保育士のキャリア形成|キャリアアップ研修や取得したい民間資格を紹介
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保育士の処遇改善と専門性の向上を図るために、「保育士等キャリアアップ研修」の受講が令和5年度より必須となります。令和6年以降には「処遇改善等加算Ⅱ」の支給要件として、研修修了が必須となることが予定されているため、保育士としてのキャリアアップに「保育士等キャリアアップ研修」は避けて通れないものです。
今回はこの研修の内容のほか、修了により得られるメリットなど、「保育士等キャリアアップ研修」についての疑問を解消できる内容となっています。
また、研修以外でのキャリアアップの方法についても解説しているので、今後のキャリアを考えている保育士の方は是非ご一読ください。
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目次
1.保育士等キャリアアップ研修とは?
この章では、保育士等キャリアアップ研修についての概要を解説します。
まず、キャリアアップ研修とは、研修による技能の習得により、キャリアアップができる仕組みを構築することを目的に定められました。
園長、主任保育士の下で働く初任後から中堅までの職員が、多様な課題への対応や若手の指導等を行うリーダー的な役割を与えられて職務にあたっています。
こうした職務内容に応じた専門性の向上を図るために研修機会を充実させることが大きな目的となっています。
保育士等キャリアアップ研修の概要
出典:厚生労働省「保育士等キャリアアップ研修ガイドラインの概要 」
「保育士等キャリアアップ研修」は8分野からなり、1分野ごとに15時間以上が規定されています。研修修了の評価は、15時間以上の研修の受講を確認するとともに、受講後のレポート提出で行います。これにより、研修内容に関する知識及び技能と、それを実践する際の基本的な考え方や心得の認識を確認します。試験などは行われません。
なお、研修の修了後に交付される修了証は、全国で有効となります。
- ①乳児保育
- ②幼児教育
- ③障害児保育
- ④食育・アレルギー対応
- ⑤保健衛生・安全対策
- ⑥保護者支援・子育て支援
<対象者>
保育所等の保育現場において、各専門分野に関してリーダー的な役割を担う者(当該役割を担うことが見込まれる者を含む。)
<対象者>
各分野におけるリーダー的な役割を担う者としての経験があり、主任保育士の下でミドルリーダーの役割を担う者(当該役割を担うことが見込まれる者を含む。)
<対象者>
保育所等の保育現場における実習経験の少ない者(保育士試験合格者等)又は長期間、保育所等の保育現場で保育を行っていない者(潜在保育士等)
実施場所:都道府県又は都道府県知事の指定した研修実施機関
※ 都道府県が適当と認める団体に委託することも可能。
※ 研修実施機関は、市区町村、指定保育士養成施設又は就学前の子どもに対する保育に関する研修の実績を有する非営利団体に限る。
研修修了の評価については、15時間以上の研修の受講を確認するとともに、研修の受講後にレポートを提出させるなど、研修内容に関する知識及び技能とそれを実践する際の基本的な考え方や心得の認識を確認するものとする。
園長・主任保育士以外の段階的なキャリアパスの基準に
キャリアパス研修の修了は、令和5年度より段階的に必須化される予定です。職務分野別リーダーの場合、令和6年度にはその分野における研修を修了していることが必須化されます。他役職については、令和8年には完全実施となる予定です。
新たに設けられた3つの役職へのキャリアアップ条件を見ていきましょう。
研修修了要件 | 経験年数の目安 | |
副主任保育士 | マネジメント+3つ以上の分野の研修を修了 | 概ね7年以上 |
専門リーダー | 4つ以上の分野の研修を修了 | 概ね7年以上 |
職務分野別リーダー | 担当する職務分野(分野①~⑥)の研修を修了 | 概ね3年以上 |
副主任保育士・専門リーダーについては、月額4万円(園長・主任保育士を除く保育士等全体の概ね1/3)、職務別リーダーについては月額5千円(園長・主任保育士を除く保育士等全体の概ね1/5)の処遇改善が支給の対象です。
出典:厚生労働省「保育士等キャリアアップ研修ガイドラインの概要 」
新型コロナウイルス感染症の影響で必須化時期が変更に
副主任保育士・中核リーダーなどについては、これまで令和4年度から4分野・60時間以上の研修を修了することが要件でした。しかし、令和3年6月18日、新型コロナウイルス感染症の影響を鑑み、内閣府が「処遇改善等加算Ⅱの研修修了要件の必須化時期の取扱いについて」を発表し、令和5年度から令和8年度までの期間については、研修修了数を毎年1分野ずつ追加していき、令和8年度に完全実施することになりました。
研修修了要件 | 適用開始時期 | 経験年数の目安 | 完全実施年度 | |
副主任保育士・中核リーダー等 | 4分野(60時間以上) | 令和5年度から段階的に | 概ね7年以上 | 令和8年度 |
職務分野別リーダー・若手リーダー | 担当する1分野 (15時間以上) | 令和6年度から | 概ね3年以上 | 令和6年度 |
