介護士の医療行為|できること・できないことなど必須の知識を解説
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医療従事者のみに許されている医療行為。介護士も以前まではやってはいけないことになっていましたが、現在は一部認められているものがあります。では、どのようなものが介護士にも認められているのでしょうか。今回は介護士の医療行為について解説します。
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目次
2.例外として介護士に認められている医療行為
3.介護現場で直面する介護士ができない医療行為
4.特定の条件を満たすことでできるようになる医療行為
5.医療行為に直面した際の注意点
6.まとめ
1.医療行為とは
医療行為とは、医師法によって規定されている行為のことです。医療行為ができるのは医師・歯科医師・看護師など、国家資格を有する医療従事者のみと定められています。
介護士は医療現場で働くこともありますが、厳密には医療従事者ではないため、医療行為はできません。しかしながら、実際の介護現場では医療行為に準じる働きが求められる場面も多く、2012年に介護士の医療行為が一部例外としてできるようになりました。
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2.例外として介護士に認められている医療行為
一部例外とはいえ、どこまでの医療行為が認められるのか、線引きが難しいところです。そこで、介護士が行うことのできる医療行為について、詳しく解説していきます。
医療行為に該当しないと解釈されているもの
医療行為ではなく「医療的ケア」と呼ばれる行為であれば、介護士でも行なうことが可能です。医療的ケアには下記のような行為が該当します。
- 体温計を用いた体温測定
- 自動血圧測定器を用いた血圧測定(水銀血圧計による測定はできない)
- パルスオキシメータを用いた動脈血酸素飽和度(SpO2)の測定
- 軽度な傷ややけどなど専門的技術や判断を要さない処置
- 湿布を貼る
- 床ずれの処置を除く軟膏の塗布
- 目薬の点眼
- 服薬介助
- 座薬の挿入 など
上記の行為は、2005年に厚生労働省が発表した「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」の中で医療行為ではなく「医療的ケア」と解釈されました。そのため、現在では医療従事者だけでなく介護士でも行なえる行為となっています。
法律で一部認められている医療行為
医療的ケア以外にも、法律で一部認められている医療行為があります。規制対象外とされている医療行為は下記の通りです。
- 耳掃除
- 爪切り
- 口腔ケア
- カテーテル交換時の準備・体位補助
- ストーマのパウチに溜まった排泄物の廃棄
- 市販されている浣腸器を用いた浣腸
上記の行為は、医師法や保健師助産師看護師法などの法律でも規制対象外とされています。ただし、こうした行為には実施条件があり、要介護者に異常がなく、専門的な管理が必要でない場合のみ実施可能です。
介護士が行える爪切りの条件
爪切りや耳掃除は家庭でも行うことのできる簡単な行為と思われがちですが、気を付けないと炎症を起こすリスクがあります。爪切りでも巻き爪や基礎疾患に糖尿病などがある場合は医療行為にあたります。介護士が行える爪切りの条件は以下の通りです。
- 爪そのものに異常がない
- 爪の周囲の皮膚に化膿や炎症がない
- 糖尿病などの専門的な管理が必要でない
出典:医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について
迷った場合は、看護師に指示を仰ぐことが大切です。
指先の皮膚を押し下げるようにして爪だけを切ります。深爪や皮膚を切らないように注意しながら行いましょう。一度に切ろうとすると爪にヒビが入りやすいため少しずつ切るのがポイントです。
変形した爪やもろい爪を無理に切ると痛みが生じる場合があります。爪切りでのカットが難しいと感じた場合は、爪ヤスリを使用すると良いでしょう。爪切りのポイントは以下の通りです。
- 少しずつ切る(深爪やヒビの防止)
- 爪の白い部分を1~2㎜程度残す
- 巻き爪防止のため、爪の角を残す(スクエアカット)
- 爪ヤスリで角の尖った部分を滑らかにする
利用所の隣に座り、自分の爪を切る時と同じ姿勢になります。次に、利用者の腕を両腕で挟み動かないように固定します。認知症の方などは予期せず動くことがあるので特に注意が必要です。対面で切ろうとすると、切りにくく失敗しやすくなります。
まず、利用者に椅子やベッドに座ってもらいます。低い椅子などを使用し、自分の爪を切る時と同じ姿勢になるように利用者の隣に座ります。利用者の足を太ももに乗せ、太ももと腕で利用者の足を固定します。
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3.介護現場で直面する介護士ができない医療行為
上記で挙げた一部例外を除き、医療行為のほとんどは禁止されているため、介護士が行なうことはできません。ただ、実際の介護現場では下記のような医療行為が必要になる場面もあります。
- 摘便
- 床ずれの処置
- インスリン注射
- 血糖測定
- 点滴の管理
しかしながら、上記の医療行為ができるのは医師や看護師などの医療従事者のみです。仮に介護福祉士の資格を持っていてもこのような医療行為は実施できないため、注意しましょう。上記の医療行為が必要な場合は、看護師や医師に行ってもらう必要があります。
違反行為の罰則
医療行為違反の罰則は医師法に規定されています。医師でないにもかかわらず医師を名乗ったり紛らわしい名称を使ったりした場合には「50万円以下の罰金」、無資格で医療行為をした場合には「3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」と定めています。
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4.特定の条件を満たすことでできるようになる医療行為
近年の法律の改正によって、所定の研修を受けるなどして認定を受けた介護士が行なえるようになる医療行為がいくつかあります。それぞれの医療行為について、具体的にみていきましょう。
