療養型病院とは?看護師の仕事内容や役割、働くメリットや役立つスキルを紹介
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療養型病院には比較的症状が安定した慢性期の患者が入院しています。
療養型病院で働く看護師は患者の日常生活のサポートを行います。
同じ病棟看護師でも、病棟の種類によって看護師の役割や仕事内容は大きく異なります。
今回は、療養型病院の特徴から看護師の具体的な仕事内容、向いているタイプについて解説しています。
療養型病院での勤務に興味がある方は、実際に働く姿を想像しながら転職活動に役立ててください。
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1.療養型病院とは?
療養型病院とは、主な病床が療養病床である病院の通称です。
医療法によると、病床は5つに分類されます。
①精神病床
②結核病床
③感染症病床
④療養病床
⑤一般病床
①~③はそれぞれ特定の病気の方が入院する病床で、④⑤は①~③以外の病気の患者が入院する病床となります。
療養型病院は、慢性期(病状が安定している時期)の方や治療よりも長期にわたる介護が必要な高齢者を対象にして、医療ケアやリハビリテーション等の必要なサービスを提供する病床で、リハビリや医療ケアが手厚いのが療養型病院の特徴です。
療養型病院は、長期間の療養をすることを目的とした施設で、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)と似ている所がありますが、療養型病院では医療ケアが中心となり生活支援サービスはほとんど受けられません。
レクリエーション・イベントといった入居者同士の交流の場を提供していないのも特徴の一つとなります。
また、特養・老健の対象者は要介護者ですが、療養型病院は要介護者であるかどうかは関係なく慢性期の疾患がある患者が対象となります。
一般病床と療養病床の違い
一般病床と療養病床は治療のステージによって区別され、一般病床は急性期の治療ステージ、療養病床は慢性期の治療ステージの方が入院します。
急性期とは、症状が急に現れる時期や病気になって間もない時期のことをいいます。
一般病床は、病気の発見・検査・治療を行うことを目的としています。必要に応じて手術を行うこともあるので、設備や薬剤が充実しています。
症状によりますが、入院期間は2週間程度で長くても1ヶ月程となります。
慢性期とは容体が比較的安定しており、治療継続やさらなる回復を目指す期間のことをいいます。
療養病床は、長期間の療養を目的とした病床で、入院期間に制限がなく、1年以上入院するケースも珍しくありません。
療養病床は医師と看護師の配置基準が一般病床より少なくなります。 その代わり、療養病床には一般病床にはない看護補助者の配置規定があります。
一般病床と療養病床の医師・看護師・看護補助者の人員配置基準は以下の通りです。
人員配置基準一般病床 |
療養病床 |
|
医師 |
16:1 |
48:1 |
看護師及び准看護師 |
3:1 |
4:1 |
看護補助者 |
ー |
4:1 |
一般病床は、患者16人に対して医師1人以上、患者3人に対して看護師1人以上という規定があります。 ただし、看護補助者については規定がありません。
一方、療養病床では患者48人に対して医師1人以上、患者4人に対して看護師1人以上と一般病床と比べて少ない人員配置となりますが、看護補助者も患者4人に対して1人以上の配置が必要となります。
一般病床と療養病床のスタッフの役割は同じではありません。一般病床は主に治療を目的とし、療養病床は療養生活の援助を目的としています。
なので、「一般病床は医師が主体」「療養病床は看護師や看護補助者が主体」と言えるでしょう。
介護医療院とは
療養型病院とよく比較される介護医療院についても紹介します。
介護医療院とは、2018年に新設された介護保険施設のひとつです。
厚生労働省によると、介護医療院は以下のように定義されています。
出典:【厚生労働省】介護医療院
療養病床は、医療保険でまかなわれる医療療養病床と、介護保険でまかなわれる介護療養病床に分かれています。
利用対象は、医療療養病床が医療区分が2~3に該当する慢性期の患者、介護療養病床が要介護度1以上の高齢者となっています。
しかし、2006年に厚生労働省が実施した実態調査では、医療療養病床と介護療養病床を利用する患者の状況に大きな違いは見られませんでした。そのため、介護療養病床は2024年3月に廃止されることが決定しています。
