処遇改善加算とは?算定要件や給料への影響をわかりやすく解説
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皆さんは「介護職員処遇改善加算」について知っていますか?言葉は聞いたことがあっても、介護職にどのような影響があるかいまいちわからず、制度について詳細に理解している人は少ないのではないでしょうか。
今回は「介護職員処遇改善加算」の基礎知識を確認し、皆さんにどのような影響があるかということを解説します。
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目次
2.介護職員処遇改善加算を取得するには?
3.「介護職員処遇改善加算」と「介護職員等特定処遇改善加算」の違い
4.介護職員処遇改善加算を取得しやすい施設の形態
5.2021年の介護報酬改定で処遇改善はどう変わった?
6.介護職員等ベースアップ等支援加算とは?
7.よくある質問
8.介護職ならば処遇改善加算を要チェック!高収入や働きやすい職場を見つけるチャンス
1.そもそも介護職員処遇改善加算って何?
介護職員処遇改善加算とは?
「介護職員処遇改善加算」とは、介護業務に直接従事する職員(介護職員)の安定的な処遇改善を目的として、賃金改善や職場環境の整備のために必要なお金を国から事業所へ支給する制度のことです。
介護職員処遇改善加算導入の背景
介護職員処遇改善加算は、介護職員の賃金改善を目的として、2011年まで導入されていた「介護職員処遇改善交付金」に代わって2012年に導入された制度です。
少子高齢化が加速する中、団塊の世代が75歳以上に達する2025年に向けて介護人材を確保し、より働きやすく整備された職場づくりを行うために、資金が支給される形式が作られました。
介護職員処遇改善加算と処遇改善手当の意味の違い
「介護職員処遇改善加算」という単語は、「制度」そのものを指す意味で使われています。「介護職員処遇改善加算」にはいくつかの要件があり、どの程度要件を満たしているかによって加算の金額は大きく変わります。
対して「処遇改善手当」は、その「制度」(=介護職員処遇改善加算)によって国から支給されたお金を、各施設が介護職員へと還元するために「手当」として支給するものです。毎月の給料に上乗せする形で支給されることが一般的ですが、施設によっては「一時金」という形で年数回に分けて、まとまった金額を支給するケースもあります。
支給形式や支給額
介護職員処遇改善加算によって施設に支給されたお金を、どのように職員に支払うのかは、各施設や事業所に一任されており、とくに支給方法に決まりはありません。
そのため、毎月の給与に処遇改善手当のような形で手当として上乗せされるか、処遇改善一時金のような形でボーナスとして支払われるのかなど、支給の形式や金額は職場によって異なります。そもそもの目的である「介護職員の処遇を改善する」すなわち「介護職員の収入が増える」ということが達成できていれば、問題ないのです。
支給対象
「介護職に従事する介護職員」が対象とされており、基本的にほぼすべての介護職員が対象となります。
看護師や相談員、管理者などの介護サービスに従事しない他職種は対象外となっていますが、介護業務を兼務している場合は対象になります。この場合は雇用契約書などの業務内容を記載する欄に介護業務を兼務することを明記する必要があります。
雇用形態や資格の有無も関係ないため、パート・アルバイト職員や派遣職員といった非正規雇用の場合でも支給対象となります。ただし、既に述べた通り施設に支給されたお金の分配方法は各施設や事業所に一任されているため、支給対象の職員であっても支給されないこともあります。
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2.介護職員処遇改善加算を取得するには?