出典:内閣府「資料3 処遇改善等加算Ⅱの研修修了要件の 必須化時期の取扱いについて(6月18日子ども・子育て会議資料) 」
スカウトサービス登録はこちら2.処遇改善加算Ⅱについて
この加算は、副主任保育士・専門リーダー(月額4万円の処遇改善)、職務分野別リーダー(月額5千円の処遇改善)等を設けることにより、キャリアパスの仕組みを構築し、保育士等の処遇改善に取り組む施設・事業所に対して、 キャリアアップによる処遇改善に要する費用に係る公定価格上の加算とされています。
保育園での役職といえば園長と主任のみというのが大半でしたが、新たに「副主任保育士」「専門リーダー」「職務分野別リーダー」という役職が新たに設けられ、要件を満たすことで処遇改善を受けられるようになりました。
処遇改善加算Ⅱの要件
月額4万円の処遇改善の対象者 |
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月額5千円の処遇改善の対象者 |
|
出典:厚生労働省「保育士等の処遇改善の推移(平成24年度との比較) 」
スカウトサービス登録はこちら3.キャリアアップ研修のメリット
ここからは、保育士等キャリアアップ研修を取得することのメリットについて解説します。
段階的なキャリアアップが可能になる
「保育士等キャリアアップ研修」は、これまで曖昧なものだった保育士のキャリアパスを明確にするものです。また、「保育士等キャリアアップ研修」を修了することにより、自身のスキルが客観的に証明されるため、これまで経験年数だけで処遇を判断してきた園に対しても、是正を求める手立てとなることが期待されます。
給料アップにつながる
「保育士等キャリアアップ研修」を修了することで処遇改善の支給対象者になれば、月額5,000円以上の手当を受け取ることができるようになります。キャリアとそれに対する加算額が明確化されることで、自身のキャリアデザインを描きやすくなるとともに、給料がアップすることで職務に対するモチベーションもより高まることでしょう。
転職・復職する際の指標になる
「保育士等キャリアアップ研修」が始まったことで技術や知識の指標を得られるようになったので、「保育士等キャリアアップ研修」の修了証により、自身のスキルを明確にアピールできるようになりました。転職活動を有利に進めることができ、採用側にとっても人材の判断指標となります。また、修了証は全国で有効となるため、結婚などによる遠方への引っ越しでも安心です。また、ブランクがある方の復職にも活用できます。
スカウトサービス登録はこちら4.キャリアアップ研修の受講方法は?
保育士等キャリアアップ研修には、各都道府県が実施するものと、特定の実施機関で行うものとがあります。実施状況や受講料などの詳細については、各自治体のHPを確認されることをおすすめします。また、オンラインでの受講も可能です。
自治体実施・認可機関のどちらでも全国で有効
保育士等キャリアアップ研修の実施は都道府県単位で行われており、各自治体が実施するものと、自治体の認可を受けた実施機関が行っている指定研修とがあります。指定研修は、都道府県知事の指定した研修実施機関で行われますが、都道府県実施の研修と同様に修了証は、全国で有効です。
手軽に受講できるオンライン研修も
研修会場が遠かったり、日程の都合が合わなかったりする人でも、オンライン研修なら手軽に受講できます。研修は主にZOOM配信で行われており、パソコンだけでなくタブレットやスマートフォンでも受講が可能です。なお、オンライン研修の受講料やプログラムは業者によって異なっていますが、修了証は全国どこでも有効となっています。
スカウトサービス登録はこちら5.目指す方向性が決まっているなら民間資格を取得しよう
保育士としてさらに専門性を高め、もっとスキルアップを目指したい、自分がやりたいことの方向性が固まってきたという方には、キャリアアップ研修以外にも各種民間資格があります。ここからは、主な民間資格について解説します。
医療現場に携わる「医療保育専門士」
医療保育専門士は一般社団法人日本医療保育学会が認定する民間資格で、平成9年(2007年)にスタートしたものです。医療保育士は、病院や医療機関などに入院している子供(0歳〜18歳)や、小児病棟の子どもたちへのケア・サポート、保育等のほか、家族のQOL(生活の質)向上を目指した業務を行います。
医療保育士は医療行為を行いませんが、医療現場に携わることから一定の医学知識が必要です。 医療保育専門士は、これらの必要な知識やスキルを取得できます。医療保育士には、医療保育専門士の資格がなくても保育士資格があればなることができますが、医療機関や障がい児施設、乳児院などでの実務経験が必要です。
また医療保育士は、一般的な保育園での保育士の求人数と比べると少なくなっています。そのため、医療保育士への転職は難易度が高いといえます。医療保育専門士の資格があれば、医療保育士としての適性やスキルを客観的に証明できるため、転職活動を有利に進められるでしょう。
