老健で働く看護師|仕事内容や待遇などを医療機関と比較
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介護老人保健施設は老健と呼ばれ、名前の通り介護の側面が強い施設ではありますが、施設の要件として看護師の配置が義務化されており、その役割は重要です。
今回は老健で働く看護師にフォーカスし、仕事内容や待遇などを解説します。他の施設と比較したメリット・デメリットなども紹介していますので、老健への転職を考えている看護師の方はぜひ参考にしてください。
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1.介護老人保健施設(老健)とは?
老健は介護が必要な高齢者が在宅復帰を目指す施設です。医師や看護師、リハビリスタッフが常勤で配置されており、介護サービスに加え医学的なケアやリハビリが行われます。
目的が自宅での生活に復帰することであるため、病院を退院した高齢者の方がリハビリ目的で老健を利用することもあります。介護施設の中では入居期間が短く、原則3ヶ月と定められています。ただし近年は長期で利用する方も多くなっています。
利用の対象となる方
老健の利用の対象となるには以下の4つをすべて満たす必要があります。
- 65歳以上
- 要介護1〜5
- 入院治療が不要
- リハビリテーションが必要
病状が安定していて在宅復帰を目指す方が、医師や看護師による医療的ケアも受けながらリハビリを行います。
老健の人員配置基準
老健の人員配置基準は以下のようになっています。
医師 | 入所者100人に対して常勤1人以上 |
看護職員 | 入所者:看護職員が3:1以上(看護・介護職員の合計の2/7が標準) |
介護職員 | 入所者:看護職員が3:1以上(看護・介護職員の合計の5/7が標準) |
PT・OT・ST | 入所者100人に対していずれか1人以上 |
栄養士 | 入所者100人以上であれば、1人以上 |
支援相談員 | 1人以上(入所者:支援相談員が100:1以上) |
薬剤師・調理・事務など | 施設の必要数 |
見ていただくとわかる通り、多様なスタッフの配置が義務付けられています。多職種とも連携が必要な施設であり、看護師はチームの中心になることも多いです。
老健の区分
老健には、以下の5つの区分があります。
- 超強化型
- 強化型
- 加算型
- 基本型
- その他
それぞれの区分は在宅復帰率やベッドの回転率など10項目ある「在宅復帰・在宅療養支援等指標」や、退所時指導などの要件(90点満点)によって決定します。中でも超強化型、強化型、加算型は厚生労働省から在宅支援機能が高いと評価された施設です。
最も厳しい条件が設定されている超強化型は、指標点数70点以上かつ必須要件1〜4を満たした施設のみ届出を行うことができます。
2. ベッド回転率
3. 入所前後訪問指導割合
4. 退所前後訪問指導割合
5. 居宅サービスの実施数
6. リハ専門職の配置割合
7. 支援相談員の配置割合
8. 要介護4または5の割合
9. 喀痰吸引の実施割合
10. 経管栄養の実施割合
2.老健の看護師の業務内容
老健での看護師の役割や1日のスケジュールを解説します。勤務を具体的にイメージするために、ぜひ参考にしてください。
基本的な仕事内容①医療行為
老健では介護業務は介護職員が行うことが多く、看護師のメイン業務は医療行為です。主な業務には以下のようなものがあります。
- バイタル管理
- 褥瘡のケア
- 喀痰吸引
- 経管栄養
- 点滴
- インスリン注射
- 服薬管理
基本的な仕事内容②老健の看護師ならではの役割
老健の看護師は医学的知識を持った専門家として、利用者を幅広く支える仕事を期待されています。具体的には介護職員やリハビリ職員など、医療行為にとどまらない様々な職員との連携が必要になります。そういった特殊な業務の例として、以下のものが挙げられます。
後述しますが、24時間利用者が生活している老健では、看護師は夜勤を行います。提携している医療機関があるとはいえ、医師が不在の夜間には、看護師が先頭に立って医療対応を進める必要があります。万が一の際に臨機応変かつ主体的な対応が求められるのは、老健で働く看護師ならではの責任かもしれません。
また、看護師がリハビリの補助を行うこともあります。その際ただ補助を行うのではなく、リハビリ時の利用者の体調に問題がないかどうか、医療的な観点でチェックを行います。異常がみられた際は必要に応じて記録をとったり、医師に報告したりします。
