看護計画の正しい書き方を徹底解説!各項目のポイントも紹介
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看護師になる勉強をしている方や、看護師として働き始めて日が浅い方が、頭を悩ますことが多いのが看護計画です。看護計画とは、対象となる患者にどのような看護を行っていくかを示した書類であり、看護をする上で重要な書類でもあります。
この記事では、看護計画の内容や、各項目の書き方、また書く際の注意点に関して詳しく解説していきます。
そもそもなぜ看護計画が必要なのかという点も含めて解説していきますので、看護計画の作成に頭を抱えている方は是非参考にしてください。
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1.看護計画とは
看護計画とは、看護師が毎日の業務の中で感じた、患者の抱える看護における問題点を抽出し、その問題点の解決を図るために必要となる書類です。看護計画に関しては看護師が参考にするのはもちろん、患者本人やその家族にも提示し、了承を得る必要がある書類ですので、丁寧にかつ正確に書くことが求められます。
患者は何かしら問題を抱えているのが当然です。問題があるから療養を行っています。その問題の中には、看護師として対応できる看護分野の問題も含まれるケースも少なくありません。こうした問題を看護計画に記すことで、今後の看護方針を明確にできます。さらに患者が入院している場合、同じ科の看護師同士で情報共有することで、誰が担当しても方針のブレない看護ケアが可能となります。
看護計画に関しては、看護師の養成施設においても指導がなされますが、ポイントは同じ内容を書くケースが非常に少ないということでしょう。例え同じ病状、症例の患者がいても、患者の年齢や性別、さらに持つ問題点が全く同じというケースはありません。それぞれのケースにおいて、柔軟に対応する必要があります。
そのため、看護計画を正確に立てられるかどうかは、経験による部分も大きく影響するでしょう。とはいえ、経験が浅いからと言って、誤った計画を立てるわけにはいきません。場合によっては患者の病状に直結する可能性があるのが看護計画ですので、できるだけ正しく立てられるように、知識を身に着けておくことが重要です。
スカウトサービス登録はこちら2.看護計画に書く項目一覧
看護計画に書く項目には決まりがあります。まずは、どのような流れで看護計画を立てて行くのかを簡単に説明していきましょう。
看護計画とは、患者が持つ看護に関する問題点を抽出し、その問題を解決するために作成するものです。そのため何より看護に関する問題をまずは抽出することが重要です。看護に関する問題を抽出したら、その問題を解決し、最終的にどのような状況にするのかという目標を決定します。
看護に関する問題の客観的な情報や、主観的な情報を端的にまとめ、問題の原因を探り、その問題解決のための計画を立てるというのが主な流れです。看護計画に記載する項目の一覧と、書く際のポイントなどを挙げていきましょう。
看護問題
看護計画でもっとも重要になるのが看護問題の抽出、アセスメントです。看護における問題があるからこそ看護計画が必要なわけで、ここを間違ってしまうと看護計画自体が間違ってしまいます。看護問題は看護診断と呼ばれることもありますが、内容は同じです。抽出すべきポイントは主に3つ考えられます。
- 現在患者が抱えている問題
- 今後患者が抱えることになり得る問題
- 現状見られる良い傾向を続けていくための問題
患者が現在抱えている問題というのがもっとも分かりやすい問題といえるかもしれません。看護をする中で、気になるポイントを挙げる形が一般的です。日頃からしっかり患者を観察し、患者とコミュニケーションを取っていれば、自然に情報が得られる問題です。
例えば、睡眠不足であったり、食欲不振であったり、比較的わかりやすい問題が中心になるかと思います。
今後患者が抱える可能性がある問題とは、現状では露わになっていないものの、このままの状態が続くと発生するリスクが高い問題をピックアップします。こういった問題は実際に目に見えない問題が多く、患者自身も認識していない問題も含まれますので、より細かな観察が必要です。看護師としての注意力や経験が大きく影響をする問題といえるでしょう。
最後は解決すべき問題ではありませんが、特に患者に良い傾向がみられる場合に看護問題として取り上げるケースです。現在の患者の状況から、このままその状況を続けていけば、良化が早まる、見込めると判断できた場合に看護問題に挙げます。患者の退院後も含めた今後において、よりプラスになるようにできることがあれば看護問題として取り扱うこととなります。
看護問題の抽出は、偏った情報で作成しないように心がけることが重要です。特に注目すべきは、患者による主観的な情報と、看護のデータから得られる客観的な情報を合わせて考えることです。