なお、医療保育士に必須の相談業務についての専門性を高めるための資格として、保健医療ソーシャルワーカー(社会福祉士・精神保健福祉士の国家資格取得が必要)や、保健児童支援士(民間資格)があります。
一般社団法人日本医療保育学会
【受講に必要な資格】(1)日本国の保育士資格
(2)病院・診療所・病(後)児保育室・障害児者の施設(医療型障害児入所施設・医療型児童発達支援センター等)・乳児院(病・虚弱児介護加算対象施設に限る)などにおいて、常勤 で1 年以上、非常勤で年間 150 日以上かつ 2 年以上の保育経験があること。(非常勤勤務の日時の算出については別途規定)
※保育士有資格者であっても、保育士として働いていない場合は非該当(看護師・看護助手・クラークなど)
(3)本学会正会員で、申し込み時に 1 年以上の会員歴があること。
【試験方法】資格認定研修(定められた研修の受講および指定課題の提出)
口頭試問(事例研究論文が受理されたものに対して原則 3 ヶ月以内)
体を動かす保育に注力するなら「運動保育士」
運動保育士とは、NPO法人運動保育士会が運営する「運動保育士会認定資格」の資格保有者のことです。運動と保育の専門家として、子どもの発達に合った運動遊びを提供することで、好奇心ややる気、自信を育みます。
「認定試験」はなく、運動遊び実践コース・子育て脳機能コースのいずれかの講習を受ければ資格を取得できます。また名称に「保育士」とありますが、保育士でなくても取得できます。しかし、「運動保育士」としての求人は少なく、保育士や放課後支援員などとして採用されることが一般的です。
NPO法人 運動保育士会
【受講に必要な資格】特になし
【履修科目】・運動遊び実践
・脳機能と発育発達
【試験方法】試験は特になし
各コースの講習を受講すれば、資格を取得できる
参考:NPO法人運動保育士会
子供の心を豊かにする絵本のスペシャリスト「絵本専門士」
絵本専門士は、2012年に国立青少年教育振興機構により設立された民間資格です。絵本は子供の感性や言語力、理解力などを育むことで、豊かな人格を形成します。絵本専門士には絵本の専門家として、以下の素養が必要です。
- 絵本の歴史・子どもの心理・児童福祉などに関する「知識」
- 読み聞かせ・創作活動に必要な「技能」
- 豊かで魅力的な「感性」
絵本専門士養成講座を受講するには、受講者選考に通らなければなりません。授業時間は50時間程度で形態は講義・演習等があります。その上で修了課題をクリアして絵本専門士になることができるのです。なお、授業は東京の国立オリンピック記念青少年総合センターでのみ行われています。
独立行政法人国立青少年教育振興機構
【受講に必要な資格】・子供や絵本に関連する資格を有する者
・絵本に関わる実務について、原則として3年以上の経験を有する者
・絵本に関わる活動に携わり、原則として3年以上の経験を有する者
・絵本学・児童文学・美術についての研究実績がある者 など
【履修科目】絵本や子供に関する知識、おはなし会やワークショップを運営する技能、豊かな感性等、絵本専門士として必要な能力等を修得し得る内容のカリキュラム
【試験方法】授業において一定の成績を修め、全授業終了後の修了課題において絵本専門士として必要な資質・能力を満たしていると評価されること
自然と触れ合う機会を創造する「こども環境管理士」
こども環境管理士とは、公益財団法人日本生態系協会が認定する民間資格です。子どもたちが目を輝かせて遊べるような自然環境は、思いやりの心や豊かな感性を育みます。
自然と触れ合える環境づくりを行うのが、こども環境管理士です。こども環境管理士には1級と2級があり、1級の受験には保育士・幼稚園教諭として3年以上の実務経験が必要となっています。
試験は全国一斉に行われ、1級は筆記試験(択一問題・小論文)と合格者のみ口述試験、2級は筆記試験(択一問題・小論文)です。
公益財団法人日本生態系協会
【受講に必要な資格】2級:特になし
1級:以下いずれかを満たす必要あり
- 幼稚園教諭または保育士の資格を取得後、満3年以上の通算実務経験
- 2級こども環境管理士の資格を取得後、満3年以上の通算実務経験
- 幼稚園の園長または副園長として、満3年以上の通算実務経験
- 保育所の所長または副所長として、満3年以上の通算実務経験
- 認定こども園の園長または副園長として、満3年以上の通算実務経験
- 上記5つ以外の場合、満5年以上の通算実務経験
公益財団法人日本生態系協会が実施する以下の試験を受検
・筆記試験(択一問題、小論文)
・口述試験(※筆記試験に合格した1級の受験者のみ)
6.今後のキャリアを見据えて研修・資格取得を目指そう
保育士としてもっとキャリアアップしたい、転職を有利に進めたい、そんな望みをお持ちなら、今回ご紹介した研修・資格は強力な武器になります。また、自分のスキルに対し現状の待遇に不満があるという方も、研修・資格があれば待遇改善の交渉を有利に進められます。
着実にスキルを高められ、それを客観的に証明できる研修や資格は、取っておいて損はありません。この機会にぜひ検討し、将来のキャリアアップにつなげてください。
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