導入が進んでいる看護師のクリニカルラダーとは?概要とメリット・デメリット
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看護師や医療機関の皆さんは、看護師の「クリニカルラダー」についてご存知でしょうか?
耳にしたことはあると思いますが、詳細な構成や「キャリアラダー」との違いについては知らない、という方も多いと思います。
今回はクリニカルラダーについて解説!看護師の方にとっては、改めてその役割について知ることで、クリニカルラダーに取り組むモチベーションになるでしょう。医療機関の方はメリット・デメリットを踏まえて導入の判断材料にもなる内容となっていますので、参考にしてみてください。
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目次
1.看護師のクリニカルラダーは看護全体の質を高める
クリニカルラダーの活用により、看護全体の質が高まります。看護の質を上げるためには、確実なスキルに基づく看護、良好なコミュニケーション、整えられた療養環境など多くの条件が整っていなければなりません。
ラダーを活用してその人が持つ知見とスキルを正しく評価することで、効率よくスキルの向上が行えます。また、ラダーは業界共通の指標なので、生活環境が変わったとしても実力を明確に示せます。
つまり、個々のスキルの向上・キャリアアップに繋がり、看護全体の質が高まるきっかけになるのです。
スカウトサービス登録はこちら2.看護師のクリニカルラダーとは
看護師の実務能力を向上させるための評価基準のことです。ここからは、クリニカルラダーについて詳しく解説します。
ラダーの意味
ラダーとは英語で「はしご(ladder)」のことです。看護師がより上のレベルに到達するために、ステップごとに目標を達成するものを示したものです。
はしごを登るように新人から経験を重ねて、さらに上のポジションに到達するまでの様子から名称がつけられています。
クリニカルラダーの目的
目的は、「看護全体の質向上」です。一人ひとりの看護実践力をステップごとに評価してレベルアップを図り、看護の質を高める狙いがあります。
現時点で、全ての医療機関が採用しているわけではありません。徐々に採用する医療機関も増えてきており、看護の質向上や自己学習・スキルの習得状況の目安として活用されています。
キャリアラダーとの違い
キャリアラダーは、管理者やスペシャリスト、大学院進学など、キャリアの発展を促進するために看護師を評価する仕組みです。一方で、クリニカルラダーは看護師の能力をステップごとに評価し、スキルアップを図るためのシステムを指します。
簡単に言えば、キャリアラダーはキャリアアップを重視したシステムであり、クリニカルラダーはスキルアップに焦点を当てた評価システムです。ただし、一部の勤務先ではこれらを同じ意味として使用していることもあります。
スカウトサービス登録はこちら3.クリニカルラダーを構成する4つの実践能力
すべての看護師に共通する実践能力は、以下の4つの要素から成り立っています。
①専門的・倫理的・法的な実践能力
自分の判断や行動に責任を持ち、合理的で法的な基準に基づいた看護ができる能力のことです。次の3つの要素があります。
責任と論理に基づいて自己の判断や行動の結果に責任を持つことです。そのうえで、自分の役割や能力に適したサービス提供を行うことと定義されています。次のレベルによっても定義は異なります。
Ⅰ | 自身の役割や能力の範囲を認識し責任を持つ |
---|---|
Ⅱ | 上記に加えて自身の問題点を他にシェアすること |
Ⅲ | 仲間や組織の課題に気づき最善策を取る |
Ⅳ | 多様な場面でも責任を果たす |
論理的に意思決定、行動し、患者さんの命や権利、多様性などを尊重して提供することです。次のレベルによっても定義は異なります。
Ⅰ | 倫理指針と実践を紐付けて理解し行動する |
---|---|
Ⅱ | 論理的に行動し課題を他者にシェアする |
Ⅲ | 顕在的・潜在的な論理的課題について問題提起する |
Ⅳ | 法令違反の疑いがある行動や状況を解消する |
法律・条例などが定められている行動は何かを認識し、勤務先などの規範に基づいた実践を行うことです。次のレベルによっても定義は異なります。
Ⅰ | 法令を遵守し行動する |
---|---|
Ⅱ | 法令違反の行動は他者にシェアする |
Ⅲ | 法令違反の状況に対して問題提起する |