そのほか医師と協力して施設の感染管理を行ったり、他職種との連携から得た情報を利用者家族や他の職員へ共有したりすることもあります。 つまり医療、介護の両面から利用者に向き合い、時には施設全体のまとめ役・調整役を担うのが老健で働く看護師の特徴であるといえるでしょう。
1日のスケジュール
老健の看護師のスケジュール例は以下のようになっています。
09:00 出勤、入居者の健康状態確認
10:00 褥瘡のケアなど医療行為の実施
11:00 入浴時のバイタルチェック
12:00 服薬準備、食事介助の補助、服用の確認、口腔ケア
13:00 休憩
14:00 巡回、バイタルチェック
15:00 記録、物品管理、医療行為の準備
17:00 医療行為の実施
17:30 夜勤職員への申し送り
18:00 退勤
17:00 出勤
17:30 日勤職員からの引き継ぎ
18:00 食事介助の補助、服薬確認、口腔ケア
19:00 就寝準備
20:30 消灯
21:00 巡回(点滴・たん吸引・褥瘡処置など)
05:30 起床の介助
07:30 食事介助の補助、服薬確認、口腔ケア
08:30 日勤職員への申し送り
09:00 退勤
夜勤は16時間程度で、基本的に医療行為がないため介護職員と一緒に動くことも多いです。急変時の対応などは看護師が主体となって行います。
3.病院と老健の比較
看護師の業務や待遇について病院と老健を比較しながら詳しく解説します。
業務内容の違い
病院は治療の場であるのに対し、老健は在宅復帰を支援するリハビリテーション目的の施設です。老健は介護保険施設であるため、介助業務などの比率が病院と比べて高いです。ただし在宅復帰を目的としているため、医療依存度は介護施設としては高い方です。また看護スタッフの配置も病院と比べて少ないため、一人ひとりへの責任は大きくなることもあります。
また、老健の入所要件は入院治療が不要な方と定められているため、病状が安定している利用者が多く基本的に病院よりも慌ただしくはありません。
待遇の比較
病院と老健の待遇を比較すると以下のようになります。(2021 年看護職員実態調査、令和2年度介護事業経営実態調査結果、第64回 福利厚生費調査結果報告の結果から編集部で試算)※各種手当や賞与等を含む
病院 | 介護老人保健施設 | |
看護職員の給与 | 386,046円 | 340,445円 |
超過勤務 | 16.9時間 | 14.1時間(介護施設全体で試算) |
出典:公益社団法人日本看護協会「2021 年看護職員実態調査」
参考:一般社団法人日本経済団体連合会「福利厚生費調査結果報告」
施設にもよりますが傾向としては給与は病院のほうがやや高く、超過勤務は老健の方が少ないことがわかります。
スカウトサービス登録はこちら4.特養と老健の比較
続いて特別養護老人ホーム(特養)と老健の違いを見ていきましょう。特養と老健はどちらも介護施設ですが、介護の必要度や目的が異なります。
業務内容の違い
老健は在宅復帰を目指した施設であるのに対し、特養は介護を受けながら高齢者が生活をしていく施設です。最近では「終の棲家(ついのすみか)」として、特養での看取りも多く行われています。
特養の利用要件は要介護3以上とされており、老健(要介護1〜5)に比べて介護的側面が強い施設です。看護師の業務としても特養は身体介助や生活援助が中心で、老健のほうが医療的行為は多いのが特徴です。看護職員の配置数も老健が多く定められています。
老健は夜勤がありますが、特養は夜間の看護師はオンコール対応の施設が多いです。
待遇の比較
老健と特養の待遇を比較すると以下のようになります。(令和2年度介護事業経営実態調査結果、第64回 福利厚生費調査結果報告の結果から編集部で試算)※各種手当や賞与等を含む
介護老人保健施設 | 特別養護老人ホーム | |
看護職員 | 340,445円 | 314,135円 |
介護福祉士 | 246,649円 | 267,905円 |
介護職員 | 232,943円 | 248,652円 |
参考:一般社団法人日本経済団体連合会「福利厚生費調査結果報告」
看護師は医療的側面が大きい老健で給与が高く、介護職員は介護的側面が大きい特養で給与が高くなる傾向があります。また、看護師に関しては夜勤がないこともあり特養の給与はやや低くなりやすいです。
