製薬会社で働く薬剤師とは?役割から給与やキャリアパスを徹底解説
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「製薬会社で働く薬剤師は高収入が期待できる?」
「薬剤師が製薬会社への転職を成功させるポイントを知りたい」
このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
企業にもよりますが、製薬会社で働く薬剤師の給与は高いといわれています。仕事内容は、MRや管理薬剤師、治験コーディネーターなど多岐にわたり、転職難易度が比較的高いのが実情です。
本記事では、製薬会社で働く薬剤師の仕事内容や給与、転職を成功させるポイントなどを解説します。記事を読むことで、製薬会社で働く薬剤師のことがわかり、転職すべきか判断できるようになるでしょう。
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目次
1.製薬会社で働く薬剤師とは?
一般的な薬剤師は、薬局や病院などで調剤や服薬指導をしたり薬歴管理をしたりしますが、製薬会社で働く薬剤師は、主に医薬品の開発や流通に携わる仕事です。
製薬会社で勤務する薬剤師には、以下のような職種があります。
- 管理薬剤師
- 医薬品情報担当者(MR)
- 治験コーディネーター(CRC)
- 臨床開発モニター
- 研究開発
それぞれの職種については、「製薬会社での薬剤師キャリアパス」で詳しく解説しています。ここでは、製薬会社における薬剤師の役割についてみていきましょう。
製薬会社における薬剤師の役割
製薬会社における薬剤師は、医薬品の開発や流通などの社会的な役割があります。
薬剤師に求められる役割は広く、薬剤師法の第1条には以下のように記載されています。
「薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする。」
つまり、地域住民や患者様一人ひとりに寄り添った医療の提供、健康促進に貢献することが社会的な薬剤師の役割です。
日々進歩する医療技術の中で、医薬品による治療は欠かせません。製薬会社では、その医薬品の開発や流通を担い、人々の健康的な生活を守る役割があるのです。
出典:厚生労働省|薬剤師法
医薬品開発プロセスにおける薬剤師の貢献
医薬品の開発という重要な役割を担っている製薬会社では、新薬開発までのプロセスを大きく4段階に分けています。具体的には以下の4ステップです。
- 基礎研究:2〜3年
- 非臨床試験:3〜5年
- 臨床試験:3〜7年
- 承認申請審査:1〜2年
上記のとおり、医薬品開発までには10年以上という長い年月をかけて開発されます。医薬品を作るためには、さまざまな試験を通過し、有効性や安全性を評価しなければなりません。
さらに、医薬品開発の成功確率は3万分の1と低く、ほとんどが開発途中で断念されます。
薬剤師は患者様の健康被害から守ると同時に、医薬品を開発するために欠かせない存在なのです。
2.製薬会社の薬剤師に求められるスキルと経験
製薬会社の薬剤師は、病院や薬局とは異なるスキルや経験が求められます。ここでは、製薬会社の薬剤師に必要なスキルや資格などをみていきましょう。
必須とされる専門知識と技能
製薬会社で働くために必須の資格はありませんが、各職種ごとに高度なスキル・経験が求められます。
例えば、従業員の監督や医薬品の管理を行う「管理薬剤師」は監督経験やマネジメント能力が求められ、「MR」では営業スキルやコミュニケーションの能力が求められるでしょう。
また、製造部門では、化学工業や生産管理に関する豊富な知識や技術が必要になり、治験コーディネーターはコミュニケーションスキルが必須です。
上記のように、各職種ごとに高度なスキルが必要なのが製薬会社で働く薬剤師の特徴といえるでしょう。
キャリア発展に向けた追加スキル
キャリアアップを図る際に大切なのが、どのような薬剤師を目指すのかを明確にすることです。前述したとおり、製薬会社で働く薬剤師の役割はさまざまあります。
