【看護師と残業の真実】現場から見た残業問題の原因と対策
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「残業続きでつらい…」
「看護師って何でこんなに残業が多いの?」
こういった悩みや疑問を持つ看護師の方は多いと思います。
この記事では看護師の残業が多い原因、業務形態別の残業時間のデータ、残業を減らすための方法を紹介します。また残業代が出ない場合にできることを解説します。
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目次
1.看護師の残業が多い原因5選
看護師の残業が増える代表的な原因は次の5つです。
- 看護師の人員不足で1人あたりの作業量が多い
- 看護記録の作成や記録業務が多い
- 急患など患者への対応が常に求められる
- 院内研修や勉強会への参加がある
- 看護師の勤務形態が残業に繋がりやすい
それぞれ具体的に説明します。
看護師の人員不足で1人あたりの作業量が多い
看護師の残業が増える原因で一番に考えられるのは、看護師の人材不足です。1人あたりの業務負担が多くなり、時間内に仕事が終わらず残業に繋がってしまうという点が挙げられます。
看護師の人材不足については、厚生労働省の一般職業紹介状況の有効求人倍率を見ると理解できます。令和6年5月分の報告では、看護師(保険師・助産師を含む)の有効求人倍率は2.06倍でした。これは1人の看護師に対して2件の求人があるということです。1人の看護師を2つの事業所が取り合っていると言い換えることができます。
令和6年5月の報告における全体の有効求人倍率は1.24倍でした。看護師は他の仕事と比較しても人手不足に悩んでいるといえるでしょう。
看護記録の作成や記録業務が多い
看護記録は、患者の状態とともに、看護職員の看護行為の目的や必要性の判断、実施した内容を表したものです。看護記録は、医療・看護の継続性を図ること、診療情報を医療従事者と患者との間で共有すること、看護の内容を評価する指標にするという目的のために記録します。
したがって、看護記録の作成は何らかの看護行為をおこなえばすぐに記録するのが基本です。しかし、他の業務との兼ね合いですぐに記録できないこともあるでしょう。
実際に看護の現場では勤務時間内に看護記録を作成する時間を取るのが難しく、申し送りの後に残業で看護記録を作成することが多々あります。電子カルテの導入で、看護師の負担がいくらか軽減されていますが、それでも記録を取る時間を見つけるのは難しいのが現状です。
急患など患者への対応が常に求められる
看護師は、急患の受け入れや入院患者の急変への対応が常に求められます。それも、残業が増える原因となっています。
急患の受け入れ態勢や入院患者の急変に対し、サポート体制が整っている病院ならば、残業せずにそのまま引き継いで済む場合もありますが、そうした病院は多くはありません。
院内研修や勉強会への参加がある
厚生労働省の定めるガイドラインでは、参加が業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講について、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間は労働時間に当たるとされています
したがって、参加が義務づけられている院内研修や勉強会はできる限り勤務時間内におこなうのが適切です。 しかし日中の業務は忙しく、業務時間内に研修や勉強会の時間が取れないので、勤務時間外にそれらを実施することになり、それらが残業扱いとなっているのが現状です。
出典:日本看護協会「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
看護師の勤務形態が残業に繋がりやすい
夜勤がある病院で働いている看護師は、その業務形態が残業の原因となります。日勤から夜勤への引き継ぎ、夜勤から日勤への引き継ぎが必要ですが、その際には自分の勤務中に患者さんに起こった出来事を詳しく伝える必要があるので、ある程度の時間が必要になります。
病院によっては、看護師に引き継ぎのため始業時間より早く出勤するよう求めるケースがあり、これが前残業が増える原因となっています。
スカウトサービス登録はこちら2.看護師の残業時間|勤務形態別
日本医療労働組合連合会が実施した「2022年看護職員の労働実態調査」より、勤務形態別の残業時間を紹介します。日勤、2交替夜勤、3交替の準夜・深夜に分けて、前残業と後残業のデータを見ていきましょう。
総括すると、どの勤務形態においても、回答した半数近くの看護師が始業前の残業として30分以上、終業後の残業として30分以上の残業をしていることが報告されています。
出典:日本医療労働組合連合会「2022年看護職員の労働実態調査報告書」
日勤の残業時間
残業時間 | 始業前の労働 | 終業後の労働 | ||
---|---|---|---|---|
割合(%) | 回答者数(人) | 割合(%) | 回答者数(人) | |
なし |
25.3 |
8,877 |
12.8 |
4,476 |
約15分 |
28.8 |
10,113 |
13.9 |
4,864 |
約30分 |
29.4 |
10,316 |
23.3 |
8,126 |
約45分 |
9.5 |
