます。賃金に関わるもの、労働条件に関わるものの証拠は、それぞれ次のようなものが考えられます。
賃金に関するもの
賃金に関する証拠には、以下のようなものです。
- 労働条件通知書
- 雇用契約書
- 給与明細
- 源泉徴収票
ポイントとしては、本来支払われるはずの給与額と、実際に支払われた給与額がわかる資料を合わせて提出することが大切です。両方を比較することで、給与や手当の未払いがあることを証明できます。
また、残業代に関するものついては以下のような資料が証拠となります。
- シフト表
- タイムカード
- 日報
- パソコンの使用履歴
- メールを送受信した日時
- 手書きの勤務記録
残業代に関しては、違法なおこないをしている企業の場合、タイムカードなどの記録に残らないこともあります。そのため、実際に働いていたことがわかる記録を用意することが大切です。
タイムカードやシフト表については会社側が勝手に書き換えてしまう可能性もあるため、手書きの勤怠記録がおすすめです。毎日1分単位で勤怠記録をつけておくことで、より強い証拠として採用されます。具体的な業務内容も記載しておくと、なお良いでしょう。
逆に大雑把な勤怠記録では、証拠として認められない可能性もあります。正確な残業時間を判断できないからです。
以外に思うかもしれませんが、パソコンやアプリを使った勤怠記録も証拠にならない可能性があります。あとから簡単にでたらめな記録を作成できるようなものでは、信ぴょう性に欠けるのです。
労働条件に関するもの
不当解雇や有給休暇の取得についてなど、労働条件に関する証拠は以下のようなものになります。
- 雇用契約書
- 就業規則
- 36協定書
- 解雇通知書
- 勤怠記録
- ICレコーダーなどによる音声記録
こちらも規則や規定と勤務実態を照らし合わせることで違法かどうかを判断できます。 解雇については、労働基準法で定めた条件を満たしていなければ違法です。条件がわかりにくい場合、労基職員は労働基準法に精通していますので、実際にどのような経緯で解雇を言い渡されたのか証明し判断をあおぎましょう。
上司のパワハラ・モラハラを示す資料・証拠
パワハラなどについては、相手の言動がわかるような資料が証拠として有効です。 ただしパワハラなどについては労働基準法で定められていないため、実際には労基の管轄外です。相談する時には、労基や労働局内にある総合労働相談コーナーを利用するようにしましょう。
証拠になり得るものは具体的に以下の通りです。
- メール
- ICレコーダーなどで録音した音声
- スマホなどで撮影した写真や動画
- 同僚などの証言
- 怪我をした場合などの診断書
音声や動画などわかりやすい証拠がなければ、パワハラを受けた日時や内容を日記などに残しておきましょう。パワハラが起きた背景を説明するため、就業規則など労働環境のわかる資料も一緒に提出すると効果的です。
説明内容を時系列に整理した資料
労基に対応してもらうためには、その問題が起こった背景や現在に至るまでの経緯がわかるようにしておきましょう。問題がどのようなきっかけで始まり、これまでにどのような頻度で問題が起きてきたのかがわかると、労基側も状況を理解しやすくなります。
では、相談内容をどうやって時系列にまとめたら良いでしょうか。 具体的なポイントは以下の通りです。
- 登場人物を先にまとめておく
- 事実のみを箇条書きで書く(主観や推測をはさまないようにする)
- 「いつ・どこで・だれが・だれに」を明確にする
問題に対してすでに会社側と協議をしている場合には、その経緯や時期なども合わせて説明できるようにしてください。現在の状況が理解できるようになっていることがポイントです。
スカウトサービス登録はこちら6.労基以外の相談先について
労働に関する問題を取り扱っているのは労基だけではありません。 労基と同じように厚生労働省が管轄している機関に、労働局や労働委員会があります。また場合によっては、民間の相談窓口として弁護士などへの相談も視野に入れると良いでしょう。
それぞれの特徴は次の通りです。
労働局(都道府県管轄)