介護職員処遇改善加算では、いくつかの要件を満たすことで、該当する区分の支給額を受け取ることができます。満たすべき要件、加算の区分についてそれぞれ解説していきましょう。
計画書と報告書の作成
介護職員処遇改善加算を取得するには、まず各事業所が「介護職員処遇改善計画書」を作成し自治体へ届け出を行う必要があり、加算を取得した事業所は「介護職員処遇改善実績報告書」を自治体に提出します。
提出された書面をもとに、事業所の算定要件や賃金改善が行われているかを確認し、不備があった場合には、自治体から加算の返還請求や加算の取り消しが行われます。
介護職員処遇改善加算の取得要件
介護職員処遇改善加算で満たすべき要件は、3つからなる「キャリアパス要件」と「職場環境等要件」の大きく分けて2つに分かれています。
「キャリアパス要件」
①職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系の整備をすること
②資質向上のための計画を策定して、研修の実施または研修の機会を設けること
③経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること
「職場環境等要件」
賃金改善以外の処遇改善(職場環境の改善など)の取組を実施すること
介護職員処遇改善加算の区分
上の表は、介護職員処遇改善加算の5つの区分を示した図です。加算Ⅰが最も給付額が多く、加算Ⅴに近づくにつれ給付額は少なくなっていきます。給付額が多いほど、満たすべき要件も増えます。
キャリアパス要件①もしくは②と職場環境等要件の2つを満たした加算Ⅲの支給額は月額15,000円。これが要件をすべて満たした「加算Ⅰ」になると、介護職員1人あたりの加算は月額37,000円相当となり、キャリアパス要件2つの違いだけで倍以上の金額の差が生じます。
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3.「介護職員処遇改善加算」と「介護職員等特定処遇改善加算」の違い
介護職員処遇改善加算と似たような制度に、「介護職員等特定処遇改善加算」があります。介護職員等特定処遇改善加算がどんな制度なのか解説しながら、両者の違いを見ていきましょう。
介護職員等処遇改善加算は2019年に新しく導入された制度で、主な目的は介護職員処遇改善加算と同じく介護職員の賃金改善です。ただし、介護職員等特定処遇改善加算の対象は「経験・技能のある介護職員」、つまり勤務年数の長いベテラン職員や十分な技能を持つ職員に限定されています。
介護職員等特定処遇改善加算の取得要件
介護職員等特定処遇改善加算の取得要件は以下の3つです。
- 現行の介護職員処遇改善加算(Ⅰ)から(Ⅲ)までを取得していること
- 介護職員処遇改善加算の職場環境等要件に関し、複数の取組を行っていること
- 介護職員処遇改善加算に基づく取組について、ホームページへの掲載等を通じた見える化を行っていること
出典:厚生労働省「2019年度障害福祉サービス等報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(令和元年5月17日)」
介護職員等特定処遇改善加算の区分
3つの取得要件を満たしており、さらにサービス提供体制強化加算や特定事業所加算等の最も上位の区分を算定していると、介護職員等特定処遇改善加算で特定加算Ⅰに区分されます。特定加算Ⅰに当てはまらない場合は特定加算Ⅱとして算定が可能です。
介護職員等特定処遇改善加算を取得した場合は、下図のように介護職員処遇改善加算に上乗せされる形で給付されます。
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4.介護職員処遇改善加算を取得しやすい施設の形態
介護業界への就職や転職を考えていると気になるのが、どのような事業所が介護職員処遇改善加算を取得しているのか。ここでは取得しやすい施設の形態を解説していきます。
介護職員処遇改善加算
取得(届出)している | 加算Ⅰを取得している | |
介護老人福祉施設 | 99.3% | 92.4% |
介護老人保健施設 | 97.4% | 82.9% |
訪問介護 | 92.7% | 75.2% |
通所介護 | 95.5% | 79.8% |
特定施設入所者生活介護 | 98.7% | 92.8% |
介護施設全体の介護職員処遇改善加算の取得(届出)率は94.5%で、そのうち加算Ⅰは80.5%です。施設形態別にみると、最も高いのは介護老人福祉施設(特養)の99.3%。次いで特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム)や介護老人保健施設が高く、ほとんどの施設で加算を取得できていることが分かります。
介護職員等特定処遇改善加算
取得(届出)している | 加算Ⅰを取得している | |
介護老人福祉施設 | 93.4% | 79.6% |
介護老人保健施設 | 87.6% | 68.8% |
訪問介護 | 69.47% | 37.1% |
通所介護 | 67.4% | 33.7% |
特定施設入所者生活介護 | 88.8% | 42.5% |
介護職員等特定処遇改善加算の介護施設全体での取得(届出)率は75.0%、うち加算Ⅰは41.7%で、介護職員処遇改善加算と比べると多くありません。その中でも、一番多く取得しているのは介護老人福祉施設(特養)で93.4%。2019年から始まった新しい制度なため、まだ浸透しておらず、取得が進んでないことが分かります。
介護施設は他にもありますが、特に上記で挙げたような施設(介護老人福祉施設、特定施設入居者生活介護など)は加算Ⅰを取得している割合が比較的多く、職員の賃金や職場環境の改善に力を入れている施設が多いことが分かります。今後、介護施設への就職や転職を考えているならば職員の処遇という視点で探してみるのも良いのではないでしょうか。
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5.2021年の介護報酬改定で処遇改善はどう変わった?