3,327 |
9.4 |
3,270 |
約60分 |
5.9 |
2,068 |
20.5 |
7,147 |
約90分 |
0.7 |
262 |
11.8 |
4,112 |
120分以上 |
0.4 |
144 |
8.4 |
2,949 |
日勤の看護師の始業前の残業は「約30分」が最も多いです。一方で4人に1人は前残業がありません。終業後の残業については、30分以上の残業をしている割合が計73.4%です。およそ4人に3人は30分以上の後残業を日常的にしているということになります。
終業後に120分以上の残業をしている看護師が8.4%・2949人という数字は、看護師の人手不足や業務負担の大きさを表す数字といえるでしょう。
2交替夜勤の残業時間
残業時間 | 始業前の労働 | 終業後の労働 | ||
---|---|---|---|---|
割合(%) | 回答者数(人) | 割合(%) | 回答者数(人) | |
なし |
32.8 |
4,973 |
28.7 |
4,315 |
約15分 |
18.1 |
2,752 |
14.7 |
2,205 |
約30分 |
26.1 |
3,953 |
26.6 |
4,003 |
約45分 |
10.6 |
1,605 |
9.2 |
1,388 |
約60分 |
9.3 |
1,414 |
14.2 |
2,130 |
約90分 |
2.6 |
395 |
4.9 |
742 |
120分以上 |
0.5 |
80 |
1.6 |
248 |
2交替夜勤は、始業前・終業後ともに「なし」の割合が一番高いです。高いと言っても30%程度なので、大半の看護師は夜勤時にも残業を行っています。「残業30分」の割合が次点で高く、日勤と同程度の割合です。
準夜勤務の残業時間
残業時間 | 始業前の労働 | 終業後の労働 | ||
---|---|---|---|---|
割合(%) | 回答者数(人) | 割合(%) | 回答者数(人) | |
なし |
34.4 |
5,663 |
39.7 |
6,324 |
約15分 |
18.8 |
3,094 |
16.7 |
2,664 |
約30分 |
26.3 |
4,327 |
21.6 |
3,442 |
約45分 |
9.6 |
1,586 |
5.6 |
885 |
約60分 |
8.7 |
1,437 |
11.3 |
1,807 |
約90分 |
1.8 |
299 |
3.7 |
594 |
120分以上 |
0.3 |
51 |
1.3 |
215 |
3交替の準夜も始業前・終業後ともに「なし」の割合が一番高いです。2交替夜勤と比べて後残業なしの割合が11%高く、ほぼ40%近い結果です。
深夜勤務の残業時間
残業時間 | 始業前の労働 | 終業後の労働 | ||
---|---|---|---|---|
割合(%) | 回答者数(人) | 割合(%) | 回答者数(人) | |
なし |
39.0 |
6,149 |
33.3 |
5,160 |
約15分 |
21.8 |
3,437 |
16.3 |
2,526 |
約30分 |
25.4 |
4,006 |
25.3 |
3,924 |
約45分 |
6.7 |
1,054 |
7.2 |
1,115 |
約60分 |
6.0 |
942 |
13.1 |
2,035 |
約90分 |
0.9 |
141 |
3.6 |
550 |
120分以上 |
0.2 |
32 |
1.1 |
175 |
3交替の深夜も「なし」の割合が一番高く、始業前・終業後の割合は準夜と入れ替わったような結果です。準夜は前残業が発生しやすく、深夜は後残業が発生しやすいというような傾向があるのかもしれません。
スカウトサービス登録はこちら3.看護師の残業が多い診療科・配属部署
一般的に看護師の残業が多い科として挙げられるものは以下の通りです。
- 循環器科
- 急性期病棟
- 産婦人科
- 手術室
- 脳神経外科
循環器科や急性期病棟は、患者の急変が起こりやすく、それに対応するために残業することが多くなります。
産婦人科は、出産が予定通りに進むとは限らないので、勤務時間内に業務が終わらないことが多いです。
手術室や脳神経外科で勤務する看護師の場合、手術が長時間に及ぶことがあるので、それが残業が多くなる原因になります。
4.看護師は残業代をもらえない?対応策4選
看護師は前残業、終業後の残業が多い仕事です。しかし、一部では残業代が支払われないという問題が発生しています。
残業代未払いの要因として挙げられるのは、看護師の業務内容が時間で割り切れるものではないということです。病棟勤務であれば急患の対応、手術室勤務であればオペの延長、外来では診療終了間際に受付をする患者さんの対応といった業務が、勤務終了直前に発生することがあります。定時になったから引き継ぎなしに仕事を終えるという看護師はまずいないでしょう。
その結果、「看護師に残業は当たり前」という認識が生まれ、結果として残業代を請求しにくいということが起こります。
残業代未払い問題への対策としては次の4つの方法が考えられます。詳しく見ていきましょう。
- 残業が発生している証拠を集める
- 残業代の支払いを催促する
- 支払いがされない場合は労働基準監督署へ相談する
- 弁護士に相談する
残業が発生している証拠を集める
