特養で働く看護師|仕事内容や勤務スケジュール、給料について解説
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看護師というと、医療施設で働くイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。しかし、介護施設で働く看護師も多いです。また、介護施設の中の一つに特養、特別養護老人ホームがあります。
今回はその特養に絞って看護師の業務内容や、勤務の特徴などを解説します。医療施設との違いやメリット・デメリットにも触れますので、ぜひ参考にしてください。
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目次
1.特別養護老人ホームとは?
特養の正式名称は、「特別養護老人ホーム」です。自治体が設置し、社会福祉法人が運営している福祉施設で、公的な介護保険を利用して入所できます。
入居の対象者は、要介護3以上の比較的介護度が高い人です。自宅での生活が困難な高齢者が生活の場として利用しています。人生の最期を迎える「終の棲家」として利用する人も少なくありません。
老人福祉法によると、特養は以下のように定義されています。
出典:老人福祉法 第20条の5
特養の種類
特養には大きく分けて「従来型」と「ユニット型」の2種類があります。具体的には、以下の通りです。
個室は少なく、4人部屋あるいは2人部屋などの多床室がメインの施設です。昔からある特養に多いタイプになります。入所人数は施設の規模によりそれぞれ異なり、施設利用者全体を、その日の勤務スタッフ全員で協力しながら介護するスタイルです。
全室個室で、10室ほどからなる「ユニット」という単位で介護を行う施設です。職員もユニット単位で配置され、少ない人数をいつも決まった職員が対応します。利用者のプライバシーが守られ、細かいケアが行き届きやすいという特徴があり、近年新設されている特養の多くに採用されています。従来型特養がユニット型に改築するケースも多いです。
人員の配置基準
特養の人員配置の基準は、以下の通りです。主に6つの職種の方が配置されます。介護付き有料老人ホームと異なり、医師を配置する必要があるのが特徴です。
【介護職員又は看護職員】3:1以上
【生活相談員】100:1以上
【機能訓練指導員】1人以上
【栄養士】1人以上
【介護支援専門員】1人以上
看護師は原則専従で、入居者が30人以下の施設では1人以上、31〜50人の施設では2人以上が常勤換算で必要とされています。
スカウトサービス登録はこちら2.特養で働く看護師の役割・仕事内容
特養の看護師はどのような働き方をしているのでしょうか。ここでは、看護師の役割と業務内容について解説します。
特養で働く看護師の役割とは
特養で働く看護師の役割は入居者の健康管理がメインです。ただ、特養では要介護度の高い方が多く、看取りなどが発生するため、医療対応なども発生します。また、特養では、24時間の看護師の配置義務はありません。ただ、夜勤の看護業務のない施設では、オンコールの対応業務があります。
病院と特養の最大の違いは、特養は利用者にとっての「生活の場」であるということです。したがって急性期医療を必要とする方も多い病院とは異なり、看護師はゆっくりと、落ち着いて利用者の生活をサポートすることができます。
自分の看護を通じて利用者さんが変化していく様子を間近で、長い期間をかけて見ることができるのは、特養で働く看護師ならではの特長といえるでしょう。
では、同じく介護施設である介護老人保健施設=老健との違いはどうでしょうか。 老健と特養の最大の違いは、看取りの有無にあります。一定期間内でリハビリを通じた生活復帰を目的とする老健とは異なり、自立が困難な方の生活を目的とする特養では特に入所期間が決まっていません。
したがって、特養では利用者の看取りが必要となることも少なくありません。特に近年では、看取り加算を取り、看取りケアに力を入れている特養もあります。そのような際、看護師には、利用者さんやご家族と話し合って看取りの計画を立てるなど看取りを行う職員の中心的な役割を果たすことが求められます。
主な業務を紹介
特養の看護師の業務はどのようなものがあるのでしょうか。介助などは介護士が行うため、多くは医療施設で行う業務と変わりません。具体的には、以下の通りです。
- 健康管理
- 医師の指示に基づいた医療行為
- 服薬準備
- 診察介助(医師による診療の補助)
- 入退所のサポート
- 看護記録
- 看取り・ターミナルケア
- オンコール対応
医療施設同様に入居者の状態に変化がないかを確認します。具体的には、体調確認、バイタルチェック、服薬、点眼、各種巡回処置などを行います。先ほども述べた通り、特養で働く看護師の仕事はこの健康管理がメインです。