仮に患者が寝つきが悪いと言っていても、看護データから大きな問題が発生していない場合は、より詳細に患者から情報を聞き、看護問題として取り上げるかどうかを判断します。また、こうした患者の言葉を担当医に伝え、看護上ではなく、治療上の問題がないかどうかを確認する必要もあるでしょう。
反対に客観的データから、患者の状態を看護師が決めつけてしまうのも誤りです。看護データで気になる点があれば、必ず患者に直接話を聞き、患者がどう感じているのかも踏まえた上で看護問題として取り上げるかどうかを決定するのが重要になります。
看護問題に関しては、こうした内容面もさることながら、書き方にも注意が必要です。看護問題の書き方にもいくつかのパターンがあります。使用されることが多いのは、「NANDA-I」の看護診断です。
NANDA-Iとは、「北米看護診断協会(the North American Nursing Diagnosis Association/通称:NANDA)」が提唱する看護診断方法で、最後の「I」は「international」を意味しています。世界的に広く活用されている看護診断の方法であり、この方法で指定されている書き方で看護問題を記入する方法です。
こうした統一の規格があるのは、看護計画を誰が見ても瞬時に正しく判断できるためです。そのため、医療機関によって、看護問題の書き方に関してはルールがあります。そのルールに沿って記載することが重要といえます。
看護目標
看護目標とは、提示した看護問題に対し、計画的に看護を行うことで、患者がどのような状態となることを目指すのかという点を掲げる項目です。
看護目標を立てる場合のポイントもいくつか挙げられますので確認しておきましょう。
- 具体的な数値などを用いて設定する
- 無理な設定はしない
- 患者目線で記入する
看護目標に関しては、具体的に目標を設定するのが重要です。看護師以外の第三者が見ても、どのような状態になることを目標としているのかがハッキリ分かるように書かなければいけません。
「ある程度」、「一定時間」、「ほどほどに」などといった抽象的な表現はNGです。時間にしても距離にしても、できるだけ数値化して目標として掲げる必要があります。
〇看護目標として好ましくない記入例
- ある程度自立歩行できる距離を伸ばす
- 一定時間車いすで生活できるようにする
- ほどほどに食事の量が増えることを目標にする
〇看護目標として好ましい表現例
- 30m自立歩行できるようになる
- 1日30分車いすで生活できるようになる
- 1日1400kcalを無理なく摂取できるようになる
看護計画は何も看護師間の連絡事項として使われるだけではありません。患者本人や、そのご家族などに、今後の看護方針として定時・説明する必要があります。そのため看護に関する知識がない方でも、一目見てわかるように具体的な目標を設定しましょう。
看護目標に関しては、無理な設定をしないことも重要です。誰が見てもできないような目標を設定してしまうと、そもそも看護計画が立てられません。看護師が対応できる看護業務の中で、目指せる目標を設定し、その目標をクリアすることが重要です。
また可能であれば、短期的な目標と、長期的な目標を分けて書くことが望ましいです。看護目標が長期的なもののみとなると、達成までに時間がかかってしまいます。時間がかかる中で患者の状況が変化すれば、新たな問題が発生し、看護計画を作成し直すことになるかもしれません。
そのため、まずは直近で達成すべき目標と、そのうえでさらに目指すべき長期的な目標を別に立てることで、患者も達成感を感じやすくなりますし、急な変化にも対応しやすくなります。
最後に書き方のポイントとして、患者目線で書くことというのが重要です。看護計画であり、看護目標ですから、ついつい看護師目線で書いてしまいがちですが、目標を達成するのは患者自身です。そのため看護目標も患者自身の目線に立った言い回しが重要となります。
看護計画とは、看護師の力で何かを成し遂げるものではなく、患者が今持つ問題を解決するために、看護師としてどのような看護ができるかをまとめた書類です。看護目標に関しては、あくまでも患者目線での表現を心がけましょう。
観察計画(O-P)
観察計画は、「Observation Plan」の頭文字を取って「O-P」と略されることがある項目です。観察計画と呼ばれていますが、正確には得られた情報に関して記入する項目です。看護師が自身の目、口、指、鼻を用いて得られた情報が中心となり、主な項目には以下のような項目が挙げられます。
- バイタルサイン
- 血液検査のデータ
- 呼吸の状態や音
- 水分出納管理
- 皮膚・爪の状態
- 下痢・嘔吐の有無
- 排泄物の色・性状・頻度
- 睡眠時の状態
- 倦怠感や脱力感の有無
通常の看護業務の中で得られたデータや、患者とコミュニケーションを取る中で得られた情報を記載します。看護問題と直結する可能性がなくともできるだけ詳細に記載しましょう。場合によっては、看護の方針だけではなく、診療方針の手助けとなるケースもあります。