残業代の請求には、労働条件や労働時間が証明できる証拠が必要です。たとえば、以下の書類を集めることができます。
- 就業規則(契約上の労働時間がわかるもの)のコピー
- 雇用されたときの労働契約書
- シフト表
- タイムカード
- 電子カルテの記録
- 時間外で働いたことがわかるメールやメモなど
未払いの残業代を請求する場合は、自分の都合で残業したのではなく病院側の業務として残業したという証拠が必要なので、まずは必要な書類を集めてください。
残業代の支払いを催促する
未払いの残業代があることを証明できる書類を揃えたら、次は病院側に残業代の支払いを催促します。自分で計算した未払いの残業代すべての回収が難しくても、病院側から納得できるような条件が提示されれば、譲歩して解決できるでしょう。
一方で、病院側が全く話し合いに応じない場合や残業の証拠を隠ぺいしている場合、直接交渉は難しいです。そうしたケースでは次におすすめする対策法を検討してください。
支払いがされない場合は労働基準監督署へ相談する
病院側が残業代の支払いに応じない場合、労働基準監督署へ相談してください。労働基準監督署は、全国にある厚生労働省の出先機関で、残業代などの給料未払い事案を相談できる場所です。残業代未払いの証拠に合理性があり、請求に正当性があると判断される場合、労働基準監督署は病院側に対して指導や是正勧告をおこないます。
ただ、労働基準監督署の行政指導には強制力がありません。したがって、労働基準監督署の指導や是正勧告の結果、未払いの残業代が支払われることもあれば、そうならないケースもあります。労働基準基準監督署の指導や是正勧告を受けても、病院側が残業代の支払いに応じないなら、次の方法を検討してください。
弁護士に相談する
病院側が未払いの残業代の支払いに応じない場合、労働審判や訴訟という方法があります。これらには法律の知識が必要なため、弁護士に依頼する必要があるでしょう。
弁護士は、残業時間の正確な計算や病院側との交渉についてもサポートできます。無料相談を行っている法律事務所もあるので、まずは相談してみることをおすすめします。
スカウトサービス登録はこちら5.看護師の残業を減らすためにできること
残業を減らすためには、働く看護師側と事業所側の両方の取り組みが必要です。それぞれどんな取り組みができるか紹介します。
看護師個人が残業を減らす方法
看護師個人でできる残業対策は、自身の業務の見直しと効率化です。
まず一日の業務を書き出し、自身がどの業務にどれだけ時間を使っているか可視化しましょう。残業続きで心身ともに疲弊してしまうと、目の前の業務に手一杯になってしまい、優先順位や時間意識が曖昧になりがちです。改めて整理すると、改善できる部分に気付けることがあります。
業務効率化は、1.無駄な時間を減らす2.自身の作業効率を上げる3.業務を他の人と分担するの3つが考えられます。1,2は優秀な先輩を観察し手法を真似るといいでしょう。3については、一人で抱え込まず周囲に相談することが大切です。「この仕事は人に任せられない」と責任感を強く感じるあまり、周りに頼れず残業になってしまうケースがよくあります。
事業所側が残業を減らす方法
- 業務改善の為のデジタル化とシステム導入
- 業務分担の推進(タスク・シフト/シェア)
書類や記録関係の残業を減らすために電子カルテや音声入力システム、看護支援システムを導入する方法があります。病院によっては、看護師一人一台のスマホやタブレット端末の支給により、記録作業の効率化を図っています。
病棟クラークや病棟専任薬剤師の配置、採血や検査説明を臨床検査技師が行うなど、看護師が行っていた業務の一部を他の医療スタッフに分担するのも手です。看護師業務のタスク・シフト/シェアについては、日本看護協会がガイドラインの策定やセミナーを行っています。
スカウトサービス登録はこちら6.転職も選択肢!残業の少ない看護師求人を探そう
看護師個人で取り組める残業対策を紹介しましたが、個々の取り組みには限界があります。改善が見込めない残業が常態化した職場からは、転職するのも1つの手です。
看護師資格を活かせる職場は沢山あります。ここでは比較的残業が少ない看護師の職場・部署を紹介します。
- 精神科病院
- 療養型病院
- 介護施設(老健、特養など)
- デイサービス
- 透析室
- 回復期リハ病棟
- 健診センター
コメディカルドットコムでは、会員登録無しで簡単に求人を探して見ることができます。「すぐに転職する訳ではないけど、どんな職場があるか見てみたい」という方は是非一度使ってみてください。思わぬ出会いがあるかもしれません。
スカウトサービス登録はこちら7.まとめ
この記事では、看護師の残業が多い原因、看護師の業務形態別の残業時間、残業時間の多い科、残業時間を減らすための工夫、未払いの残業代を請求するための方法などを紹介しました。
残業が増えることは、働く意欲やサービスの低下の原因となります。さらに、残業代未払いという問題があれば、モチベーションを維持することはもっと難しくなるでしょう。状況が改善されないなら、転職も1つの選択肢です。
自分に合った職場が見つかれば、ワークライフバランスを改善し、仕事と私生活の両方を充実させることができるでしょう。
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