胃ろう、喀痰吸引、点滴、採血など、医師の指示を受けて実施します。介護職員には対応できない行為のため、看護師が実施します。医療行為については、病院等での勤務と共通する部分が多くあります。一方で利用者がケガをした際の応急処置、医師への報告など、特養だからこそ発生しやすい医療行為も存在します。
食事前後の服薬の準備、服薬状況の確認などを行います。常備薬などに関しても服薬の記録を行います。本来であれば薬を飲む本人がその目的や適切な飲み方を理解していなければなりませんが、特養においては心身ともにそれが困難な方が多いため、看護師が服薬管理を徹底する必要があります。
定期的な医師の訪問診療、医療施設併設の場合はその診察の補助を行います。具体的には、心拍測定時などの器具準備や、体位変更に伴う介助業務などです。より広い意味では、利用者の体調に明らかな異常が見られた際、家族に連絡を入れ、病院を受診すべきか否か、またいつ受診するかを決めるのも看護師の大切な仕事です。
入退所時の事務作業や利用者自身への介助などを行います。現場で働く介助スタッフへの引き継ぎを行うのが特徴です。また、その際に常備薬などの受け取りなども行います。
その日の体調や出来事を記録します。どのような経過かを判断するため、また他のスタッフと情報を共有するため、医療施設同様に重要な業務です。
施設によっては、「看護記録」と「介護記録」を分けているところもあります。前者は利用者の体調やバイタル、施した医療行為を、後者は行った介助・レクリエーションの内容やそれに対する感想を中心に記録するという違いがあります。
どちらにしても、看護師として記録を書く際は「医療従事者として書く」ことを忘れないようにしましょう。例えば食事介助に際しては、介護記録が食事時の姿勢や味の感想に着目するのに対し、看護記録はより詳細な食事量や水分量、口腔内の異常の有無などにフォーカスします。
亡くなる瞬間に付き添うケア業務です。特養は、終の棲家として施設内で亡くなることを想定しています。そのため、治療ではなく身体的・精神的苦痛を和らげる処置を行う「緩和ケア」も行います。
看取りのケアは大きく3つに分けられます。清拭や口腔ケアなどを通じて利用者の清潔を保つ「身体的ケア」、コミュニケーションを通じて利用者に寄り添う「精神的ケア」、そして「家族へのケア」です。
特養の看護師はほぼ夜勤はありませんが、その代わりにオンコールがあります。有事の際に現場の介護スタッフへの指示を行い、必要があれば現地に向かいます。介護職には判断できない事態を医師に代わってある程度判断する必要のある業務です。
オンコールについては、以下の記事で詳しく解説しています。
オンコール勤務とは?手当や業務内容から向いている人まで解説
オンコールありの職場で働いている、またはこれから働きたいと思っているものの、待遇に不安を感じる方も多いのでは…
詳細を見る一日のスケジュール
特養で働く看護師の一日のスケジュールの例は以下の通りです。
09:00 出勤、入居者の健康状態確認
10:00 必要に応じて医療的な処置
12:00 服薬準備、食事介助の補助、服薬状況の確認
14:00 口腔ケア、巡回
15:00 看護記録の入力、必要に応じて医療的な処置
17:00 申し送り
18:00 退勤
上記は、オンコールのないケースです。オンコールの対応がある場合は、その後自宅で待機する必要があります。オンコールの発生頻度は施設にもよりますが平均で月に10回程度です。そのうち電話対応が発生するのは5回未満、現場に行くことも月1回程度に収まることが多いです。
またオンコールの対応には、手当が発生するのが一般的になっており、1回あたり1,000円~2,000円ほどが相場となっています。
スカウトサービス登録はこちら3.給料事情を紹介
介護施設における、基本賃金はどのようになっているのでしょうか。ここでは各施設ごとの基本賃金(各種手当・賞与・福利厚生費等を含む参考金額を編集部で試算)を紹介します。
特別養護老人ホーム | 介護老人保健施設 | 有料老人ホーム | デイサービス | |
看護師 | 422,652円 | 448,962円 | 427,972円 | 354,319円 |
准看護師 | 382,542円 | 382,799円 | 375,933円 | 326,620円 |
介護福祉士 | 376,422円 | 355,166円 | 366,673円 | 312,484円 |
介護職員 | 357,169円 | 341,460円 | 341,129円 | 288,351円 |
参考:一般社団法人日本経済団体連合会「福利厚生費調査結果報告」