援助計画(T-P)
援助計画は、「Treatment Plan」の頭文字を取って「T-P」と略される項目です。
看護問題解決のために、看護師が自身の手を使ってできる看護に関する計画をまとめた項目となります。看護問題を抽出し、それを裏付ける観察計画という情報を基に、どのようなケアをしていくことで看護問題を解決するかを提案する項目ともいえます。
- 清拭
- 食事介助
- 排泄介助
- 体位変換
- 車いすへの移乗
- 輸液管理
- バイタルサイン測定
- 食事内容の調整
- 術前の患者の不安な気持ちを聴く
援助計画は当然ですが、看護師ができる範囲の中で計画を立てることが重要です。また介助や輸液管理のような実際の業務だけではなく、患者とコミュニケーションを取ることなどが含まれるケースもあります。
援助計画は実際に看護師が行う業務に直結する項目であるため、自身にのみ伝わるような書き方ではなく、第三者が見ても理解しやすいように具体的に書き込むことが重要です。上では書き込む内容に関して簡単に紹介していますが、上記のような書き方では第三者に伝わりやすいとは言えません。より具体的に、看護業務を行う際に参考となるように書くことを心がけましょう。
教育計画(E-P)
教育計画は、看護師が口を使って行う教育・指導を指します。
患者さんやその家族に対し、入院中及び退院後に注意すべき点や指導すべき点を口で伝えることをまとめる項目です。
患者さんが意識がはっきりしている場合は主に患者本人に、患者さんの意識が低下している、もしくは認知症等の理由で理解や記憶が難しい場合はご家族に指導を行います。
教育・指導の内容は食事に関することや、毎日の生活に関することなど細かな部分が多く、例を挙げるのは難しいところです。分かりやすい例としては、糖尿病の患者に対し、インスリン自己注射の方法やその必要性を伝えるなどがあります。
もちろんこうした指導内容に関しては、看護問題として提起した問題に対する対策です。看護問題が食欲不振である場合は、退院後の食生活に関するアドバイスなどが中心となるなど、より具体的に提示するのが重要です。
スカウトサービス登録はこちら3.看護計画5つのポイント
看護計画では、看護における問題を抽出し、その問題を裏付ける情報を集め、問題解決のために必要な援助計画を立てます。さらに患者自身などに適切な指導・教育を行う為に必要な資料が看護計画です。そんな看護計画を書く際に、注意すべきポイントに関してまとめていきましょう。
医師の指示・ケアプランの内容に従う
看護計画において重要なのは、あくまでも看護士が実施する看護の計画であることを認識することです。看護師ができる業務は、診療ではなく診療の補助です。診療方針やケアプランに沿って作成することが重要といえます。
診療方針は医師が決定しますし、ケアプランはケアマネージャーが作成することが一般的です。こうして立てられた診療方針やケアプランは、その患者の看護をする上で基本となる部分です。診療方針やケアプランを無視した看護計画はそもそも成り立ちません。しっかりと医師やケアマネージャーなどの指示を聞き、適切な看護計画を立てることが基本となりますので、まずはこの点に留意する必要があります。
もちろん、看護計画の観察計画の中で気になる部分や数値があればすぐみ医師やケアマネージャーに報告しましょう。看護師の作成する看護計画から、診療方針やケアプランが見直される可能性があります。
看護師は医療従事者の中でもっとも患者との距離が近く、患者に寄り添える立場です。患者が気づいていない点や、気づいても伝えづらい点があれば、看護師が代わって報告することが重要です。
分かりやすい表現を心がける
看護計画は自分のために作成するものではありません。その患者を担当する可能性があるすべての看護師及び医療従事者が確認する可能性があり、また患者本人やそのご家族に伝える必要性がある書類となります。
そのために必要となるのが表現の方法です。看護師であれば理解できる表現、医療従事者であれば分かる医療の専門用語などがあります。こうした言葉は第三者に伝わらない可能性があります。分かりやすい言葉で、分かりやすい表現をするように心がけましょう。
課題の優先度を決める
患者が持つ看護問題は1つとは限りません。上でも書いた通り、看護問題には、現状の問題のほかに、将来に対するリスクや、推進した方が良い計画まで含まれます。特に入院している患者の場合、同時に複数の看護問題を抱えているというケースが少なくありません。こうした場合に重要なのが、看護問題に対ししっかり優先順位をつけることです。
看護計画とは、1人の患者につき1つが原則となります。複数の看護計画があると、援助計画の内容に齟齬が生じる可能性があり、適切な看護が行えないケースがあるからです。1つの看護計画に、複数の看護問題を記載する場合は、問題の重要度を鑑み、しっかりと優先順位をつけて対応する必要があります。