自分がどのような仕事をしていきたいか明確でなければ、満足のいくキャリアアップにはつながりません。
例えば、「役職に就きたい」「給与を上げたい」など、漠然としたキャリアアップをイメージする方も多いです。しかし、これらはあくまで目的を達成する手段にすぎません。
「製薬会社の薬剤師として経験を積んで独立したい」「現在は管理薬剤師だが、MRに転職したい」などキャリアプランを明確にしましょう。
そうすることで、キャリア発展に向けた具体的なスキルが見つかり、自分が理想とする薬剤師を目指すことができるでしょう。
3.製薬会社での薬剤師キャリアパス
製薬会社で働く薬剤師の主な職種は、管理薬剤師・医薬品情報担当者(MR)・治験コーディネーター(CRC)・臨床開発モニター・研究開発・薬事職があります。
ここでは、それぞれの仕事内容と昇進するための戦略を解説します。
職種とキャリアオプション
製薬会社で働く薬剤師の職種は、以下のとおりです。
管理薬剤師
管理薬剤師は、自社の医薬品や取り扱い医薬品の品質を管理する業務を担う仕事です。ただし、配属場所によっても業務内容が異なります。
配属先が本社や支社であれば、薬事申請などの事務作業や問い合わせ対応などを担い、工場勤務では医薬品の品質管理や在庫管理を行うことが多いです。
製薬会社の管理薬剤師として働くには、5年以上の実務経験や認定薬剤師の資格が求められます。医薬品を扱う拠点1箇所につき、1人の管理薬剤師が義務付けられており、責任感のある方に向いている職種です。
医薬品情報担当者(MR)
医薬品情報担当者(MR)は、自社医薬品を提案する「営業職」を指します。営業職とはいえ、直接的に医薬品を販売することはありません。
医師や薬剤師に対して、医薬品の有効性や安全性の正確な情報を提供し、販売につなげます。
情報提供だけでなく、臨床現場で医薬品を使用してわかった効果や副作用の情報を収集するのも大切な役割です。
そのため、薬剤師には医薬品に関する深い知識が求められます。他にも、売上目標を達成できる営業力やコミュニケーション能力も必要になるでしょう。
治験コーディネーター(CRC)
治験コーディネーターは、医療機関と治験の対象者、製薬会社の間に立ち、治験がスムーズに進むように調整する職種です。治験とは、開発した薬の効果や副作用を調べる臨床試験のことをいいます。
具体的な仕事内容は、
- 被験者や医療機関の担当者に薬の説明
- 治験のスケジュール調整
- 被験者への対応・フォロー
- 治験に関する書類の作成
- 服薬指導
など多岐にわたります。
治験コーディネーターになるために必要資格はありませんが、業界団体による認定試験をクリアしなければなりません。
治験コーディネーターは医師や看護師、被験者など多くの方と密接に関わります。そのため、医学や薬学に関する専門的な知識はもちろん、コミュニケーション能力や管理能力が求められるでしょう。
臨床開発モニター(CRA)
臨床開発モニターは、治験を行う医師や医療機関の選定や臨床試験の管理を行う仕事です。前述の治験コーディネーターは医療機関側で治験を管理する一方、臨床開発モニターは製薬会社側で管理する点が異なります。
具体的な業務内容は、治験を行う医師や医療機関の選定、臨床試験の進捗状況の管理、報告書の作成などです。
臨床開発モニターになるために必須資格はありませんが、医師と関わるため、医学に関する高いコミュニケーション能力は求められるでしょう。
研究開発
製薬会社の研修開発は、新薬の研究と開発を行う職種です。製薬会社の利益を左右する職種ともいえ、日々新薬の開発と研修を行います。
しかし、新薬の開発には10年以上かかるとも言われており、その成功率はごくわずかです。人々の健康を支えるためになくてはならない、やりがいのある仕事ですが、基本的に修士以上の課程を修了した者しか採用されません。
大手製薬会社に勤めれば、高年収を手にすることも可能です。忍耐強さや研究への熱意がある方には向いているでしょう。
薬事職