介護医療院は、介護と医療を長期的に必要とする高齢者を受け入れる施設として新設され、長期療養だけでなく、日常生活を送る生活施設としての役割も兼ね備えています。
スカウトサービス登録はこちら2.療養型病院で働く看護師の役割と仕事内容
療養型病院は、慢性期の患者の生活を24時間体制でサポートする場所です。
看護師は患者にとってもっとも身近な存在であり、日常生活のサポートや患者の状態に合わせたケアを提供します。
一般的な病棟看護師の仕事内容は以下の通りです。
- バイタルサイン測定
- 点滴・注射・採血などの医療処置
- 患者の身の回りのお世話
- 食事・排泄・入浴などの介助
- 体位交換
- 夜間の巡回
- ナースコール対応
- カンファレンス
病棟看護師とは?仕事内容や働き方、病棟の種類について詳しく解説
病棟で勤務する看護師のことを「病棟看護師」と言い、看護師や准看護師の働く場所として最も一般的な職場です。病棟看護師は、「どのような仕事をするのか」
詳細を見る療養型病院は寝たきりの患者が多いため、医療行為は少なく日常生活の援助が中心となります。
療養型病院特有の業務を詳しく見ていきましょう。
介護業務
介護業務は、清潔ケアや排せつ介助など日常生活援助です。一般病院では看護補助者が行うことが多いですが、療養型病院の場合は看護師が行うケースもあります。
軽症の患者は、看護補助者(介護職)が対応し、人工呼吸器がついているような患者は看護師が対応するという体制をとっている病院もあるようです。
褥瘡処置
褥瘡とは、寝たきりなどによって、体重で圧迫されている場所の血流が悪くなったり滞ることで、皮膚の一部が赤い色味をおびたり、ただれたり、傷ができてしまうことです。寝たきりの患者は褥瘡(床ずれ)が起こりやすいです。
一度発生すると治りにくく、悪化するケースが多いので予防が重要です。こまめな体位変換・耐圧防止寝具を利用し、負担を分散させることで予防できます。
褥瘡が発生した場合は、症状に合わせた処置を行わなければなりません。軽症の場合は、皮膚を清潔に保ち・保湿を行い・こまめな体位変換を行い悪化を防ぎます。
中等症以上になると治りにくく、壊死組織や感染症を伴うことがあるので、重症になる前の予防が必要不可欠と言えるでしょう。
喀痰吸引
喀痰吸引(かくたんきゅういん)とは、吸引装置を使用して口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部の痰を吸引することをいいます。
体力の衰えから強い咳ができず、痰や異物の排出ができなくなった患者に対して、医師の指示のもとで看護師が喀痰吸引を行います。
患者の状態によっては1日に複数回行うこともあります。
経管栄養のケア
経口摂取が困難・誤嚥の危険がある患者は、経管栄養で栄養を補給します。経管栄養とは、チューブやカテーテルを通して、胃や腸に直接栄養剤を注入することをいいます。
準備や実施後の体調チェック、口腔ケアを行うのも看護師の役割になります。
療養型病院に入院している患者は、寝たきりで意思の疎通が難しい場合も少なくありません。
そのため、些細な変化にいち早く気がつくことができるように、日頃の観察が重要です。
スカウトサービス登録はこちら3.療養型病院で働くメリット
ここでは、療養型病院で働くメリットや、療養型病院だからこそ得られるやりがいを紹介していきます。
急性期のような慌ただしさがない
療養型病院は、オペや急患がないため急性期のような慌ただしさがありません。また、基本的に患者の症状が安定しているため、急変が少なくルーティンワークが多いです。
1日の業務サイクルがほとんど変わらないので、突発的な残業が発生することも少ないでしょう。
そのため、退勤後の時間を資格の勉強や、家族との時間に使うことができるといったメリットがあります。
一般的に新卒で療養型病院に入るケースは少なく、家事・育児と仕事を両立させたい方や、プライベートと仕事でメリハリをつけて働きたい方などが多く活躍しています。
医療行為が少ない
療養型病院は、清潔ケアや排せつ介助などの日常生活援助がメインとなり、医療行為を行う機会はあまりありません。そのため、手技に自信のない方でも業務をこなすことができます。
育児や出産で現場を離れた看護師の復帰先として、療養型病院が選ばれるケースも多いです。
患者とじっくり向き合える
厚生労働省の調査によると、平均在院日数は一般病床が16日程度であるのに対して療養病床は120日程度と長いことがわかります。
患者の入院期間が長いため、長期的に関わることが可能です。一人ひとりとじっくり向き合うことで、小さな変化に気が付くこともできます。