特養で働く看護師|仕事内容や勤務スケジュール、給料について解説
看護師というと、医療施設で働くイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。しかし、介護施設で働く看護師も多いです。
詳細を見る5.老健で働くメリット(やりがい)・デメリット
老健で働くメリット(やりがい)・デメリットを紹介します。老健の看護師としての働き方が自分に向いているかを考えるための参考にしていただけたら幸いです。
メリット(やりがい)
看護師の業務はどこの施設でも大きく変わりませんが、特に老健と病院は医療行為が多いという点で業務内容が似ています。多くの看護師は新卒で病院に就職します。老健は業務内容や日勤と夜勤のある働き方が病院と近く、キャリアチェンジがスムーズです。
介護施設で働きながら医療的なケア技術も日常的に行いたい看護師にも老健は向いています。医師も常勤として配置されており、他の介護施設に比べると看護師の責任は重くありません。日勤では他の看護師も勤務しており、リハビリの専門職も配置されているため他スタッフへの相談のハードルも低いのが老健のメリットです。
老健は在宅復帰を目的とする利用者がある程度長い間生活する施設であるため、利用者の生活に寄り添った看護を実践できます。病院では患者の入退院が激しく、一人の患者と向き合うのは難しいのが現実です。しかし老健では、利用者が穏やかな生活を送れるようにと、ひとりひとりを思いやりながら個別性のある継続した看護を実践することができます。
また何より、リハビリを通して利用者のADLを維持・向上させて自宅に帰れる状態にするという営みも老健ならでは。こまめに体調をチェックし、身体・精神の両面から利用者をサポートするのが老健で働く看護師の仕事です。
自分と二人三脚でリハビリに励む利用者がひとつずつステップアップしていく、機能を回復していく過程を目の前で見られることは大きなやりがいにつながります。
利用者とより向き合った看護を提供したい方や、在宅分野に興味のある方に老健は向いています。
病院と比べるとやや給与は下がる傾向はありますが、老健は介護施設の中では看護師の給与が高いことも魅力です。老健は医療依存度が高く、夜勤があるため看護師の給与も高い傾向があります。給与に比例して介護施設内の看護師の役割としては最も期待されていると言えるでしょう。
デメリット
老健は看護師も夜勤がある施設が多いです。利用者は病状が落ち着いている方がほとんどですが、急変もゼロではありません。夜間急変時には看護師が中心となって対応する必要があり、プレッシャーに感じてしまう方もいます。家庭の事情や体調面で夜勤が難しい場合は、日勤のみの勤務が可能であるか施設と相談しましょう。
老健は介護施設の中では医療行為が多いですが、病院と比べると医療依存度は低くなります。従って病院に勤めている時のような最前線での医療スキルを培うのは難しく、処置などのスキルを上げるのは難しいでしょう。
利用者の病状は安定しているため老健で行う看護師の医療行為はルーチン業務が多いです。医療行為を多く行いたい方や、新しい看護技術を習得したい方には物足りない可能性があります。
スカウトサービス登録はこちら6.老健の特徴を把握して自分に合うか判断しよう
老健は介護施設の中では医療的行為も多く、給与も高い職場です。利用者は比較的病状が落ち着いているため、働きやすく長く勤める看護師もたくさんいます。病院と比べるとスキルの成長はあまり見込めず、夜勤のある職場も多いのがデメリットです。
老健の看護師は基本的な業務内容や勤務形態は病院と大きく変わりません。在宅看護に興味があり、患者さんともっと向き合った看護を提供したい方の転職先に向いています。まずは実際の老健の求人を確認し、今後について考えてみるのはいかがでしょうか。
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よくある質問
また、老健の入所要件は入院治療が不要な方と定められているため、病状が安定している利用者が多く基本的に病院よりも慌ただしくはありません。
特養の利用要件は要介護3以上とされており、老健(要介護1〜5)に比べて介護的側面が強い施設です。看護師の業務としても特養は身体介助や生活援助が中心で、老健のほうが医療的行為は多いのが特徴です。看護職員の配置数も老健が多く定められています。
老健は夜勤がありますが、特養は夜間の看護師はオンコール対応の施設が多いです。