薬事職は、新薬の開発から販売中止まで、製薬会社が遵守すべき薬事規制に対応するための業務を行う職種です。厚生労働省に新薬の承認申請をする際に必要な書類の作成や、薬事戦略の立案なども行います。
薬事職に就くために必要な資格はありませんが、品質管理や安全管理の観点から製造販売の判断を担う「総括製造販売責任者」の資格があると、転職に有利になりやすいです。また、厚生労働省に申請する書類などの内容を正しく理解し、文章を書く能力が問われるため、ライティングスキルの高い方は向いているでしょう。
成長と昇進のための戦略
製薬会社で働く薬剤師が昇進を図る際は、勤務先が定める「昇進の条件」を確認するのが大切です。製薬会社であれば、部課長に昇進することで役職手当がつき、年収の大幅アップも期待できます。
昇進することができれば、年収1,000万円も夢ではありません。
昇進のための材料として、専門性の高さを示す「認定薬剤師」や「専門薬剤師」の資格を取得するのもよいでしょう。
また、部課長など役職についている方に、直接昇進の条件を聞くのも有効です。
ただ目の前の仕事を一生懸命こなすのも大切ですが、昇進のための戦略を立てながら業務を行うことで、自身の成長にもつながるでしょう。
4.製薬会社で働く薬剤師の年収と待遇
製薬会社で働く薬剤師の年収は、職種によっても異なります。ここでは、各職種の平均年収と給与を上げる方法を解説します。
給与水準と待遇の実態
厚生労働省が公表している「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師全体の給与は、約577万円です。製薬会社で働く薬剤師の年収を職種別で見ると、以下のとおりです。
職種 | 平均年収 |
---|---|
管理薬剤師 | 600〜900万円 |
医薬品情報担当者(MR) | 500〜1,000万円 |
治験コーディネーター(CRC) | 400〜800万円 |
臨床開発モニター | 500〜800万円 |
研究開発 | 500〜900万円 |
薬事職 | 400〜1,000万円 |
上表を見ると、製薬会社で働く薬剤師は比較的高収入といえます。さらに高収入を目指したい方は、医薬品情報担当者(MR)や薬事職がおすすめです。
ただし、年収だけを見て仕事を選んでしまうと、自分に合った職種に就けない可能性があります。自分が持っている・得意とするスキルと仕事内容を考慮して、納得のいく転職にしましょう。
報酬を最大化する方法
製薬会社の薬剤師として、給与を最大化する方法はいくつかあります。前述した医薬品情報担当者(MR)や薬事職に就き、昇進することで年収1,000万円を狙うことも可能です。
また、大手製薬会社や外資系製薬会社への転職で、大幅な給与アップを図れます。
しかし、製薬会社への転職は狭き門といわれています。そもそも求人数が少なく、人気のある就職先のため、倍率が非常に高いです。
製薬会社への転職を成功させたい方は、次の章を参考にしてください。
5.製薬会社への就職・転職ガイド
製薬会社への転職は、難易度が非常に高いといわれています。では、薬剤師が製薬会社への転職を成功させるためには何が必要なのでしょうか。
ここでは、転職を成功させるポイントと求職者が知るべき求人情報などを解説します。
製薬業界への転職を成功させるポイント
製薬会社で働くために、薬剤師免許以外の資格は必要ありません。
しかし、製薬会社の職種には薬や医療に関しての豊富な知識と経験が求められます。
そのため、まずは薬剤師としてキャリアを積み、医薬品のスペシャリストとして転職に臨むのがベストでしょう。
また、これまでお伝えしたように、製薬会社にはさまざまな職種があります。それぞれの職種に必要なスキルを獲得しておくことも大切です。
例えば、MRやCRCに就きたいのであればコミュニケーション能力の向上を、管理薬剤師であればマネジメント能力を向上しておくとよいでしょう。
自分が得意とする分野での知識やスキルを向上して職種を選ぶことで、製薬会社への転職活動をスムーズに進められます。
求職者が知るべき市場の動向と求人情報