主な優先順位の判断基準は以下の通りです。
- 命の危機に関わる問題
- 現在の療養が続けられなくなる可能性がある問題
- 患者の回復・予防を阻む問題
- 患者や家族が解決したい問題
何より優先すべきは、患者の命にかかわる問題です。医療従事者として真っ先に考えるべきはこの問題でしょう。続いては現状の療養が続けられなくなる問題が挙げられます。例えば自宅療養をしている方が、このままいくと入院となってしまうような問題は大きな問題として捉える必要があります。
さらに患者の回復を妨げるような問題が続きます。仮に病状自体は順調に快方に向かっていても、患者の体力等が回復しなければ、療養前のような日常生活を送ることが難しいでしょう。こうした問題解決も看護計画に含まれます。
患者やその家族が解決を望む問題には、さまざまな問題が含まれますが、その問題が病状や患者の健康面に直結しないのであれば、優先順位は低くなります。
看護問題が複数ある場合は、しっかりと優先順位をつけ、より上位の問題の解決を中心に看護計画を立てることが重要です。
問題解決と目標達成ができるように計画する
看護計画では、最終的に達成を目指す看護目標が掲げられます。もちろん最終的にはこの看護目標で掲げたことを達成するのが重要ですが、看護目標の達成にこだわりすぎると患者にかえって悪影響を及ぼす可能性があります。
そもそも看護計画とは、患者が持つ問題を解決するためにまとめるものです。看護計画の最大目標は問題解決であり、問題解決をした結果、看護目標が達成されると考えるのが重要です。
そのためまずは問題を解決することに注力することが重要でしょう。また同時に看護計画で掲げた目標の達成も無視していいわけではありません。看護計画を立てる、また実行するという場合は、問題解決意識と、目標達成意欲を同時に持ち合わせ、両方が達成できるように細心の注意を払っていくことが重要になります。
「できないこと」だけではなく「できること」も考える
看護計画は患者の問題を解決するために作成します。そのため、作成する際はどうしても患者が持つ問題、つまり患者ができないことに目が行きがちです。もちろんできないことを抽出することは重要ですが、できなことばかりに目が向いてしまうと、最終的に何もできないというネガティブな方向に進む可能性が高くなります。
看護計画を立てる上で注目したいのが、患者が「できること」です。どの患者にもそれぞれ特徴があり、得意とすることや苦手意識がないこともあります。こうしたできることに注目し、援助計画を考えていくことがポイントと言えるでしょう。
例えば食欲不振の患者がいた場合、患者が好きなものを出すと食事量が増えるということが分かっていれば、ある程度その「できること」に注目しましょう。食事内容を調整する等で問題が解決できる可能性があります。
患者のできることに注目することで、問題解決の糸口が見つかるケースもありますので、日頃からしっかり患者を観察し、できることをより多く探すような努力も必要です。
看護計画は一度作って終了ではない
看護計画は一度作ってしまえばそれで終了というわけではありません。患者の容体や状況は日に日に変化することもあり、1つの問題点が解消しても新たな問題点が発覚するというのはよくあるケースです。こうした場合には、同じ患者に対し、新たな看護計画を作成する必要があります。
また、看護計画に沿って看護を行っていても、その途中で患者の容体の変化などで、看護問題の優先順位が変わってしまったり、新たな問題が発覚するケースもあります。さらに言えば看護計画の援助計画の内容が適切ではない可能性もありますし、看護目標を変更せざるを得ないケースも考えられるでしょう。
こうした事情も踏まえると、看護計画とは常にチェックし、そのままの計画でいいのか、変更すべきかを検討しながら、修正や再作成を繰り返すものといえます。
看護師として患者と向き合いながら、しっかり患者の様子を確認し、日々看護計画の見直しを行っていくことが看護師の重要な業務の一つといえるでしょう。
スカウトサービス登録はこちら4.まとめ
看護計画の書き方や書くポイント、書く場合の注意点などに関してまとめました。
看護師を目指す方、またすでに看護師として働いている方にとって、看護計画の作成は重要な業務の一つとなります。また、看護計画に沿って看護を行うというのも重要なポイントですので、何より適切な看護計画を作成できるように日々努力が必要になります。
看護計画とは、患者の問題点を洗い出し、問題点を解決するための資料です。看護計画の内容は、患者やその家族に伝えることになりますので、誰が見ても分かりやすい言葉で書くことが重要です。
また、看護計画は看護師のために作成するものではありません。患者の持つ問題を解決し、最終的に患者がどのような状態になることが目標かを示すものですので、常に患者目線で書くことを心がけましょう。
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