また、回復していく姿を近くで見守る事ができますし、患者のご家族とも信頼関係を築いていくこともできます。そうしたことがやりがいに感じるという方も少なくないようです。
療養型病院の場合、寝たきりでコミュニケーションを取ることができない患者も多くいらっしゃいます。コミュニケーションを取りながら看護を行うという認識だと入職後ギャップを感じる可能性があるので注意が必要です。
スカウトサービス登録はこちら4.療養型病院の大変なこと
もちろん働くうえで大変なこともあります。
ここでは、療養型病院の大変なところや、デメリットになることを解説していきます。
看護師としての成長が難しい
医療行為が少ないため、看護師としてのスキルを磨くことは難しいでしょう。
先ほど医療行為が少ない点をメリットとして挙げましたが、看護師として最前線で活躍したい方、高度な医療知識を身に付けたい方にとってはデメリットと感じる可能性があります。
一般的に、療養型病院は一通りの看護スキルを身に付けた看護師が働いていることが多いです。
業務にゆとりがあるためじっくりと学ぶことができる一方で、教育体制が整っていないというケースも少なくありません。
また、夜勤は看護師1人と看護補助者という体制をとっている病院もあります。基本的には落ち着いていますが、急変が起きた時に対応できる程度のスキルは必要と言えるでしょう。
経験の浅い看護師の方が療養型病院を目指す際は、教育体制が整っているかどうかをあらかじめ確認しておくと良いでしょう。
力仕事が多い
排せつ介助・入浴介助・体位変換など、療養型病院での業務は力仕事が多いです。身体への負担も大きく、腰痛になることもあるでしょう。
残業が少なく、患者の状態も安定しているため「療養は楽」というイメージを持っている人もいるかと思います。たしかに、急性期のような忙しさはありませんが、具体的な業務を理解していないと入職後ギャップを感じる可能性が高いです。
スカウトサービス登録はこちら5.療養型病院に向いている人の特徴・役立つスキル
ここでは、療養型病院に向いているタイプ・役立つスキルなどを紹介します。
転職を検討している方や、出産・育児から復帰予定の方は参考にしてみてください。
以下のようなタイプの人は、療養型病院が向いています。
- 患者とじっくり向き合いたい人
- ケア業務にやりがいを感じることができる人
- プライベートも重視した働き方がしたい人
患者とじっくり向き合いたい人やケア業務にやりがいを感じることができる人に向いています。
患者一人ひとりと長期的に関わることで些細な変化にも気が付く事ができるようになります。
ルーティンワークになりがちな療養型病院ですが、その中にやりがいを見いだせる人は特に向いていると言えるのではないでしょうか。
また、ケア業務は力仕事ですので体力に自信のある方は歓迎されます。
療養は楽そうと思っている方・介護業務に苦手意識のある方は向いていません。しっかりと業務内容を理解した上で、働くようにしましょう。
条件面で言えば、残業が少ないためプライベートを重視したい人におすすめです。夜勤があるので、急性期と比較して給与が大きく下がるということもないでしょう。
役立つスキル
以下のようなスキルがあると、業務に活かすことができます。
- コミュニケーション能力
- 協調性
- 観察力
介護業務が多いため、看護補助者など他職種と上手く連携を取る必要があるため、コミュニケーション能力や協調性が必要と言えるでしょう。
看護師と看護補助者が不仲というケースは意外と多いです。業務を円滑に進めることができるよう、業務中だけでなく日頃のコミュニケーションが重要です。
療養型病院に入院している患者は、寝たきりの方や意識のない方も少なくありません。そのため、些細な変化に気が付くための観察力は必要不可欠です。
6.まとめ
療養型病院は容体が比較的安定した患者が多いです。入院期間も長いため、患者と長期的にかかわることができるといったメリットもあります。
業務は医療処置が少なく、ケアがメインとなります。ルーティンワークが苦にならない方・体力に自信のある方に向いていると言えるでしょう。
急性期の病院と比べると、残業が少なくプライベートを重視した働き方ができるのも療養型病院の特徴です。だからと言って、療養=楽ということではありません。
病棟看護師と一言で言っても病床の種類によって、看護師の仕事内容は違いがあります。
療養型病院で働こうと考えている方は、今回の記事の内容を参考に検討してみてください。
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