喀痰吸引
まずは「喀痰吸引」です。喀痰吸引とは、吸引器具を使用して口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部の痰や唾液の排出を行なう行為を指します。痰を吸入することで気道が確保され、肺炎などの感染症や窒息を予防する効果が期待できます。
経管栄養
もうひとつは「経管栄養」です。経管栄養とは、食事を口から摂取できない場合や誤嚥のリスクが高い場合に、チューブやカテーテルを通して胃腸に直接栄養や水分を送り込む行為です。胃に栄養を注入する「胃ろう」、腸に栄養を栄養を注入する「腸ろう」、鼻から栄養を注入する「経鼻経管栄養」などの種類があります。
必要な資格・研修
資格の有無や取得時期によって喀痰吸引や経管栄養といった医療行為を行うための条件が異なってきます。2016年度以降に、介護福祉士養成施設を卒業して介護福祉士となった方や介護福祉士実務者研修を修了して介護福祉士国家試験に合格して資格を取得した方は、登録喀痰吸引事業者の認定を受けている就業先で実地研修を受ける必要があります。
2016年度より前に介護福祉士資格を取得した方や介護福祉士以外の介護士の方(初任者、ヘルパーなど)は、登録研修機関にて喀痰吸引等研修を受講する必要があります。講習と演習から成る「基本研修」と、介護現場で実習を行う「実地研修」の2種類を修了し、認定特定行為業務従事者の認定を受けなければなりません。
ここで注意しておきたいのは、仮に必要となる研修を修了しており、認定を受けている介護士であっても、勤務している職場が「登録喀痰吸引等事業者」でない場合はこれらの医療行為を実施してはいけません。
また、喀痰吸引等研修では第1号研修から第3号研修まで分かれており、研修の種類によって実施できる医療行為に違いがあります。認められている範囲を超えての行為は行うことができません。
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5.医療行為に直面した際の注意点
介護現場で働いていると、医療行為が必要な場面に直面することもあるでしょう。しかし、自己判断で行なってしまうと、法令違反になることもあります。利用者の命にかかわる可能性もあるため、医療行為に携わる際は十分に注意しながら行なわなければなりません。ここでは、介護士が医療行為を行う上での注意点を解説していきます。
業務の中で医療行為がどれなのか認識する
まずは、業務の中でどれが医療行為なのか認識することが大切です。先述したように、介護士にはできる医療行為とできない医療行為があります。インスリン注射など、介護士ができない医療行為でも「できる」と勘違いしている利用者やご家族もいらっしゃいます。
しかしながら、自己判断で勝手に行なえば、利用者の命を危険にさらすことになりかねません。場合によっては、法令違反で介護士が罰則を受ける可能性もあります。判断に迷った場合は、必ず医師や看護師に相談するようにしましょう。
普段から医療的な知識を身に付けておく
普段から医療的な知識を身に付けておくことも必要です。医療的な知識があれば、自分でも医療行為に該当するかどうかが、ある程度判断できるようになります。
しっかりとした知識があれば、自己判断で勝手に医療行為を行なってしまう事態を避けられるでしょう。もし直接医療行為ができなくても、その処置が必要な理由を把握したり、利用者の体調の変化を察知したりできるようになります。
また、的確な場面で迅速に医師や看護師に相談することも可能です。そのため、普段から医療的な知識を身に付けられるよう、勉強を怠らないことが大切と言えるでしょう。
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6.まとめ
今回の記事では、介護士ができる医療行為とできない医療行為について解説しました。介護実務を行なっていると、医療行為に直面する機会も多くあります。どの行為が医療行為にあたるか、介護士ができる処置かどうかを知っておくことで、スムーズな業務遂行が可能になるでしょう。
介護士はほとんどの医療行為を行うことができません。しかしながら、医療知識を身に付けておくことは介護士の普段の業務にもプラスになります。正しい知識を身に付け、自分にできる業務を線引きしておきましょう。的確な判断を下し、医師や看護師と連携を取っていくことが、利用者の安心な生活を守る介護へと繋がっていくのです。
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よくある質問
介護士は医療現場で働くこともありますが、厳密には医療従事者ではないため、医療行為はできません。しかしながら、実際の介護現場では医療行為に準じる働きが求められる場面も多く、2012年に介護士の医療行為が一部例外としてできるようになりました。
業務の中でどれが医療行為なのか認識することが大切です。先述したように、介護士にはできる医療行為とできない医療行為があります。インスリン注射など、介護士ができない医療行為でも「できる」と勘違いしている利用者やご家族もいらっしゃいます。しかしながら、自己判断で勝手に行なえば、利用者の命を危険にさらすことになりかねません。場合によっては、法令違反で介護士が罰則を受ける可能性もあります。判断に迷った場合は、必ず医師や看護師に相談するようにしましょう。
②普段から医療的な知識を身に付けておく
普段から医療的な知識を身に付けておくことも必要です。医療的な知識があれば、自分でも医療行為に該当するかどうかが、ある程度判断できるようになります。
しっかりとした知識があれば、自己判断で勝手に医療行為を行なってしまう事態を避けられるでしょう。もし直接医療行為ができなくても、その処置が必要な理由を把握したり、利用者の体調の変化を察知したりできるようになります。また、的確な場面で迅速に医師や看護師に相談することも可能です。そのため、普段から医療的な知識を身に付けられるよう、勉強を怠らないことが大切と言えるでしょう。
堀尾 健太
セカンドラボ株式会社
URL:https://note.com/2ndlabo/n/nf2f063102266
神奈川県鎌倉市生まれ。
2019年4月にセカンドラボ株式会社に入社。
病院チームでの求人原稿作成とコンテンツマーケティングが仕事の中心です。
休日は所属するオーケストラでの活動や登山、旅行とアクティブに過ごしています。