各都道府県内には労働局が設置されています。 労働局は労働に関する組織で、労基やハローワークなどの上部組織です。そのため労基よりも問題の取り扱い範囲が広く、労基では対応できない内容も相談できます。
労働局の主な役割は以下の通りです。
- 労働者の権利を守る
- 労働条件を改善する
- 労災を防止する
- 労働者の能力を向上させる
- 雇用を安定させる
労働局内にも総合労働相談センターが設置されています。 労基で相談できる内容のほか、セクハラやパワハラ問題、男女雇用機会均等法についての相談も可能です。労基で対応できない問題について労働局では、助言のほかに解決へ向けたサポートもしています。
労災について会社が不適切な処理をおこなっていた場合にも、労働局へ相談すると良いでしょう。
労働局も労基同様に行政機関であるため、無料で相談可能です。労働問題に関して制限なく相談でき、労働局で対応できないものについては必要に応じて適切な機関を紹介してもらえます。 労働局の所在地や問い合わせ先は厚生労働省のホームページから検索できます。
労働委員会
労働委員会とは、労働者と雇用主との争いを公正公平に解決するための行政機関です。国に設置された中央労働委員会と、各都道府県に設置された都道府県労働委員会があります。 労働委員会を組織しているのは以下のような委員です。
- 公益を代表する公益委員(社労士や弁護士、公認会計士等)
- 労働者を代表する労働者委員(労働組合の役員等)
- 使用者を代表する使用者委員(経営者団体の役員等)
それぞれの委員が同数集まって組織されているのが労働委員会です。それぞれの立場から的確なアドバイスをもらうことができます。 具体的には、労働者と雇用主とのトラブルを以下のような方法で解決に導きます。
- 労働争議の調整
- 不当労働行為の審査
- 労働組合の資格審査
行政組織のため、労働委員会への相談も無料です。相談できる内容は次の通りです。
- 人事や経営に関する問題
- 賃金に関する問題
- 労働条件などに関する問題
- 職場の人間関係についての問題
当事者同士の話し合いで問題を解決できなかった時には、労働委員会が間に入る「あっせん」というものを利用することができます。
あっせんとは、公平で中立な立場のあっせん員が、問題解決に向けて迅速な対応をするものです。ただし、当事者同士の意向を尊重しており、行動の強制はしていません。他の機関などで解決に向けて動き出している場合には、あっせんを受けられない可能性もあります。
弁護士
有料にはなりますが、労働に関する法的な問題は弁護士への相談も可能です。 労基や労働局、労働委員会はそれぞれ対応可能な範囲が限られていました。しかし弁護士であれば、相談内容に制限はなく、どのような問題でも対応してもらえます。
悪質な問題に対しては民事訴訟などの対応もできますし、弁護士が代理人として対応することで、自分自身が直接会社と交渉する必要もなくなります。 労働問題はさまざまな条件が重なりやすいため、対応する法律も多岐にわたります。法律のプロである弁護士であれば、状況に合わせて適切な対応が可能です。
また、市区町村などが法律相談をおこなっている場合もあります。そのような相談会や法テラスであれば、相談料は無料です。弁護士事務所などでも初回相談を無料でおこなっていることがありますので、そういったものを利用しても良いでしょう。
スカウトサービス登録はこちら7.まとめ
労基は労働基準法に関する問題を取り扱っています。労働基準法に違反している問題については、労基へ相談すると良いでしょう。労基は日本全国に複数設置されています。問題が起こった場合には、最寄りの労基へ相談してください。
相談の際には、労働基準法に違反していることがわかる資料や証拠が必要です。証拠がない場合には労基も動けません。些細なことでも良いので、関係ありそうな証拠を提出してください。
また労基で対応できない問題であっても、労働局や労働委員会、弁護士などに相談することが可能です。さまざまな機関を利用して、問題解決へ導きましょう。
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