Ⅳ | 複雑な状況でも法令遵守し、リスクがある状況でも参画する |
②臨床実践能力
臨床実践能力は、一人ひとりに合った看護を提供し、臨機応変に力を発揮することです。以下の4つから構成されています。
体系的な情報収集とアセスメントを行い、問題に優先順位をつけて判断し共有することです。次のレベルによっても定義は異なります。
新人 | アドバイスを受けてケアの需要をとらえる |
---|---|
Ⅰ | ケアの需要を自分でとらえる |
Ⅱ | ケアの特性を踏まえて需要をとらえる |
Ⅲ | 統合して需要をとらえる |
Ⅳ | ケアの関連や意味をふまえ需要をとらえる |
患者さんとの信頼関係のもと、それぞれの状況に応じた看護計画を立案・実施・評価し対応することです。次のレベルによっても定義は異なります。
新人 | アドバイスを受けながら、安全な看護を実践 |
---|---|
Ⅰ | 患者さんや状況に応じた看護を実践 |
Ⅱ | 患者さんや状況の特性を踏まえた看護を実践 |
Ⅲ | 幅広い技術を選択・応用 |
Ⅳ | 最新の知見を取り入れる |
患者さんやご家族などとの信頼関係や対話、正確かつ一貫した情報提供のもとその人らしく生きるための意思決定を支援する力です。次のレベルによっても定義は異なります。
新人 | 患者さんやご家族の意向を知る |
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Ⅰ | 患者さんやご家族の意向を看護に活かせる |
Ⅱ | 意思決定に必要な情報提供や場の設定ができる |
Ⅲ | 意思決定に伴う揺らぎを共有し、選択を尊重できる |
Ⅳ | 多職種も含めた調整的役割を担える |
患者さんや保健・医療・福祉、生活に関わる職種・組織と連携し、知見・スキルを活かしながら実践する力です。次のレベルによっても定義は異なります。
新人 | 関係者と情報提供できる |
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Ⅰ | 看護に必要な関係者と情報交換できる |
Ⅱ | 患者さんやその関係者、多職種と連携できる |
Ⅲ | 多職種と連携できる |
Ⅳ | 多職種の力を引き出し連携に繋げる |
③リーダーシップとマネジメント能力
看護や医療の提供を効率的・効果的に行うために、役割や状況に応じたリーダーシップを発揮してマネジメントを行う能力のことです。以下の3つから構成されています。
チームにおける業務委譲、他職種への業務移譲と、業務遂行の管理・監督を適切に行う力です。次のレベルによっても定義は異なります。
新人 | 業務委譲して実施確認を行う |
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Ⅰ | 自立して業務委譲し実施確認を行う |
Ⅱ | 必要時業務を移譲する |
Ⅲ | マニュアルなどの見直しに参画する |
Ⅳ | 体制整備に参画する |
正しいリスクの評価やマネジメントを検討し、適切な管理のもと実施する力です。次のレベルによっても定義は異なります。
新人 | ルールに基づき行動する |
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Ⅰ | 自立して行動する |
Ⅱ | 事故や問題の発生時の影響を最小限にする |
Ⅲ | 同僚を支援し危機管理体制整備に参画する |
Ⅳ | 平常時の危機管理体制の整備や見直しに主体的に参画する |
業務の改善やチームワーク向上に努め、業務の優先度を考慮しながら実施する能力です。次のレベルによっても定義は異なります。
新人 | 役割を理解する |
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Ⅰ | 業務の委譲・実施確認を行う |
Ⅱ | 一時的な主導者として業務の管理や改善に務める |
Ⅲ | 主導者として改善点を伝える |
Ⅳ | 主導者として変革や人材育成に務める |
④専門性の開発能力
資質やスキルを向上させ、その価値を人や社会に提供し、貢献する能力です。次の4つの要素から構成されています。
専門職として制度・政策の提言や看護学の発展、看護の効率・効果を向上させる活動に組織を通じて関わり社会に貢献する能力です。次のレベルによっても定義は異なります。
Ⅰ | プロフェッショナルとして役割を理解して行動する |