2021年の介護報酬改定では処遇改善加算についての変更も行われました。どのように変化し、どう影響するのか見ていきましょう。
事業所内での配分ルールが緩和
2021年の改定前まで、介護職員等特定処遇改善加算には「リーダー級職員の平均賃上げ額をその他の介護職員の賃上げ額の2倍以上にする必要がある」という配分のルールありましたが、改定により「2倍」から「より高くする」に緩和されました。これまでネックとされていた細かい基準を廃したことで、介護職員等特定処遇改善加算の取得率の上昇が期待できます。
介護職員処遇改善加算の一部区分の撤廃
介護職員処遇改善加算において、取得率の低い区分Ⅳと区分Ⅴの撤廃が決定しました。1年間の経過措置を設け、2022年には加算区分が5つから3つへと変更になります。実際にはほとんど機能していない区分を撤廃することで、施設側はより上位の加算区分の取得を目指す必要が出てくる一方で、職員の処遇改善が期待できるでしょう。
職場環境等要件の施策実施の強化
2021年4月より、職場環境等要件の取り組み内容が強化されることになりました。介護職員処遇改善加算では以下の6つのカテゴリのうち1つ以上の施策を、介護職員等特定処遇改善加算の場合は各カテゴリにつき1つ以上の施策を年度ごとに実施しなければなりません。
職場環境等要件
- 職員の新規採用や定着促進に資する取組
- 職員のキャリアアップに資する取組
- 両立支援・多様な働き方の推進に資する取組
- 腰痛を含む業務に関する心身の不調に対応する取組
- 生産性の向上につながる取組
- 仕事へのやりがい・働きがいの醸成や職場のコミュニケーションの円滑化等、職員の勤務継続に資する取組
出典:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」
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6.介護職員等ベースアップ等支援加算とは?
介護職員等ベースアップ等支援加算とは、2022年10月の介護報酬改定に伴い、新たに創設された加算です。介護職員等の処遇改善を目的としており、1人あたり3%程度(月額9,000円相当)、収入を引き上げるための措置として設けられました。ここでは、介護職員等ベースアップ等支援加算について詳しく紹介します。
介護職員等ベースアップ等支援加算の取得要件は?
介護職員等ベースアップ等支援加算を取得するためにはクリアしなければならない要件が2つあります。
- 処遇改善加算Ⅰ~Ⅲのいずれかを取得している事業所(現行の処遇改善加算の対象サービス事業所)
- 賃上げ効果の継続に資するよう、加算額の2/3は介護職員等のベースアップ等(※)に使用することを要件とする。
※「基本給」又は「決まって毎月支払われる手当」の引上げ
以上の2点が加算を取得するために必要となる条件です。既に処遇改善等を取得している事業者の方々はお気づきかと思いますが、介護職員等ベースアップ等支援加算の取得は難しいものではありません。
対象となる職種は?