上記を見ると、介護スタッフよりも看護師の給料は高い事がわかります。夜勤のある老健や有料老人ホームと比較すると少し低い額にはなりますが、夜勤がない施設形態としては非常に高い給料だと言えるでしょう。
4.特養で働くメリット・デメリット
ここでは特養で働くメリット・デメリットを紹介します。
メリット
既に述べている部分ではありますが、介護施設の中では比較的給与水準が高い施設形態です。夜勤がある施設と比較してしまうと劣る部分はありますが、基本給や他の手当の金額の部分では上回っている部分が多いです。
また、福利厚生が充実していることも多く、託児所を設置して子育て世代の方が働きやすいようになっていたり、通勤が不便な方向けに寮を設置している施設もあります。
特養は夜勤がない施設が多く、オンコールを導入しているところがほとんどです。オンコールの場合も電話での対応が多く、施設に呼び出されて対応するといったことはあまりありません。夜勤を含めたシフト制勤務で体調を崩しやすい人にとっては働きやすい環境ではないでしょうか。
特養は要介護度が高い入居者の方が多く、自分の状態や希望をうまく伝えられないという方も多いです。入居者のわずかな変化を見抜いてケアを行っていくことが重要になってくるので、このような状況下でアセスメント能力を高めていくことができるでしょう。
デメリット
特養では夜勤のない施設が多いです。深夜勤務の手当が発生しないため、手当分の給与は低くなりがちです。もし給与をアップしたいという尺度で職場を探すのであれば、特養よりも夜勤のある老健などの施設での勤務がおすすめです。
特養では、医療処置の必要性は高いとは言えません。高度な医療処置が求められるようなケースは医療施設に移されることが多く、特養では発生しないため、処置の能力が低下する可能性があります。
特養では、看護師の配置基準は常勤職員が1名以上です。病院などと比較して必要な人員が少ないため、医療処置を単独で行うケースもあります。他の看護師に協力をあまり求められないため、心理的な負担が大きくプレッシャーにつながる可能性があります。
スカウトサービス登録はこちら5.特養に向いている人とは?
特養での仕事内容やメリット・デメリットを解説してきました。最後に、特養での勤務が向いている方の特徴を解説します。
利用者ひとり一人とじっくり向き合いたい方
特養は基本的に終身利用向けの施設なので、利用者さんの出入りが少なく、ひとり一人と長い時間をかけて信頼関係を築いていきます。「終の棲家」として利用する人も少なくないので看取りをすることももちろんあります。
利用者さんと長期的かつ深く関わって看護を実践したい人には、特養は適した職場といえるでしょう。
看護師としての実務経験がある方
特養で看護師として働く場合、看護師としての実務経験や看護スキル、技術が求められることが多いです。特養は介護施設の中でも医療行為を行う機会が多い施設です。医師が常駐しているわけではないので、医療的な判断は看護師に求められます。
基礎疾患を抱える利用者さんもいるので容態が突然悪化するケースも少なからずあります。そういった場面で迅速な判断や対応が必要となるので、ある程度の実務経験が必要となるでしょう。
コミュニケーションを取るのが得意な方
特養には、医師や介護士、生活相談員、栄養士などさまざまな職種の方が働いており、より良いケアを提供するためには職種間の連携が大切です。また、利用者さんと信頼関係を築くためにもコミュニケーションが非常に重要となります。
「コミュニケーションを取ることが得意」「高齢者とお話するのが好き」という方は特養での勤務が向いているといえるでしょう。
ワークライフバランスも重視したい方
特養の場合、看護師は夜勤がない施設が多いです。オンコール対応はありますが電話での対応が多く、施設に出向くことはあまりありません。また、残業も少ないのでワークライフバランスを大事にしたい方に向いています。子育て世代の方でも安心して働くことができるのが特徴です。
スカウトサービス登録はこちら6.特養は責任が大きいがやりがいのある職場
特養は、看護師の人員配置が少ないです。ただ、多くの介護スタッフと連携することで業務を円滑に進めることはできます。
また、要介護度が高い入居者の健康管理と責任の大きい仕事ではありますが、介護施設の中では比較的給与水準が高く、やりがいも大きい仕事です。夜勤がないことで身体的な負担は少なめですので、看護の経験をしっかりと積んで、規則的な勤務をしていきたいという方にはおすすめの職場です。まずは求人を見て検討してみましょう。
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よくある質問
②看護師としての実務経験がある方
③コミュニケーションを取るのが得意な方
④ワークライフバランスも重視したい方