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Ⅱ | プロフェッショナルとして組織の見本となる |
Ⅲ | 広い視野を持って活動や看護学の発展に関わる |
Ⅳ | 制度・政策の改善に関わる |
業務の結果を分析して改善し、後輩の支援や指導に携わることです。次のレベルによっても定義は異なります。
Ⅰ | 科学的根拠に基づき、看護を見直し向上を図る |
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Ⅱ | エビデンスに基づき評価・改善を行い、新人・学生の指導を行う |
Ⅲ | エビデンス構築や、学習や能力開発をサポートする |
Ⅳ | 変革・創造を主導・発信し、質向上をサポートする |
自分の能力開発や維持、向上に責任を持ち、自己研鑽を行い、多様な人々とともに学び合うことです。次のレベルによっても定義は異なります。
Ⅰ | 計画的に自ら学習を行う |
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Ⅱ | 多職種と学び合い、今後のキャリアを描く |
Ⅲ | キャリアの中長期的展望を描き、それに応じた学びを継続し同僚のモデルになる |
Ⅳ | キャリアに応じた学び直しなどを行い、人材の生涯学習をサポートする |
ウェルビーイングとは、自分自身が満足した生活を送れている状態のことです。次のレベルによっても定義は異なります。
Ⅰ | 自身のウェルビーイングの維持に努める |
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Ⅱ | セルフケアを行い、ウェルビーイングの維持向上に努める |
Ⅲ | 状況の変化を予測しながらウェルビーイングの維持向上に努める |
Ⅳ | 人材のウェルビーイングにも関わる |
4.クリニカルラダーのレベルと評価方法
ここでは、クリニカルラダーのレベルと評価方法について解説します。
5段階のレベル
クリニカルラダーで示されている5段階のレベルの定義は以下のとおりです。
レベルⅠ:初心者 | 基本的な手順に従い、必要に応じてアドバイスを得て看護を実践する |
---|---|
レベルⅡ:新人 | 看護計画に基づいて自立して看護を実践する |
レベルⅢ:一人前 | 患者さんの状況に合った看護を実践する |
レベルⅣ:中堅 | 予測的判断を持って看護実践する |
レベルⅤ:達人 | より複雑な状況でも最適な手段を選択し、QOLを高めるための看護を実践する |
新人はレベル1に該当し、段階的にレベルアップしていきます。そのため、看護師歴で測るものではなく、あくまでも看護の質が重視された評価を行っているのが特徴です。
5段階の評価方法
クリニカルラダーは、「到達目標」「看護実践能力」「組織的役割遂行能力」「自己教育研究能力」の基本概念が設けられています。前述した5つのレベルに応じて、以下の5段階で評価を行います。
S:非常に良い
A:良い
B:普通
C:努力が必要
D:非常に努力が必要
上記の評価は、他者評価だけでなく「自己評価」も行うのがポイントです。両方の観点から評価すれば、他者は評価される側の自己認識を把握し、評価される側は自己評価と客観的な評価を見比べることができます。
また、「自分が看護師として何が足りないのか」「何を望まれているか」などを明確にすることが可能です。主体的に行動しやすくなり、キャリアの目標に向かって進むことができます。
スカウトサービス登録はこちら5.クリニカルラダーの活用メリット
ここでは、クリニカルラダーを医療機関で活用するメリットを、個人・組織両方の視点から解説します。
看護師(個人)のメリット
まずは個人が活用するメリットを見ていきましょう。
看護師の仕事は、営業職のように成績として結果が出るわけではありません。そのため、現在の自分がどの程度の能力があるかを認識するのが困難です。
しかしクリニカルラダーを活用すれば、5段階のレベルで客観的に評価され、自分の立ち位置が明確になります。日々の業務を漠然とこなして悩んでいる方でも、次に何を目指せばいいのかが明確になり、着実にスキルアップを図ることができるでしょう。
クリニカルラダーの評価システムでは、5つのレベルに分けられるため、目標を定めやすい点がメリットです。レベルごとに具体的な看護実践能力が定められているため、次のアクションプランを立てやすくなります。