医薬品業界の市場規模は、2023年で約11兆円と推計されています。今後5年間で14兆円に達するともいわれる業界です。
また、医療費の中で薬剤費は多くの割合を占めているため、製薬業界の今後は安泰とも思えます。
しかし、風邪や高血圧など多くの方がなりやすい病気の医薬品の市場は飽和状態でもあり、新薬の研究・開発され尽くしているのが実情です。
現状は薬剤師不足の声もありますが、製薬業界のDX化により、長期的には供給が需要を上回るとも予想されています。
そのため、今後は薬剤師としての市場価値を高めることが重要になるでしょう。
6.製薬会社で働くことのメリットとやりがい
ここからは、製薬会社で働くメリットややりがいを解説します。
業界特有のメリットと職場環境
製薬会社で働く大きなメリットとして、他の就職先よりも年収が高いことが挙げられます。大手の製薬会社などでは、年収1,000万円を稼ぐ方も少なくありません。
さらに、福利厚生や職場環境が整っているのも、製薬会社で働くメリットです。
例えば、
- 住宅支援
- 社会保険
- 保養所
- 子育て支援
などが挙げられます。土日祝日は基本的に休みであったり、長期休暇を取りやすかったり働きやすさも魅力の一つと言えるでしょう。
また、製薬会社の薬剤師は調剤業務がない代わりに、医療業界の最新知識や学術論文に触れる機会が多く、英語力や最新の医薬品に関するスキルアップを図れます。
製薬会社でのキャリアが提供するやりがい
製薬会社で働くやりがいは、人の命を救うことに直結する仕事であることでしょう。実際に、患者様の病気の予防や治療に貢献できることに喜びを感じる方は多いです。
例えば、製薬会社の研究・開発職の場合、自分が携わった研究の成果が目の前で確認できます。新薬の開発には10年以上の長い年月がかかり、その成功率もごくわずかといわれる中、プロジェクトが成功した時の達成感は大きいでしょう。
7.キャリアチェンジの際の検討事項と対策
現在、調剤薬局や病院の薬剤師として働いている方が製薬会社へ転職する場合、何を準備しておけばよいのでしょうか。ここでは、その検討事項と対策を解説します。
調剤薬局や病院からのキャリアチェンジの準備
調剤薬局や病院からのキャリアチェンジを図る際に、まずは情報収集を念入りに行いましょう。製薬会社といっても、MRや研究職など職種はさまざまあり、自分に適した仕事を見つけることが大切です。
また、調剤薬局や病院の薬剤師がすぐに製薬会社に転職しようと思っても、採用されない可能性があります。
製薬会社へのキャリアチェンジを目指す場合は、希望する職種に必要な知識やスキルを十分に身につけておかなければなりません。
製薬会社への転職は、どの職種でも高いスキルが求められるため、薬剤師としての市場価値を上げておくようにしましょう。
組織文化とワークライフバランスへの適応
前述したように、キャリアチェンジの際は情報収集が大切です。自分が働きたい企業をピックアップし、その企業のホームページや募集要項は事前に確認しておきましょう。
よくある失敗例として、年収だけでキャリアチェンジを図るのは注意が必要です。いくら年収が高いからといって安易に転職してしまうと、労働環境が悪かったり、人間関係が悪い職場だったりして、転職に失敗する可能性もあります。
「年収は上がったけど、プライベートの時間が確保できない」という方も多いです。その製薬会社が本当に理想の職場となるのか、職場見学などを通して確認してみるのもよいでしょう。
スカウトサービス登録はこちら8.まとめ
製薬会社で働く薬剤師は、病院や調剤薬局など他の就職先よりも高年収が期待でき、有給や長期休暇、福利厚生も充実しています。特に人気の就職先のため、製薬会社への転職難易度は比較的高いです。
製薬会社で働くために、薬剤師免許以外に必要な資格はありませんが、高度な専門知識とスキル、経験が求められるでしょう。
そのため、自分の理想通りの転職を叶えるためにも、まずは薬剤師としての市場価値を高めることが大切です。
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