介護職員等ベースアップ等支援加算を取得できる職種は以下のように定められています。
- 介護職員
- 他の職員(例:看護師・機能訓練指導員・事務員など)
「他の職員」は各事業所の判断により決めることが可能で、「他の職員の処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認める」と厚生労働省も定めています。
ただし、誰でも加算対象になるという訳ではなく、この加算が、介護職員の処遇改善を目的としたものであることを各事業所が理解した上での配分となるように注意する必要があります。
処遇改善に係る加算全体のイメージ
介護職員等ベースアップ等支援加算は2022年2月に新たに創設された「処遇改善支援補助金」の考え方がベースとなっています。従来の「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」とは別の加算として位置付けられており、介護職員等ベースアップ等支援加算が加わったことで処遇改善に係る加算全体は三段階の構造となりました。
加算率の計算方法は?
現行の介護職員処遇改善加算や特定処遇改善加算と同様に、介護サービスの種類ごとに、介護職員数に応じて設定された一律の加算率を介護報酬に乗じる形式で単位数は算出します。
介護職員等ベースアップ等支援加算は計画段階で、「基本報酬+加算減算」を計算する際に、処遇改善加算・特定処遇改善加算を除外して算定する必要があるので注意が必要です。
処遇改善支援補助金の届出状況
届出をした | |
介護老人福祉施設 | 97.1% |
介護老人保健施設 | 92.0% |
訪問介護 | 84.9% |
通所介護 | 86.9% |
特定施設入所者生活介護 | 94.1% |
介護施設全体の処遇改善支援補助金の届出率は88.7%です。施設形態別にみると、最も高いのは介護老人福祉施設(特養)の97.1%。次いで特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム)や介護老人保健施設が高く、多くの施設が処遇改善支援補助金の届出をしていることが分かります。
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7.よくある質問
パートや派遣社員でも支給対象か?
処遇改善加算の支給対象は基本的にすべての介護職員が対象となり、雇用形態や資格の有無も関係ないため、パートや派遣社員でも支給対象となります。扶養内での勤務だと支給対象にならないのではないかと、不安になる人も多いかもしれませんが、扶養内であっても支給の対象ですので、ご安心ください。
支給額については各施設や事業所が決定するため、資格や勤続年数などにより異なることが考えられます。処遇改善加算について気になる方は、担当者へ確認することをおすすめします。
処遇改善加算が受け取れない場合はどうしたらいいか?
上記でも述べたように処遇改善加算は条件を満たしていれば、基本的にすべての介護職員が受け取ることができます。そのため、条件を満たしているのに受け取れない場合は、適切な支給がされていないことが考えられます。
自分が条件を満たしているのに、処遇改善加算を受け取れていない場合は、一度上司に確認してみましょう。そこで、適切な回答を得られなかったり、支給されない状況が続く場合は、事業所として問題があることが考えられるので、転職を考えることも一つの方法です。
分配方法は各施設や事業所に一任されているため、もらえる金額は様々ですが、制度がしっかり適用されている事業所の方が、より良い環境と言えるでしょう。転職をする際にはミスマッチを防ぐために、給与の詳細や、適切な処遇改善加算が支給されているか事前に確認しておくことがおすすめです。
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8.介護職ならば処遇改善加算を要チェック!高収入や働きやすい職場を見つけるチャンス
ここまで、介護職の給与や職場環境の改善を目指す介護職員処遇改善加算や介護職員等特定処遇改善加算について紹介してきました。介護職員処遇改善加算や介護職員等特定処遇改善加算は介護職の給料にも大きく関わってくる制度です。働くうえで給与を重視する人は、必ずチェックしておきましょう。
また、処遇改善加算を取得しているということは、職場環境やスキルアップ制度などを整備している証でもあります。これから介護職として働きやすい職場で仕事をしたいと考えている人は、その施設の加算取得状況や、どのような取り組みを行っているのかをチェックするのも良いでしょう。
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2022年4月よりセカンドラボ株式会社に入社。主に病院を中心に医療介護向け求人メディア「コメディカルドットコム」の営業・採用課題のサポートを行う。