例えば、レベル1に属する新人の場合は「基本的な手順に従い、必要に応じてアドバイスを得て看護を実践する」ことを目標に業務に取り掛かればよいです。自分が何を目標にして努力すればいいのかがわかるため、効率よくスキルアップに取り掛かれるでしょう。
日々漠然と業務をこなすよりも、目標が明確になって自分が何をすればいいのかわかる状態の方がモチベーションも上げやすいです。また、クリニカルラダーは客観的・主観的な評価で行うシステムなので、公平・公正な評価が得られます。
一般的に行われる評価基準は直属の上司が一方的に評価するため、評価者によって左右される部分が大きいです。クリニカルラダーは公平・公正な評価を得られ、目標が明確になるのでモチベーションが上がりやすいです。
医療機関(組織)のメリット
次に、医療機関(組織)が導入するメリットを解説します。
クリニカルラダーによって、教育の段階的指標が明確になるため、指導や育成がしやすい点がメリットです。病院ごとに異なる基準を設けている場合もあり、その病院が求める人材に育成することもできます。
クリニカルラダーを導入することで、個人の裁量に左右されない的確な指導や育成ができるようになるでしょう。
クリニカルラダーの採用により、看護師は「自分が何を学習すればいいのか」「どういった役割を求められているのか」などが明確になり、スキルアップを図れます。ステップごとに課題が明確になっているので、目標も立てやすく、モチベーション向上も期待できます。
課題をクリアしていき、できることが増えていくとやりがいも大きくなり、さらなるモチベーション向上にもつながるでしょう。この意識が職場内に伝播すれば、全体の質を高められます。
スカウトサービス登録はこちら6.クリニカルラダーの活用デメリット
クリニカルラダーには多くのメリットがある一方で、以下のようなデメリットも存在します。
看護師(個人)のデメリット
まずは看護師のデメリットを見ていきましょう。
クリニカルラダーは、看護師の能力を適正に評価するために役立つ指標ですが、それが給料に影響する場合がある点がデメリットです。とはいえ、評価を気にするあまり、技能重視の看護になってもいけません。
自分の評価を優先すれば、患者さんに寄り添う看護ができなくなります。自身の看護観を大切にし、評価を気にしすぎないことが大切です。
クリニカルラダーの評価対象外である、「ヒューマンスキル」が評価されにくい点がデメリットです。ヒューマンスキルは、他者と円滑な人間関係を築くスキルを指します。
看護の現場においてヒューマンスキルは非常に重要なスキルであり、技術面に偏った評価システムに不満を感じる方も多いです。評価重視のスキルアップになってしまうと、対人関係が疎かになる可能性もあります。そのため、評価に振り回されない意識が大切です。
クリニカルラダーを導入すれば、目標を設定したり現状の記録・振り返りを行ったりなどの業務が増えます。すでに通常の業務量が負担になっている看護師にとっては、大きなデメリットです。
勤務先によっては、ラダーで残業になる場合もあります。肉体的・精神的に負担の大きい看護師は、ラダーを負担に感じるでしょう。
医療機関(組織)のデメリット
次に医療機関のデメリットを解説します。
前述したとおり、通常の業務以外の負担が増える点がデメリットです。これは個人だけでなく評価する医療機関も同様です。
講習や研修の準備だけでなくラダー作成にも時間がかかり、病院独自のものを作成しようとなると業務量が増えます。そもそも評価する人材が整っていない場合は、ラダーを導入するメリットが少ないといえるでしょう。
ラダーが原因で看護師の業務負担が増える可能性があるため、導入に関して理解を得るのが困難な場合があります。また、看護師のラダーはスキル面の評価がメインなので、ヒューマンスキルを評価されないシステムに不満を持つ方も多いです。
こういった方への周知や理解を得るのは、非常に困難といえるでしょう。
7.まとめ
看護師のラダーは、看護全体の質を向上させるために重要な評価システムです。看護師として求められる課題が明確になり、目標を定めやすくなります。自分が何を意識して業務に取り組めばよいのかがわかるようになるため、モチベーションも保ちやすい点がメリットです。
しかし、業務量が増えたり給料に直接影響したりするなど、デメリットもあります。そのため、評価に振り回されずに業務を行うことが大切です。
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